2001年 4月28日(土)日立沖堤防                  
   日立沖堤、来た、見た、破れた!

                                   最高の朝だった..
穏やかな朝
午前3時40分、暗い船着場に着いた。
暖かく、風も無く、波も無く、空には無数の星が輝いていた。
黒鯛への情炎に、油を注ぐような天候である。
船着場に、重いコマセ入れバケット、竿ケース、荷物を降ろし。
日立フイッシングセンターサウス店に移動して、店の前にバイクを置く。

店内に入って行くと。
蛍光燈の灯りが眩しい、まだ客はいなかった。
E子さんが、ニコニコしながら迎えてくれる。
午前3時頃来たという。
相変わらず元気溌剌お姉さんだ。

  
   あばずれの穴?
第一便出航
午前4時前にドラえもんさんと、彼の同僚であるK君。
殆ど同時に、北茨城市のルアーマンSさん、その友人Tさんが入って来た。
S氏とT氏は、最近、伊勢海老に大変御執心のようで、ここ毎週の様に日立FCSのホームページを、伊勢海老で飾っている。

第一便に乗船したのは24〜5名、満員御礼の船が、白けた港内をヨタヨタと進んで行く。
5〜6分ほどで日立沖堤に着いた。
同船した釣り人達は、船着場に着くと、あっと言う間に思い思いの秘めたるポイントに散って行った。

初めての戦場
日の出直前の洋上は、どんどん白い光りに霞んでいく。
日立沖堤は全長2キロメートルほど。
今回臨む場所は、ドラえもんさんとノビタにとっては処女地だが。
多くの人の手垢や、指紋、足跡がついたあばずれの地である。
あばずれ相手では、いささか腕に自信が無いが、奇跡を期待しての挑戦だ。
ビジネスでは許されない”勝てる論理”無しの戦いである。

此所は、アスファルトの幅が狭く、それを補う様にテトラが外洋に平坦に転がっていて。
そのテトラの林立する中に、潮通しの良い池の様な窪みがある。
一見、穴釣りの好ポイントだが、この穴は強者どもに遊ばれ、探られ、何度も犯された、夢の跡かもしれない。
ドラえもんさんとノビタは、このテトラの林を越えた外洋側を、今日の釣り場にした。

                                  
  手強い穴じゃ〜
眩耀の海
午前5時半、第1投。
黄金の光りが乱舞する眩耀の海に、浮子がポチャーーンと落下し消えた。
道糸を張りぎみにし、竿を動かし、遠投浮子の位置を確かめるが、すぐまた光りの中に浮子を見失う。

隣りにいるドラえもんさんも、偏向グラスを付けていない、同じ様に光りの洪水の中で、難儀しているのだろう。
海は規則的に、遠くからゆっくりと小さなうねりを運んで来て、テトラで小さく砕け、ザザーーッ、ザザーーッと白い泡を起こし、足元で小さな輪を絶えず作っている。
今日はベタ凪の海、これも厳しい条件である。

海は応えず
ほら、来い!ほら、来い!と、原爆的効果を期待しつつ、チヌパワースペシャル、オカラダンゴ、沖アミ混合のコマセを、ドバーッ、ドバーッと浮子の周囲に撒き散らす。

                                      
穴を征服したぞ!
海は、応えてくれない。
どうした?。何処にいる?。
子は親を知らず、親は子を知らず。
”我ときて 遊べや 親のない黒鯛”。
まだか、まだかと浮子を凝視するも、むなしく時は過ぎて行く。

午前8時、単調な時の流れに、そろそろ精神のゴムが伸び切ってきた。
この辺で緊張を緩めないと、ゴムが馬鹿になると、休戦。
テトラから堤防の上に戻ると、K君があばずれの穴で、20センチほどのカサゴを釣り上げた所だった。

ニコニコしながら、魚をこちらにかざして見せる。
あばずれを征服したK君、偉い!。
君も立派な男だ(関係ないか)。
K君は、この後もソイやらドンコやらを穴から釣り上げた、これも勢いだに。

S氏の友人であるT氏が来た、様子を聞くと伊勢海老の大物を掛けたが、穴が小さくて足だけ上がってきたという。
他に小物の伊勢海老を1匹釣ったらしいが、逃がした海老がくやしそうだった。
格言、”狭き門から入れ でも出れなくなる”。
やはり穴を選ぶ時は、大き目を選ぶべきである。

一瞬のときめき
日が大分南側に移動し、浮子もようやく見えてきた。
波間に漂っていた浮子が、突然、海に没し、眠気が吹っ飛んだ。
ドッキーーンと心臓が鳴り、全身に戦慄が走る。
電光石火、竿を大きく後ろへハネ上げた。
海中から抵抗が。
途端、拍子抜けと、失望と、落胆と。

重量感のないクイクイクイとした魚の動きが、むなしく竿を叩く。
あっけなく水面から上がった夢のかけらは、15センチほどのフグだった。

東海の黒鯛釣り師T氏も近くに来ていて、彼の話しではノビタの居る場所で、月曜日に2枚上がったとのこと。
やはり此所は、あばずれの穴である。
多くの人が、入れ替わり立ち代わり攻撃し、すれっからしにした穴なのだ。
ノビタの腕では、攻略不可能なのかも。

 
   ドラえもんさんの戦果
ドラえもんさんにキタ
11時過ぎ、仕掛けの絡みを解いていると。
何やら騒然とした気配を感じ。
振り向くと、15メートルほど北側にいるドラえもんさんの竿が、大きく円弧を描いている。
きた!?。

ドラえもんさんが、こちらを見て何でもないといった仕草をしている、様に見えた。
見ると、敵は沖に向かって逃亡中だった。
何だマルタかと、また絡みを解いていて、ふと振り返ると。
ドラえもんさんがタモ入れ中だ。

視点を、タモの先へ移動すると。
何と!、銀色に輝く黒鯛ではないか。
ドラえもんさんが、手慣れた手つきでタモ入れ完了、そのままアスファルトの上に、後を追って行き早速計測。
38センチ!、負けた。
ノビタが先先週釣った黒鯛より2センチ大きい。
                                   
伊勢海老釣り師がいた
敗戦の将、熱を冷ます
まだ時間があると慌てて釣り場に戻り、仕掛けの絡みを解いて投入。
コマセを、ドバドバドバと焼い弾の如く、海上に落下。
時、すでに遅しか、一瞬の光芒は去り、海は元の静謐さを取り戻し、2度と沸騰することは無かった。
午後12時半、納竿。
午後1時の便で帰港した。

久々の日立沖堤。
来た。見た。破れた。
黒鯛への熱が冷めていく。
本来の、釣れる魚を追う釣り師に戻ろう。

 
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