2000年 4月8日(土)常盤の海                    

 
     
春の海に魚が踊る?

                                           夢と野望に燃える朝
開演前
午前3時半、まだドラキュラが徘徊している時刻だ。
夜空は雲に覆われ、周囲は闇に包まれている。
仮死状態の港が、青い光にぼーっと浮かび、発電機のうめき声が、鼾のように聞こえてくる。
闇に呑まれた堤防には、先客3人とノビタだけ。

先客のささやき声と、ザザッー、ザザッーと寄せる波の音が、闇に消えて行く。
まだ開演までには大部間がある。
陸から吹いてくる風に冷やされながら、ヘッドランプの灯りで、ゆっくりと釣りの準備を始めた。

多くの夢追い人が、此所で座布団カレイの栄光を手にした。
そしてまた”Lucky Strike Again!”を夢見てやって来る。
先週釣れても今週釣れるとは限らない。
昨日釣れたから今日も釣れるとは限らない。

それも覚悟の上なのさ。
平家物語の冒頭が諭す。
「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。
 娑羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。
 おごれる人も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし。」
全ての事が絶えず変化して行く、栄光もつかの間の夢、という意味のようだ。

開始早々にきた者は
竿5本の仕掛けを全て海に投入したのは、午前4時半。
空が急速に白んで行く。
                                            
ドンコが吐いたアイナメ
いよいよドラマの幕開けだ。
と、開演のベルよろしく足元に垂らした竿の鈴が、
「リリーン♪」
と一発、ファイト〜♪、リポビタンD〜!。
”きびなご”を1匹掛けにした胴突き1本針仕掛けにきた。

狙いはソイ、結果は?。
ゴトゴトと下方に引く力、「う〜ん?もの足りない!」
重さは、「う〜ん?もの足りない!」
薄暗い海面に敵が浮上した。

     
期待ハズレ
正体不明の黒い物体が、波間で足掻いている。
堤防に抜き上げた、ドンコ!、
ドンコドンコ
30cm強だが、失格、およびじゃない。
無造作に網袋に放り込み、紐を付けて海に浮かべる。

ドンコに罪はないけれど、今日はあまり嬉しくない客なり。
このドンコ、網に入れ海に浮かべていたら胃袋からアイナメの子供を吐き出した。
海底では、間違いなく弱肉強食のドラマが繰り返されているようだ。



今日もOLM風
足元に垂らした、きびなご餌仕掛けの竿には、この後も鈴が鳴り続け、ドンコが次々と掛かってきた。
3匹は上げたが、2匹はリールと竿先のトラブルが起きバラシ。
カレイ狙いの竿3本はいつまでも沈黙、時折餌を確認すると、針だけになっている。
朝7時、突然、声をかけられた。やじっちさんだ。
やじっちさんは、アイナメを上げたとのこと。
次に現われたのは釣刊さん、その後にhiehieさん、GAMIさん、かくべーさん達が、入れ代りやって来た。
ネット上では相互リンクで知り会っているが、釣刊さんや、hiehieさんとは初対面だった。
まだ皆さん成果は無いらしい。

とんでもない大物
皆さんが去った後も、海からは何の反応も無い。
風向きは北西に変り、大分強くなって来た。
突然、放置しておいたカレイ狙いの竿が、大きく上下にお辞儀をしている。

慌てて併せた。
確かな反応が手元に戻る。
重い、カレイだ!。
周囲の人にアピールし、タモのエスコートをしてもらわないと。
竿を天に向け、大きく湾曲させ、実際の抵抗の倍以上の演技をする。

       
お騒がわせしました
ポンピングしながら体を大きく後ろにそらし、かなり重そうにリールを巻く。
(重いぞ、重いぞ〜、早く集まってくれー!)
こちらの狙い通り、ギャラリーが集まって来た。
これでタモ入れのスタンバイはOK!。

敵は充分な手応えを保ちつつ、堤防に近ずいて来る。
「........?」
カレイは堤防に接近すると急激に重さを増し、抵抗が激しくなるのだが...。
抵抗はある。でも違う。
「どうした〜!?」
大勢のギャラリーと、ノビタが海面を凝視する。

敵が海面に浮上、斑模様(まだらもよう)のその姿、
「ネコザメダー!」
誰かが叫ぶ。

空高く発進したロケットが、急転直下、地上で粉々に粉砕した。
オーバーで、派手派手な演技が悔やまれる。
汗をかきかき照れ笑い。
(どうもどうも、お騒がわせしました)

稚鮎爆釣!
午前9時を廻ると、北西の風はますます強くなってきた。
足元の海面を見ていた。ダボンダボンの波間に、小魚が数匹キラッと光る。
ひょっとすると、稚鮎か?。
バッグに大分前だが、パニック仕掛けを入れていたはず...。
探ってみると、あった〜♪。

アイナメ釣り用に使用していた重り負荷5〜8号、3.3メートルの万能竿を急遽、稚鮎釣りにチエンジ。
パニック仕掛けは袖針3号12本付きで1セット、これを2段繋ぎにし、その下に重り5号をつけた。
稚鮎釣りは貧乏人の釣りと言われる。
裸の針がプランクトンのように見えるらしく、餌のついていない針で釣れるのだ。
不精者にも喜ばれる釣りである。

パニック仕掛けを海に投入し、水面ギリギリで竿を上げ下げしたが反応がない。
仕掛けを水面から1メートルほど降ろし、置き竿にした。
途端に、竿先がブルブル振え始める。
キタ、キタ、キタ〜。
追い食いを待つ。
もっと、もっと、もっと食いつけ。

   
稚鮎120匹ほど、サッパ4匹
ソロソロと竿を持ち上げる、小刀の刃よりも小さい魚だが、数が多いと結構重さを感じる。
仕掛けが水面から顔を出した、その後からゾロゾロと銀色の小魚が続いて出てくる。
全部で15匹。

風の中での稚鮎外しに手間取った。
風に吹かれて仕掛けがはためき、針が指を刺す。
風にまかれて仕掛けがからむ。
何とか稚鮎を全て外し、仕掛けを海に戻した。





すぐに竿先がプルプル振え出す。
入れ食い!。
切れ目無し!。

100匹ほど釣った所で、やじっちさんに教えに行く。
戻って来ると隣りの若い人が、竿が引かれていますよ、と教えてくれた。

稚鮎のいれ食いタイムだから当然と、竿を持ち上げようとすると、糸が沖に向かって引かれる。
何だ?。
上がってきたのはサッパが2匹。
仕掛けをゴチャゴチャにしながら上がって来た。
結局、2段仕掛けのうち、下段は修復不可能となり、予備の一つと交換した。

サッパが回遊して来ると、途端に釣れなくなるが、その切れ間は短く、また稚鮎の入れ食いが続く。

The End
ノビタの釣りは、置き竿にしたままの横着な釣り、これがまずかった。
サッパがついているのに気がつかず、とうとう仕掛けをダンゴ状にしてしまった。
これで仕掛けは全てお釈迦、午前10時、120匹程釣った所で打ち止め。
側で、やじっちさんとそのお友達は釣れ続く。
10時半、皆さんに別れをつげ、現場を後にした。

                                     
      稚鮎と缶ビール
結局、本命のカレイは夢のまま終わる。
一人で4枚も上げた人もいたようだが、此所でのカレイ釣りは難しい。
ポイントがピンポイントであること、餌取りのシャコ族の猛攻にあうこと。
忍耐と、根性が無い人には無理だ。
それに餌代も高くつく。
釣れる確率も低い。

稚鮎釣りはこれからが筍、お持ち帰リ分をキープした後、余った稚鮎で、ソイやカサゴを狙うなら餌代は不要。
釣れる確率もカレイよりは高い。
さて貴君ならどうする?

昼食時、カミさんが早速、稚鮎を料理してくれた。
釣り師だけが食べれる稚鮎を、骨まで愛しながらビールを飲む。
言うこと無し。
缶ビール1本を飲み乾すと、そのままひっくり返り、夢の世界へ。
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