2000年 6月30(金)〜7月1日(土)那珂湊方面          

 
      
初心者に負けたイカ釣り

                                         
空も海も靄に包まれた朝
期待できそうな
午後7時、雲に覆われた空、南風やや強し。
陰影薄く白くピンボケした港、まだ昼の明るさだ。
堤防を歩くと、途中にポツポツと釣り人がいた。
動作が鈍く、まだ魚は遠いようだ。

目的のポイントに近ずくと、O君の姿が見えて来た。
堤防は閑散としている。
O君の周囲に距離を置いて3〜4人、それしかいない。
その中で、O君の動きだけが活発だ。
遠目にも、やる気が、ムンムンと伝わって来る。
「.....?」

O君のいる場所に着くと、イカが釣れたよと、水汲みバケツの所に誘導された。
バケツの中を覗くと、10センチ足らずのヤリイカの赤ちゃんが泳いでいる。
始めて釣ったイカが、そんなに嬉しいのかと思いつつ、
「リリース、リリース」
と、リリースを促した。
するとO君、ノビタの肩を叩き、おもむろに海面からスカリを引き上げる。
満面得意そうな顔をしてだ。
何と、スカリには既に4杯!。

これは爆釣間違いなしと、慌てて釣りの準備を始めた。
1本目の準備をしていると、O君が、
「タモ、タモーー」
と叫んでいる。
一寸待て、と言いながら仕掛けの準備をしていると、O君が自分でタモを使い、イカを取り込んでしまった。
好機は逃せない、さらにあせりつつ準備を急ぐ。

タモ入れの緊張
午後7時半、黄昏が濃くなり、海も、空も、堤防も、墨色に染まって行く。
O君が叫んでいる、また来たようだ。
タモを持ち走った。

足元の水面に上段の仕掛けが見え、その下にイカがいる。
タモを水面に沈めイカに近ずけると、敵は逃げる、逃げる、右へ、左へ、沖へ。
ヘッドランプが照らす薄暗い海面、逃げ廻るイカ、タモとイカとの距離が掴みにくい。
検討をつけ、イカを掬った。

直後、タモと仕掛けだけが、水面の上に飛び出す。
空振りだ、
「逃げられたーー!」
O君ガックリ、ノビタもガックリ。

 
    午前4時、無人の路を帰る
それから10分もしないうちに、またまたO君に!。
ノビタが走る、タモを水面の下へ、キンチョールの瞬間だ!。
(今度こそー!)
そして、
「逃げられたーー!」
O君ガックリ、ノビタもガックリ。

夜のイカ釣りは、タモ入れが困難であることを、思いしらされた。
以降、O君がイカを釣る度に、妬みと、緊張と、不安が混然一体となって、タモを操作した。
O君の連発が続くお陰で、次第にタモ入れの腕は上達したが、肝心のイカ釣りの腕は全然進歩しない。

イカ釣りとは?
投げることをキャステイング、狙ったポイントに投入することをプレゼンテーションと言う。
沖目に出来るナブラを狙うルアーフイッシング、磯のサラシを狙う黒鯛のフカセ釣り、サーフキャステイングでヨブを狙う石持釣りなど、ピンポイントを外せない釣りには必要な技である。

堤防からのイカ釣りに限って言うならば、特に気にする必要はない。
適当な方向に、適当な距離で、浮子の付いた仕掛けをぶん投げるだけ。
海面に着水した浮子が、潮に流され、波に揺られ、風に押され、放っておいてもジワジワとヒット圏に流れて行く。
ヒット圏とは、直前までに何度かヒットしたポイントであるが、直径10メートルほどもあり、決してピンポイントではない。

そのヒット圏を、ボーッと小さな赤い光りを放ちながら、棒状の電気浮子が漂う、期待が増す瞬間だ。
何かが起きそうで、そして起きることなく、電気浮子は、ヒット圏を通過して行く。
(またか〜。)
仕掛けを暗い海から回収し、再度同じルートを、同じ様にトレースする。
これを繰り返す。
イカ釣りも決して楽じゃない。
根気と、忍耐と、我慢は、大物釣りだけの特権ではない。
ただ大物釣りには、それに見合った興奮、感動、充実感が伴うが、イカ釣りはその辺が希薄だ。
手応えも、興奮も、喜びも、ささやかなのだ。

暗い海を漂う浮子が、僅かに傾くだけの魚信、浮子がパッタリ横倒しになったり、沈みかけたりの、明確な魚信はまれである。
浮子は波に揺れる、魚信との判別がつきにくく、放っておくと何時の間にか餌だけかじられている。

浮子に魚信を感知したならば、合わせを食らわす。
その瞬間、ズッシリとした手応えを感じたならば、ゆっくりとリールを捲く。
途中、クィー、クィー、クィーとイカの抵抗を手に感じるが、針が肉離れしないように、ソロリ、ソロリと、赤ちゃんをあやす様に引て来る。
堤防際に近ずくと、逃げる力が倍加する。
此所でバラスケースが多いので御用心、相手の引きに合わせ、慎重なやり取りが必要だ。それでもイカの抵抗はささやか、釣り師にとっては物足りなさを感じる釣りである。

胴の様な頭、その下に顔の造形がなくて目玉があり、その下にホニョホニョと伸びた髭のような短い足が8本。
海のスプリンターと呼ばれる”ヒラマサ”、GTと呼ばれる”シマアジ”、海の機関車”かっぽれ”、タイガーウッズ、丸山秀樹、イチロー、安室奈美江のようなスターでもなく、ヒーローでもない。
海中をモゾモゾと彷徨する海の隠者である。
姿も、釣り味も、何処にもキラキラ輝く所がないのだ。

O君の独走
イカ釣りはO君の一人舞台だった。
ノビタは完璧に脇役となり、せっせ、せっせと、O君の釣り上げるイカをタモで掬っていた。
イカを釣り上げる度に、O君が大声で、タモ、タモと叫ぶ。
堤防の上に、イカが転がる度に、これ見よがしに腕を他方の手で叩き、顔をニコニコ饅頭にしてノビタを見る。
まるで大金持ちが、子育てに四苦八苦するノビタを、目を細め、笑みを浮かべて眺めている顔だ。
その顔の憎たらしいたら、ありゃしない。
午前0時までにノビタはやっと4杯、O君は既に12杯と、完全独走体勢である。

O君のお返し
ノビタの電気浮子が、O君の領域に進入して行く。
O君との差を縮めようと、徹底的に彼の領域を犯しまくっていた。
始めは彼の右から、潮の向きが逆になってからは、彼の左側から攻めまくる。
どうしたのか、それでも釣れない。
仕掛けも、餌も、浮き下も、全て同じなのにどうした?。
これは普段の行いが悪いせいか?、思い当る事はある、でも石持が爆釣した時だって、普段の行いは、あまり芳しくなかった。
普段の行いは関係ないようだ、ならば何故?。

                                        
2人で25杯チャンチャン♪
と、忘れた頃に、ノビタの浮子がペッタリ横倒しになった。
「魚信だーーー!」
O君が叫びながら、タモに走る。
ノビタは、放置していた竿に走る。
合せる、手応え有り!。
堤防に獲物が、近ずいた。

O君がタモを入れる。
「逃げられたーーー!」
「ゴメン!、タモ入れに慣れていなくって」
O君のひにくたっぷりの弁解だ。
(まだ4杯しか釣っていないんだぞーー!ったく)。

それから10分もしない内に、またノビタに来た。
そして又、O君タモ入れ失敗!。
これはノビタが、O君のイカを逃がした時の、再現ビデオを見る様だった。

夏の夜の夢
午前2時、時おり生暖かい風が、堤防を舐めるように包み込む。
闇に包まれた堤防で、騒然としているのは、我々の所だけである。
O君もノビタも、トーンのレベルが自然に下がって来る。
O君が闇の中で、声は低いが大袈裟なジェスチャーでタモの催促。
既に獲物は堤防際まで来ていた。

タモを深く沈め、イカに悟られない様に、慎重に、素早く、慣れた手つきで掬い上げた。
そのまま堤防に持ち上げると、どうした?。
タモに入れたはずのイカが、タモの外にぶら下っているではないか。
「...?」
タモで掬ったのは、錯覚?、幻覚?、夏の夜の夢?。
(危なかったーーーー)。

「ノビタさん、しっかりしてよーー」
O君のフォローが、背後から飛んで来た。
堤防に置いたタモに目をやる、何とーー!、そこにもう一杯、
「ダブルだーーー!」
思わず、O君の声に負けない大声を上げた。

何かホッとしたが、その直後に、完敗の風が頭を吹き抜ける。
止めの一撃、駄目押しのイーグル、ノビタの追随を冷酷に、傲慢に、つき離したダブルだった。
彼は最早、手がつけられない程遠くを独走していた。
もう勝手にせ〜〜!。
”勝つと思うな〜   思えば負けよ〜
  負けてもともと   この胸の〜
   奥に生きてる柔らの夢が   ......”
今夜は「柔ら」の歌が、なぐさめに聞こえて来る。

                                   
      アジさんからのお裾分け
甲イカと”尻焼けイカ”
誰がつけた学名かしらないが、「シリヤケイカ(尻焼けイカ)」とはひど過ぎる。
このイカは、姿も決して美しいとは言えないが、それよりも名前で格を下げ、偏見の目で見られる。
食欲も、この名前を聞くと減退してしまう。
姿、形は甲イカと全く変らず、種類も甲イカ族なのに。

わざわざ学名の「尻焼けイカ」と呼んで、侮蔑の眼差しを浴びる必要はない。
友人が、「尻焼けイカ」を、「甲イカ」と呼ぶ時は、絶対訂正せず、そうだそうだと自分も加担する。

ノビタも昔は「甲イカ」と信じ幸福な時があったが、それは間違いだと、余計な親切をしてくれる人がいた。
知恵の哀しさ、学名を知った時から「尻焼けイカ」に急速に冷めた時がある。
「甲イカ」の方が、絶対良いに決まっている。
「尻焼けイカ」の名誉の為と、食欲増進の為に、「尻焼けイカ」の学名を、永久に忘れることにしよう。

納竿
午前4時、魚信も遠くなり、帰ろうとしている所に、亮ちゃんが来た。
昨夜は石持、そのまま通しで、これからイカだそうだ。
その若さに乾杯!。
我々は現場を後にする。
O君はしきりに重い、重いを連発するのだが、”荷重く 足取り軽い 帰り路”で、
ノビタは、”荷軽く 足取り重い 帰り路”と、2人は対象的だった。

午後3時半、アジさんが大洗方面からの帰りに、ノビタの自宅に寄り、釣果の1部をお裾分けして行った。
既に〆て、きれいに鱗も落としてある黒鯛を頂戴した。
彼の本日の釣果は、36〜48センチの黒鯛4枚、近々彼と釣りを共にするか。
ただ、最近夜釣りにはまったノビタ、夜釣りも捨てがたい....。

  本日釣果
      O君  甲イカ  19匹
     ノビタ  甲イカ   6匹
 
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