2001年 4月14日(土)日立寄りの海                
  桜吹雪に黒鯛舞う!

                                    パープルブルーの朝
釣れそうな予感
透き通って何一つ不純物のない青い空。
無風に近く、夏を思わせる陽気だ。
釣り開始から3時間半が経過した。
釣りを開始した直後に、アジさんが外道で40センチ丁度のアイナメを釣ったが、その後は何もなし。

今日はアジさん、ハナさん、それに先週も挑戦したキンさんの3人の黒鯛釣り師を伴って、黒鯛に再、再挑戦。
アジさんはノビタの隣り、ハナさんとキンさんは先端寄りのテトラに行く。

午前9時頃、ノビタよりやや高い位置にいるアジさんが、ノビタに仕掛けを投入する位置変更のアドバイス。
彼の言う方向を見ると、テトラがV字型に深く切り込んでいて。
沖から寄せる波と、払い出しの波が衝突し、せりあい、V字型湾を中心に絶えずサラシができていた。
何やら起こりそうな神秘的な気配が有り。
急遽、ポイントをそこに絞り、コマセを集中的に投射。

”はな子”活躍
ポイントを変更して20分ほど経過。
V字湾の沖目、突き出たテトラの北側1メートルほど先に仕掛けを投入する。
”はな子”が、ゆっくり波に揉まれながら左から右へ流れ。
足元の黒い沈み根の先、3〜4メートル沖で停止した。
そのままモスグリーンの海に、”はな子”が沈んでいく。
”はな子”は、昨日、日立フイッシングセンターサウス店で、特別に調達した錘負荷1号の、円錐浮子の名前だ。

  
ノビタの選んだポイント
”はな子”は、呻きながらさらに沈む。
「.......
if!
ソロソロとリールを巻き、道糸の遊びをなくし...。
”はな子”が海中に埋没した...1〜2秒、竿を垂直にハネ上げる。

天晴れなる抵抗
途端、巨人の手でバッシ!と、磯1号の細竿が引き倒され。
容赦無し、頑固、苛烈、精悍、無双の引きが返る。
瞬間、お脳の中は、爆発し、沸騰した。

「キタ〜〜〜!」
アジさんに聞こえるように、大声を出す。
アジさんが、
「クロか?.....(竿の引き具合を見て)それはクロだ!」

「待ってろ、あせるな、あせるな」
危険なテトラの上なので、移動が難しい。
(早く来てくれ〜〜)
ハリスは1.5号の細糸、ハリスよ負けるな、頑張れ、耐えるんだ。
姿の見えない敵が、足元の根に猛烈な勢いで突進して来た。
あせった、うろたえた、パニくった。
竿を立て、リールを巻き。
頭の中の知識を総動員したが、ただ右往左往するばかり。

夢を手にする
敵を浮上させようと、磯1号の柔軟性を頼りにポンピングし、強引にリールを巻くと。
敵が上向いた。
何度かの追撃を受けたが、とうとう勇姿を水面に表した。
まぎれもない黒鯛だ。
足元下海面まで4メートル、波の白い泡だつ中に黒鯛がいる、油断していると反撃に出てテトラの隙間に消えそうになる。
アジさんがタモを持って来るまでの20秒ほど、かってこれほど20秒を長く感じた事があったろうか。
黒鯛との一期一会がサラシの別れ、何て、情けない事になりそうだった。
とうとう、アジさんがタモ入れ成功。
                                 
複雑な潮の流れを起こすV字湾
「ヤッタ〜!。」
計測36センチ、合格!。
心臓が轟く。
此所は、もう未知の世界だ。

第二の衝撃に未来を見た
午後1時。
足元から沖、10メートルほどを”はな子”が流れていた。
流す距離は始点から終点まで約15メートルほど。
黒鯛がヒットしたポイントに近ずく、”はな子”がまたも止まった。
”はな子”が沈む。
波による1時的な沈みなら、”はな子”は水面に浮上してくる。
待った、2〜3秒経過。
”はな子”が、完全に消えた。
竿を大きくあわせる。

   
隣りのアジさん
ズシーン、沈んでいたバケツを引っ掛けたような衝撃が返ってきた。
竿が途中で停止。
直後、すごい剛力でなぎ倒される。
一撃。二撃。三撃。
竿がたたない。
脈拍異常、呼吸困難。
何という強力、抗戦できず、防戦できず、掠されるがまま、その剛勇無双にGive UP!。

「どうしたーーー!」
ノビタの異様な雰囲気に気がつき、アジさんの声が飛んできた。
「わからない!」
そう答えた。
「それはクロだ!」
アジさんの声。
自分もそう思う。
でも脳天Φ羅だ。
手の打ちようがない。
                                   
これノビタが釣りました
今朝の黒鯛と同じコースを走り、同じような引き。
ただその力は、今朝の数倍パワーUPしている。
これ以上曲らないほど湾曲した竿は、水面近くまでのされ、動かない。

あせった、あわてた、いささか性急すぎた。
竿を強引に持ち上げようとし、かつリールを一巻き、二巻き。
次の瞬間、道糸の張力が消え、糸がけしとび、竿がはね上がる。
「バラシ?」
アジさんの声だ。
茫然自失。
頭も、足も、手も、しばらく震えが止まらない。
一体、あのど迫力は何だったんだ。
相手を失い、間が抜けて阿呆に見える竿が、微かに風に震えていた。

さすが、ハイブリットマシン搭載の海の隼。
繊細で、俊敏、強靭な力を合わせ持つ海の賢者。
全身に火力を蓄え、蒼暗の洞窟に潜み、弾丸の如く敵を倒す黒い影武者。
命燃え尽きるまで、死力をつくす闘志。
光沢を放つ銀色の鎧で覆われる勇姿は、美しく華麗。
恐れをしらない不屈な面構。
我々釣り師の夢と希望なのだ。
天晴れなる勇者よ永遠であれ。

戦い済んで
皆が、ノビタの仕掛けを見て驚き、そして不思議な顔をする。
何せ、海の賢者黒鯛を相手に、あまりに稚拙、単純、素朴な仕掛けなのだ。
今回の仕掛けは、海タナゴを釣る時の仕掛けより幼稚だった。
でもこの幼稚な仕掛けに2度ヒットした、1度はバラシたので現認されなかったが、あれは間違いなく黒鯛だったと思う。

    
   悲願成就
それも50センチ近い大物だったと思う、絶対そうだと思いたい。
いつかこの幼稚なノビタ流仕掛けで、仕留めてみたい。

午後2時半、全員が現場を撤退した。
残念ながら、本日黒鯛を仕留めたのは、ノビタだけであった。

4人揃って熱い堤防の上を歩いて来た。
感動が全身にすみずみまでいきわたり、ピンカラ天気の熱く乾いた埃ぽい空気を吸いながら、かってない充実感に浸されていた。
黒鯛釣り師達は、これがあたり前なのであろう、坊主など何処吹く風と明るい。

我が家に着き、カミさんに自慢気に見せると、”今日は誰に貰ったんですか”と聞かれてしまった。
全く信用されていない。
黒鯛は人様に貰って来る物と、カミさんを教育してしまったようだ。
あわてて何度も自分が釣ったんだと説明したが、なかなか信用して貰えなかった。
これはカミさんの再教育の為にも、もう1度釣る必要がありそうだ。
 
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