2000年 9月7日(木)常盤の海                    

 
         餌は釣れたの巻き

                               
           閑散とした堤防に鴎舞う
眠れぬ夜
やかましいぞ、虫!。
時計を見ると、まだ午前1時。
どうする?目を閉じても眠れない。
「リンリンリンリン」
「リッ、リッ、リッ、リッ、リーーッ」
「リリリリリリリーッ、リリリリリリリーッ」
「チッ、チッ、チッ、チッ」

伴侶を求めて鳴く虫たち。
その一生は短かい。
限られた時間に、多くの事は望めない。
やらねばならぬ事は一つ、子孫を残すことだけ。
明日はない。
命ある限り鳴け、騒げ、迷うな、振り向くな。
そして燃えつきる。

   
   カンパチはまだか?
ガラーンとした堤防
寝床を離れ、居間でタバコを吹かしながら、しばらくボーッとしていた。
外に出ると、虫の鳴く声が、洪水のように飛び込んで来る。

空は雲に覆われ、星も月も無い。
夜道をリードで走る。
駐車場に車が3台。
それだけである。
やはり今日は平日なのだ。

堤防への暗い道をゆっくり歩いた。
聞こえるのは虫の鳴き声だけ、海鳴りは虫の声に消されている。
薄明かりの港内で、釣りをしている人が一人、二人、三人。
暗い堤防沿いには人の気配が無い。

テトラの切れ目に、ケミホタルの青い光りが2個、ボーッと空中に浮かんでいた。
竿の持ち主は見当たらない、堤防にひっ繰りかえって眠ているのか。
人間を踏まないよう足元を照らしながら進み、先週釣れたポイントに荷を降ろした。
腕時計を見ると午前3時だ、時間はたっぷりある。

餌が釣れた!
カンパチ用の竿2本を、餌待ちのスタンバイ状態にした。
その後、餌釣り用の竿の準備を始める。
餌釣り用の仕掛けは、コマセ籠にトリック仕掛け3.5号、その下に重り5号を付けた。
ガスランタンなど、海を照らす物は何も無い、コマセ籠とトリック仕掛けの間にケミホタルを付け、集魚灯の代りにした。
午前3時半、竿先にケミホタルを付け、準備完了。
ブラックホールの様な海に仕掛けを落とし、置き竿にして待つ。

                                             
餌入れは一杯
先週、この時間帯には何も釣れなかった。
だから期待はしていない。

仕掛けを投入して数分経過、空中に静止していたケミホタルが動いた!。
ククッ、ククッ、ククーーと、上下に10cmほど振れ、竿先が水平の位置で一瞬停止した。
食い上げだ。
竿を握り、慎重にリールを巻く。

魚の動きが、道糸を通して微かに伝わって来る。
リールを巻いて来る途中で、何度か魚の動きが消えた。
仕掛けが水面を切る。
魚がいるのか、いないのか、暗くて見えない。
ヘッドランプの灯りが、やっと獲物を捕えた。
何と、餌にピッタリの8cmほどの豆アジだ!。
嬉しい、これがカンパチに化けるのだ。
この後も、ポツ、ポツと、人間の餌サイズ混じりだが、豆アジが来た。

雷の恐怖
突然、闇に光りを感じる。
何だ?雷?。

また光りが走った。
間違いなく雷だ、釣りも気になるが、雷も気になり落着かない。
午前4時、闇の中からヘッドランプが近ずき、
「オッーース!」
O君だ。
光りは次第に華やかになり、その都度夜空を明るくする。
まだ雨は降っていないが、O君と話、これはヤバイと荷物をそのままに、戦場を離脱した。
朝拙めの好機、未練を一杯残しながら、歩いて30分もある車まで待避。

車に逃げると、待っていたかのように雨が降り出し、雷鳴も勢いを増した。
午前5時、雷は消えたが雨の勢いは衰えない。
雷が収まれば怖くないと2人で雨の中に飛び出し、堤防先端に戻った。
目的地に着くと、5人ほどが雨の中で釣りをしていた。
稲妻と雷鳴の轟くなかで、釣りをしていたようだ。
我々以上のケモノ辺だ。
暴走族の様に、人に迷惑を掛ける分けではないが、間違いなく無謀である。

餌を食い逃げされた
午前5時半、どしゃ降りの中で釣りを再開。
餌入れのバケツは雨水で溢れていたが、餌は皆元気だった。
早速、生き餌を付け、カンパチ釣りを開始。
O君は、どしゃ降りの雨に立ちすくんでいたが、のろのろと準備を始めた。
餌釣りも再開、餌は次々と釣れる。

                                     
        半分食われたアジ
O君がノビタの竿を見て、
「この竿、アタッたよ、前アタリかな〜?」
ノビタは気にしなかった。
竿には命綱をつけている。
しばらくして、その竿を上げてみると、何と!釣り針の直前から餌の半分が、食い千切られていた。
後、0.1ミリメートル深く餌に食いつけば、獲物はGet出来た。
獲物にとっては”危機一髪”、ノビタには”不運”な、運命の0.1ミリメートルだった。

納竿
我々も含め11人の釣り人がいたが、午前8時まで誰にもカンパチは来なかった。
じっと竿を見ている人、ウロウロと周囲の海を眺めている人、他人の所で話をしている人、など様々だが、堤防全体にあきらめムードが漂っていた。
我々もこれ以上此所にいても期待薄と、午前8時に戦場を撤退した。
カンパチのシーズンは終わったのか、潮が悪かったのか、水温が低下した為なのか?

中国の漢詩風に。
                                 
        餌は釣れました

 
雷光雷鳴 天地を走り
 
驟雨   釣り人を襲う 
 
カンパチ何処 沈黙の海
 
熱い思い 絶ちがたく 
 
未練大山 跳ねる豆鯵
 
わが竿  わが仕掛け
 
わが道具 すでに集まる
 
みな伝ふ 帰らんかな


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