2001年 9月1日(土)東海某堤防ルアーフイッシング      
         砂漠化した海

                               隙間なしの人だが...
ワカシ発見
午前5時。
風は弱い東風。
雲に覆われた東の空。
雲の切れ間が、白から水色に、水色から青へと変化して行く。
黒い海も、冷たい銅板色となった。

突然、バシャッ、バシャッ、バシャッと魚の跳ねる音が。
いまか、いまかと、その時を待っていた夢追い人達の目が。
一斉に音のする方を向く。
ノビタの隣りで、竿がしなっている。
堤防際でのやりとり。
戦いを制し、30cmほどの白い魚体が、水面から抜き上げられた。
ワカシだ。

堤防全体に熱い気合が。
ビシッーー、ビシッーーー、ビシッーーと空気を振動させ、薄暗い空に無数のマウスが飛ぶ。
ドボーン、ドボーンとマウス(スキップバーニー)が海に落ち、そのまま堤防に向かってパシャ、パシャ、パシャと走り、その飛沫が海に幾状もの白い線を引く。
静かな海は一転して騒然となった。

ヒット!
マウス第一投、50メートルほど飛んだ。
空振り。
マウス第二投、堤防から20メートルほどに近ずいた時、マウスの後ろで飛沫が上がった。
その廻りに、小さな渦が巻き起こる。
「食いつけ〜〜〜!」
声無き、絶叫を上げる。
と、リールを巻く手にグググッと急激な反動。
堤防から垂直に伸びていた道糸が、大きく左に張り。
逆転して右に張る。
最高の瞬間だ。

    
糸引きアジ
華麗なる最後
「もっと、もっと、引け!、走れ!、潜れ!。」
その命を燃焼し、闘い抜け。
華麗なる最後を見せてくれ。
そして静かに幕を下ろせ。

リールを巻く、容赦無く、問答無用と。
堤防際で竿がなぎ倒され、グイグイと竿先が海に引かれたが。
そこまでだった。
相手の強引な引きを交わしながら竿を起こし、一気に抜き上げた。
ワカシ、28センチ也。

パッとしない海
この後、またワカシがヒットしたが。
抜き上げる時、針から外れてドボーンと海中に消える。
20cm強のサバを、1匹追釣。
これがラストだった。

朝の5時〜5時半まで、周囲30人ほどが、カンパチ混じりで0〜4匹の釣果。
夜釣りの人に聞くと、アジは全く釣れなかったようだ。
一晩で3〜4匹と、一寸考えられない貧果だ。

           
                    G.Tの子供(島アジ)
また職漁船が
まだ暗い5時前に、一艘の職漁船が激しいエンジン音を響かせて湾内に入って来た。
湾内を偵察して行く。
彼等が魚群探知機で見たものは、海底に立つ幾億もの魚の墓標であろう。
生き物のいない砂漠を見て、何を思うのか。

誰かが叫んでいる。
「船の名前をよく見て俺に教えてくれ、俺が漁業組合に抗議してやる。俺らも法破りかもしれないが、奴等の方が罪が重い」
思わず拍手したかった。

その声に覚え有り。
東海のアジ釣り名人、船越さんだ。
船は、我々から離れた所でUターンし、そのまま沖に去った。
船越さんの声に、恐れをなしたか?。
違う、砂漠のように何もいない海に、見切りをつけただけであろう。

     
貧果パート1
朝の部終了
この後、船越さんが珍しい魚を2匹上げた。
糸引きアジと、島アジだ。
その度に飛んで行き、写真を撮らしてもらう。
魚の気配が消えた海に見切りをつけ。
午前6時半、撤退。

朝の釣果
   ワカシ 28cm 1匹
   サバ  22cm 1匹




車の山
午後2時半、蝉時雨の道を通って港へ。
駐車場周囲は、朝と同じ、すさまじい混雑。
駐車場から吐き出された車は、道路と、その後ろの丘に黒い山となって連なっていた。

東海のアジ釣り名人は、朝いた場所から100メートルほど離れた所にいた。
朝からの成果を聞くと、
「努力という見えない魚しか釣れなかったよ」
「姿は見えなかったけど4回バラシ、頭にきた」
と、笑っている。
全然頭に来た顔じゃない。
人間、同じ事が繰り返されると、いつか勘が鈍くなり。
脳味噌が退化していくこともある。
名人、8月9日にワラサを逃がした時から脳味噌が退化しているのか、ちと心配。

                              
  夜と昼の部隊交換
堤防は黒山の人出
堤防も、人の林だった。
あまり邪魔にならない様な所が有り、入れてもらう。
今朝と同じ様に、シーバスロッドにマウス、磯3号竿にアジサビキ+重りの2本立て。
状況を見て、交互に投げる戦法だ。

周囲は、ハナダイを背掛けにした青物狙いがほとんど。
朝からまだ釣っていないと言う。
別天地を、ああでもない、こうでもないと考えた結果、毎度御馴染みのこの海に足を運んでしまった。

体力の消耗だけ
風に逆らいつつマウスを飛ばす。
「下手な鉄砲も数撃ちゃ当る」
と何十回投げたか、当たらなかった。
真夏の残照厳しく、堤防の上でひたすらむなしい汗をかく。

石川 啄木の暗いトーンがよく似合う。
原文、”はたらけど はたらけど 猶(なお)我が生活(くらし)楽にならざり じっと手を見る”
が、
  ”とばしても とばしても
        なお我が釣果楽にならざり 
                 じっと手を見る”
となり、「ホッ」と溜め息が出る。

大物バラス
隣りで浮子釣りをしていた人に待望のアジが2匹。
永遠と朝から10時間粘ってだ。
無駄かと思ったが、マウス飛ばしを止め、磯3号4.5メートル竿に切り替えた。
ハリス2号、針9号のアジサビキ、それに重り8号をつけ、50メートルほど投げる。
重りが着底した所で糸フケを取り、竿を起こそうとすると。
ガーンと竿が前に張り倒される。
何だ!。
頭から足の先まで一気に血が駆け巡った。

竿をジワ、ジワと持ち上げると、ガン、ガン、ガンと強烈な投打を浴び。
ポンピングしながら獲物を浮かせようとするも、浮き上がらない。
追撃を交わしながら、ギリギリとリールを巻き、敵を堤防に引き寄せてきた。
隣りの釣り人が、タモを持って走って来て。

「これは大きいぞ」
「う〜ん、それほどでも....」
「相当の引きだな〜」
と、隣りの客が感心した時に、仕掛けが動かなくなってしまった。
堤防から10メートルほどの所だ。
根に仕掛けが引っ掛かったのだ。
直後、ガン、ガンと2回連打、途端に竿は静かになる。
敵は、ハリスを切って逃走したらしい。

「シャボン玉飛んだ  
     屋根まで飛んだ 屋根まで飛んで
                   壊れて消えた♪」
チャン、チャン。
    
                                  貧果パート2
納竿
この後は、アジが1匹釣れただけ。
これが今日の最後の釣果となる。
東風が絶えず吹き、寒くなって来た。
午後5時半、かくべーさん、にしびーさん、とその友人の3人が、やって来た。
アジが駄目だと話すと、かくべーさんがっくり。
東海の名人一行が撤退し、かくべーさん一行が入れ替わってその釣り場に入った。
黄昏が濃くなって来たので、午後6時、納竿。

また石川 啄木をアレンジ、
「手に持つ釣果の そのあまりの軽きに泣きて 三歩あゆまず」
西の空は、雲も空もバーミリオンに染まり、刻々と夕闇が堤防を包んで行く。
近ずく夜の闇と競争するかの様に、駐車場に急いだ。

夕方の釣果
   アジ  18cm  1匹
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