1999年 9月11日(土)日立沖堤防                   
大願成就の巻
                                              アジさんの勇姿
今日も大盛況の渡船
日立フイッシングセンターサウス店の前に、バイクを付けたのは、午前4時前。
店内の灯りが燦燦と外にこぼれ、大勢の客が出入りしている。
暗闇から突然、
「おはよう!」
と、アジさんが目の前に現れた。

そのままアジさんは店に入って行く。
遅れてノビタも入る。
狭い店内に、溢れるような人だ。
店の奥の方にアジさん、隣りに我孫子のmanabuさんもいた。
manabuさんも今着いたばかりとのこと。
店で渡船券を購入し、船着き場に行くと大勢の人が待っている。
第一便の船は午前4時半発。
船は天子盛りの人で、今にも沈みそうになりながらヨタヨタと出航。

佐々木小次郎の待つ巖硫島に向かう宮本武蔵の心境はどうだったか知らない。
ノビタはカンパチの待つ日立沖堤に、今日こそは決着をつける日にしようと決意も固い、
「待ってろカンパチ、逃げるなよ!」
黒々としたシルエットの沖堤防を目の前に、心がはやる。
夜明け前の暗い海は、風になでられ、小波が立ち、ざわめいていた。
風は正面からの東風、波飛沫が身体に降り注ぐ。

暗い海からカンパチが
船着き場につくと、アジさんが一番でダッシュ。
続いて、その他ゾロゾロに混じり、ノビタとmanabuさんがアジさんの後を追う。
アジさんが、別船で先に着いたXXXX御一行様を途中で出し抜き、予定のポイントを奪取。
我々もタッチの差で予定のポイントに到着し、周囲に陣取る。
まだ4時半を廻ったばかり、まだ周囲も暗い、暗い内は擬似餌には食いつかないだろうと、あせらず準備していたが、アジさんは早くも投げ始めた。
続いてmanabuさんも投げる。
今日の仕掛けはマウス(スキップバーニー)だ、弓角の変りに自家製のバケを付けた。

アジさんが、マウスを何度か投げるが反応が無い。
突然、
「キター!」 
                            
                    マウスと自家製バケ
manabuさんの低い、叫び。
「カンパチですか?」
と、ノビタが声をかけると、一寸間をおき、
「これは太刀魚ですね」
と気落ちした声が返ってきた。

続いて離れた場所で竿を振っていたアジさんにきた。
黙々とやりとりをしている。
「カンパチ?」
アジさん聞こえたのか、聞こえなかったのか、
「...........。」
手間取ったようだが、堤防の上に引き抜き、そのままスカリに魚を放り込んだ。
本日、第1号のカンパチはアジさんがGetした。

始めの1匹
ノビタも慌てて参戦。
午前5時前、まだ薄暗く天と水の境がはっきりしない海へ、第一投、ノー.アンサー。
第二投、ノー.アンサー。

突然、manabuさんの竿が大きく弧を描く。
しばらくやり取りをした後に引き抜いた、カンパチだ。
manabuさん生まれて初めてのカンパチだ。
アジさん、そしてmanabuさん、ノビタだけまだこない!
ノビタはあおられている。

またまた弱気の風が、皮膚の下をひとなでしていく、今日も自分だけおあずけ?。
南無八幡大菩薩!天にまします我らの主よ!全知全能の神よ!勝利の女神よ!
ノビタの時だけよそ見をしないで下さい!。

3投目、マウスが40メートルほど先の水面にポチャンと着水。
着水と同時に、リールを1巻き、2巻き、何の感触もない、突然、竿先がグイーと前に引っ張られた。
「キター!」
グイーン、グイーン、グイーン、と竿先が強引に海底にたぐられる。
パンピングしながらジワジワと獲物を引き寄せて来る。

途中、ガク、ガクと竿を連打されながら、何とか堤防の足元まで魚を寄せると、まだ暗い水面に白い魚体が横たわった。
大きく息を吸い、一気に5メートル下の水面から堤防の上に引き上げた。
32センチのカンパチだ。
ノビタがカンパチをスカリに入れようとしていると、今度はmanabuさんにヒット。
manabuさんのカンパチはテトラの根に廻ろうとしている。
非常に危険な状態だけど、そちらはmanabuさんにまかせ、ノビタはマウスを再投入。
朝拙めの時間は短い、とにかく効率よく上げないと、数を伸ばせないのだ。

2匹目のカンパチ                                       manabuさん
マウスがポチャーンと着水、と同時にいきなりガバッと水の音。
直後に、強引な引きが竿に加わる、カンパチだ!
カンパチの体内に搭載された頑健なエンジンが火を吹く。
海中からの華麗な力が、道糸を通してビリ、ビリと手に伝わって来る。

強烈な抵抗、ドラッグから道糸が、ジリ、ジリ、ジリと出て行く。
「マズイ!」
カンパチがテトラの根に突っ込んで行く。
アジさんのがなり声、
「巻くんだ、ガンガン巻くんだ〜!」

バイオマスター3000の小柄なリールが、キュル、キュル、キュル泣き、リールが竿からハジキ飛びそうになる。
竿を真っ直ぐに立て、汗を飛ばし、ガン、ガン、ガン、ガン、徹底的に、容赦無く、強引に、巻いて来る。
最後の最後まで、敵は死力をつくし、何度も竿に追撃を食らわしてくる。
無事、Get!
カンパチ36センチ。

不意打ちの3匹目
釣れたカンパチを堤防の上に放置したまま、再度投げる。
ポチャーンと着水、何も異変は起こらない。
マウスが水面で飛沫を飛ばす程度にリールを巻いて来る。
「来い、来るんだ、カモンベービー、どうした?!」
距離は40、30、20、10メートル、もうテトラだ。

マウスを水面から引き上げようと持ち上げようとした時、いきなり不意打ちを食らった!
持ち上げた竿先が、見えない巨人の手でバッシーと張り倒された。
反射的にドーンと合わせを食らわす。
敵は逃げる、弾丸のような速さで、斜めに、海中深く。
竿がガク、ガク、ガクとのされる、相手の力が弱まるのを待ち、リールをガン、ガン、ガン巻いた。
道糸4号、ハリス4号の強力な張力と、竿の柔軟性が頼りだ。

一気にゴボー抜き。
30センチ級のイナダだった。

  
    本日の釣果
この直後にmanabuさんが3匹目のカンパチをGetした所で、The End!。
午前5時20分、以降後が続かない。
釣り始めてわずか十数分足らず、何度見てもあきないだろうドラマは幕を降ろした。
短い、短い、闘いだったが輝いていた、完全だった、完璧だった。

その後、9時半まで粘ったが、30センチ級のサバと、フグだけ。
午前10時の船で帰って来た。
苦節1ケ月、長かった焦燥、竿やリールを取られた所まで現実化して来て、手が届かなかった夢、今、大願成就した。
満ち足りた気分で、ついつい笑みがこぼれて来る。
manabuさんも満足し、それを見てアジさんも満足したようだ。
先週、manabuさんにもらった生きた小アジでカンパチを釣ったアジさん、そのお返しが出来たようだ。

本日の釣果
 アジさん
 始めに好ポイントをmanabuさんと、ノビタに譲った為、30センチ級
 カンパチ1匹と、30センチ級サバ5〜6匹全てリリース。

 manabuさん
 30センチ級カンパチ3匹、太刀魚1匹。
 ノビタ
 32センチと36センチのカンパチ、32センチのイナダ(ワカシ?)。
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