2001年 5月26日(土)常盤の海                    
     今年初物をゲット
                                  4時半、誰もいないポイントで
寝坊
目が覚めた。
側にある目覚し時計を見ると、午前4時09分。
外はすっかり明るい。
「しまった!」
”これは寝すぎた しくじった♪”(兎と亀の歌)
布団を跳ね除け階段を転げるように降り、パジャマを剥がし。
シャツ、シャツ、シャツ、シャツは何処だ?。
ズボン、ズボン、ズボン。
ジャンパー、ジャンパー、ジャンパー。
クツ下、クツ下と。
それにハンカチ。
着替えに孤軍奮闘。
前の晩用意をしていないと、こうなる。

玄関の小ツバメ
釣り道具の入った小さなバッグを背負い、右手におっとり刀ではないシーバスロッドを持ち、玄関を飛び出すと。
チッ、チッ、チッ、チッ、チッと、玄関にあるツバメの巣から、小ツバメ達が一斉に囀る。
「おどかすなよ〜〜!」
「いま、お食事中だったんだぞ!」
「おかあちゃんも、おとうちゃんも逃げちまったよ」
「かわりに餌よこせ〜!」

日に日にたくましくなった小ツバメ3匹、もう親と同じ大きさ。
小さな胸に、はちきれそうな夢を抱き、いまか、いまかと大空へ飛び立とうとしている。
まだ未来に何の不安も抱いていない。
挫折も、苦痛も、苦悩も、困難も、失敗も、危険も、今は無縁だ。

まだ飛び立つな、もう少し我慢しろ、親の愛情をもっとむさぼれ。
飛び立ってからではもう遅い。
人間の言葉が分かったとしても、まだこの意味を理解出来ない、その哀れさ、はがゆさ、愚かしさ。
小ツバメの囀りを背に、50CCホンダリードに跨った。

全て斬り捨て御免
空は灰色の雲に覆われ、息苦しい。
緑一色の畑、田んぼ、林、の中をエンジフルでぶっ飛ばす。
駐車場に着くと、先客の車で一杯だった。
バイクを隅っこに置き、先を急ぐと。
堤防にはすでにお兄ちゃん、お姉ちゃん、おじいちゃん達がいた。
魚は彼等に釣られてしまったのだろうか。
くやしい。
邪魔者は斬る、堤防の上の釣り人をバッサ、バッサと斬り捨てながら歩いて行く。

「道を歩くとき、剣術使いになったつもりで、すれ違う人を斬って捨てながら歩いてゆく。
男はみんな物騒だから斬る。女も此の頃はアブないのが多いから斬る。年寄りも感じの悪そうなのは容赦なく斬る」 (風間 完 画伯の随筆より)

ルアー釣りは芸術さ
ポイントの選定に迷ったが意を決して、初めてのポイントを選んだ。
そこには邪魔者はいなかった。
朝拙めはもう終る、時間が無い。
あせりながら準備するため。
たわいのないサビキ仕掛けの取り出しも、なかなか固定紙から剥がれない。
何とかサビキを道糸に取り付け、その下に重り代わりにピンクの30gメタルジグをセット。
風は弱い南風、海は小さい凸凹波があるが、凪に近い状態だった。

午前4時35分。
乾坤一擲の第一投、仕掛けは50メートルほど飛んだろうか。
道糸がスルスルスルとリールから滑り出て行く。
道糸の出が止まった。
重りのジグが海底に着地したのだ。
道糸をゆっくり、リズムをつけながら巻いて来る。
スロー、スロー、クイック、クイック、スロー、スロー、スロー、クイック。
スロー、クイック、スロー、スロー、スロー。
ダンスのレッスンより複雑な引きのテンポ。
この技が、素人と玄人との差である。
ルアーフイッシングは芸術さ。

そして今年初の
”迷子の迷子の太刀魚サン、迷子の迷子の小鯵サン、早くジグサビ見つけてね♪”
と魚に呼びかけながら。
一投目は不発。
二投目も不発。
   ・
   ・
   ・
何投目だろう、
「...........?」
何かを引っかけた様な感じ。
リールを巻くスピードをさらにスローダウンさせ、全神経をグリップを握る手に集中させた。
一瞬、海中から断続的にクィー、クィーと異常を感じる、これは正常の異常なのか、異常の正常なのか?。

時々、異常を感じながら仕掛けが岸に近ずいて来た。
と、モスグリーンの海中から、銀色に光るナイフの刃がキラリ、キラリと円を描きながら浮上して来る。
フグか?。
水面から抜き上ると。
”正体見たり枯れ尾花”まぎれもないアジだぜ。
「ヤッタ〜〜♪」
サイズは18センチほど。
小さいがアジはアジである。
今年初物、本日曇天なれどお頭の中は晴天なり!。
時刻は午前5時だった。
この後、すぐ同サイズの2匹目を追釣。

しばらく間をおいた後。
岸から10メートルほどの所で、グイッと根掛かりの感触。
リールを巻く、巻き取れる。
手を休めると、竿先がヒク、ヒク、ヒクと御辞儀をする。
足元まで来た所で、クィーン、クィーン、クィーンと明確な引き。
浮上したのは40センチのサーベルフイッシュ、和名太刀魚。
これも今年初物、本日は最高の1日となった。

帰途、同志に会う
午前5時半、海中からの応答がなくなり、納竿。
隣りに来たヒラメ狙いのルアーおじさんの話しでは、彼の指差すポイントで、先週の夜、アジを100匹ほど釣った人がいたらしい。
また新たな夢が沸沸と.....。

”我々は手に入るものではなく、希望するものによって楽しんでいる。
 我々は幸福になる前にしか幸福であり得ない”
                      「懺悔録」 ルソー
      
朝拙めの釣果
堤防下の水面を見て帰ると、甲イカの溺死体を発見。
敵と壮絶な戦いをしたのか、黒い体の周囲から白い肉がボロ切れの様にはみ出て、波にユラユラ揺れていた。
間違いなく甲イカも入港している。
常盤の海は、確実に夏の魚類が帰って来た。
いよいよ釣り天国の季節である。

しばらく歩くと、今度は生きているGAMIさんと遭遇。
GAMIさん、顔を喜色満面雑巾の様にクシャクシャにして、
「釣れましたよ、マゴチ!」
と、堤防下からヨタヨタと這い上がって来た。
続いてもう一人、ヨタヨタが這い上がる。
名前を忘れてしまった、WAKAさん?だったか。
2人は昨夜の午後9時から来たという。

GAMIさんに、クーラーの中の獲物を強引に見せられる。
小アジが30匹ほどと、50センチオーバーかと思われるマゴチが目に飛び込んで来た。
ああ、ショック也!。
こしゃくな、とGAMIさんをバッサリ斬り捨てた(ゴメンナサイ)。

そこに、会社の同僚KWさんがニコニコしながら登場。
ノビタが今朝やった所を教えてやると、とてもあんな遠い所は行けないと言う。
                                    
日が沈むまで
鹿嶋でやる場所はもっと大変でしょうと言うと、あそこは別なそうな。
難しいおじさんである。
ついでに、バッサリ斬り捨てた(ゴメンナサイ)。
午前6時25分、彼等に別れを告げて帰って来た。


黄昏の攻防

午後5時、再び今朝と同じポイントに出撃。
今朝と同じジグサビキ釣法で戦う。
今朝と同じように、雲が空を覆っていた。
気温が高いので、弱い南風が心地良い。

堤防の上は、帰る人、これから始める人と、絶えず新陳代謝が進んでいた。
ポイントの堤防には、手前の方に3人、2人はイワシ釣りのおじさん、もう一人はルアーマンがいた。

早速、ルアーを投げる。
ジグサビキ3投目に、確かな引きを感じ。
抜き上げると、20センチほどの背黒イワシがダブルで掛かって来た。
その直後に小気味よい引き、竿が、これでもか、これでもかと、乱打される。

     
    黄昏の釣果
夕映の照り返しで、黄金色に輝く水面から。
太刀魚のトリプルが、抜き上がった。
その後ポツ、ポツと、太刀魚を2匹追加。
........しばらく音信不通。

午後6時、海がプツプツと沸騰した。
ダークブルーに変った海が、ガラスの破片を撒いたように、キラキラと輝き。
イワシ釣りの2人が、竿を上げたり下げたり夢中になって海とチャンバラをしている。
海一面にイワシが湧いたのだ。

そのイワシの群れの中に、ジグサビキをブッ込み引いて来ると、クイーン、クイーン、クイーーンの引きが伝わって来る。
それはイワシではなく、嬉しいアジだった。
パタパタパタとアジを3匹釣った後、イワシの群れも消え、再び音信不通。
午後6時30分、納竿。

アジ、太刀魚、甲イカの季節到来を確認した1日が終った。

本日のジグサビキ釣果   小アジ....18〜20センチ 5匹
                太刀魚....38〜43センチ 6匹
                背黒イワシ..18〜20センチ 3匹

 
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