2000年 6月3日(土)鹿島灘                      

 
       またも辛勝の6匹


                                             漁船と釣り師
混雑する海                          
6月2日午後9時、旭村の海岸に着く。
道路脇には、薄暗闇に何台もの車が並んでいた。
突堤を見ると、先端付近に、いくつもランプの灯りが動いている。
砂浜にも、点々と灯りが続く。

いつもの猛獣が吠えるような、波の炸裂音は聞こえて来ない。
今日の海は、猛獣が寝息を立てているような静かな海である。
穏やかなのだ、こんな旭村の海岸はめずらしい。

後から車が来た。
停車した車から人影が降り、車の灯りで釣り道具を出している。
あせった、彼より先に行かねばと。
道具を背負い、竿ケースを持つ。
ヘッドランプを付けるのは省略。
キーをバイクのボデイに差し込んだまま、慌てて飛び出す。

     
漁船が魚場へ
突堤南側に陣
足場の悪いブロックの上を、灯りも付けず、足早に突堤に向かう。
突堤北側は、すでに15名ほどが場所を占めていた。
、南側はポツ、ポツと2人しかいない。
ガランとした南側でやることにした。
「お邪魔します」と言いながら、態度は厚かましく2人の間に荷を降ろす。

電気浮子を、暗い海に投入したのは午後9時半。
浮子の赤い灯りは、今日も浜側から沖に向かって流れて行く。
波間に浮かぶ赤い灯りが、漂うままに漂い、波を被って海に沈んでは、また暗い海に浮上してくる。
時間は過ぎて行く、魚の気配は無い。

午後10時半、浮子がゆっくり突堤先端の際添いを流れ、赤い灯りが海中にボーッと没して行った。
竿から出た道糸に引かれて、浮子が沈むのである。
それでも浮子が沈む瞬間は、いつも期待で竿を握り直す。
結果は、いつも失望するだけだが...。

                                     
       次々と漁船が
思いがけず
堤防先端のテトラ際は、根掛かりする確立が高い。
浮子がテトラ際で消えた瞬間、浮子を回収しようとした。
竿を斜め右へ引く。
「どうしたーー??」
浮子も仕掛けも海中に没したままピクリともしない。
電気浮子は上州屋で¥1,350円、決して安くない。
ホンダ・リードの3週間分のガソリン代、東海から上野までの特急指定料金だ。

「根掛かり?」
あせった。
強引に竿を立てる。
リールを巻く。
と、水中の状態に変化、少し上向きに動く。
「良かったーー!」
ホッとした直後、ググググーーーと、竿先を引く力が手元に伝わった。
「....?、キタ〜!!」

リールを巻く。
追撃の、グググググーーー。
この反応、この瞬間を、
「待ってたぜ、ベイビー!」
                                             
湖のような海
リールをしっかり、ゆっくり、ジワジワと巻いて来る。
水中をピンクに染めながら、ボワーと浮子が海面に浮上して来た。
磯2号、5.3メートルのしなやかさで、一気に獲物を水中から引き抜く。
石持27センチGet!。
始めの1匹、勝負はこれからだ。
夢の3桁戦開幕だ。

後ろは入れ食い!
午前0時、腕時計のアラームが鳴る。
あの1匹から後は何も起こらない。
両隣りも同じ。
背中合せの北側は、どうなってる?
竿を足場のブロックの穴に差し込み、様子を見に行った。
「何とーーー!」

暗い海から、白い魚体が次々と引き抜かれる。
ノビタの所から僅か10メートルほど離れた所で祭りの騒ぎだ。
ドンチャン騒ぎだ。
釣り人達が沸騰している。

  
 日が昇る、魚は何処だ
茫然と、その釣り様を眺めていた。
南側と違い、こちらの海は湖のように平らで、浮子の流れも蝸牛が這うが如しだ。
電気浮子の青い灯、赤い灯が何個も暗い海に、浮かんでいる。
その灯りが、あちらで、こちらで、向こうで、ポツ、ポツ、ポツと消える。
浮子が消えた瞬間、釣り人が竿を後ろに倒す。

竿先が大きく湾曲する。
掛かったのだ。
あちらでも、こちらでも石持が、足元に転がる。
拍手、などしたくない!、嫉妬と、敗北と、ドラマを見ている興奮で、自分の釣りを忘れてしまった。
いつまでも眺めていた。
そのドラマはエンドレスだと思ったが、午前3時、魚信が遠のく。
釣り人が帰り支度を始める。

ノビタの独壇場だったが
今だ!チャンス到来。
放っておいた釣り竿と道具を、全て北側に運んだ。
夜明けは近い。
ファイナル・マッチになるか。
まだ3人ほどいる釣り人、彼等の邪魔にならない様に仕掛けを投入し、浮子の灯りを目で追った。
浮子の位置は岸から15メートルほど沖、一瞬、浮子が視界から消えた。
竿を斜め後方に大きく合せる。
グッと反発力が返る。
リールを巻く。 
手応えはあるが、さほどではない。
竿の下にぶら下がったのは、20センチほどの小振り。

すぐ餌を付け替え、仕掛けを海に戻す。
浮子がポチャーンと海面に立った瞬間に、消えた!。
合せる、先程より大きい反動。
25センチを追加。
とうとう爆発した。
ノビタの浮子と、僅か1メートルほど離れた他の浮子には何の変化もない。
ノビタの独壇場となった。
これは神の采配か、他の人と平等になるよう今度はノビタだけに恵みを分け与えるのか。
北側に移動して15分、5匹を追加。
空も海も茫洋と白んできた午前3時半、魚信は消えた。

納竿                                 本日釣果(ー1)
午前4時、眩耀の海に漂う浮子は、光りの乱射を浴びて海と一体化、目で追えなくなった。
隣りで釣りをしていた人が竿を仕舞う。
彼はノビタに、活きのいい赤イソメの残りを置いて行った。
しばらく空しい釣りを続けていたが、午前4時半。
Give UP!。

写真撮影の為、ビニール袋から石持を、コマセバケツに移そうとしたその時、足元のブロックの隙間に1匹が転がった。
そのまま石持は、暗く、深い、隙間の奥に消えてしまった。
本日の釣果からすると、くやしい1匹だ。
疲れた体を引き摺りながら午前5時、現場を後にした。

睡魔が...
休日の51号線、朝まだ早いせいか車が少ない。
冷んやりとした空気を正面に受け突っ走る。
どうしようもない睡魔が、襲って来た。
脳神経が一瞬麻痺し、目の前にガードレールが、大きくせまる。
慌ててハンドルを切った。
危機一髪、激突回避、アーメン。

映画「アラビアのロレンス」の冒頭、バイクに乗った主人公、ピーター・オトールが、大木に激突するシーンが頭を過ぎる。
L.オーレンスはこの時死亡した。
映画ではアラビアの民族統一と、独立を支援するイギリス人として、アラブ人を率いてスペイン軍と戦う英雄だ。
だが、イギリスの野心から邪魔物となり、任を解かれて帰国させられた。
この時、L.オーレンスは燃えつきる。

    
      今日の花
既に、魂の抜け殻のようになった彼は、止めを刺すように命を失った。
それはローウソクの火が、一瞬の風に吹き消されたかのように。

ノビタはまだ燃えつきていない。
ローウソクの火はまだ盛んに燃えている。
風のいたずらで、消されてたまるかだ。

無事、自宅に戻ったのが午前6時。
庭の花が、清々しく目に飛び込んで来た。
生き返ったような気分だ。
本日釣果、20〜27センチ石持6匹、但し1匹はブロックの隙間に消えた。


 
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