ヒラメにまた振られ
海は荒れ模様
午前6時。
白んできた空の下。
坂道の途中で、幾重にも重なる黒々とした波が、目に飛び込んで来た。
「まずい!」
凍りついた闇を、バイクを飛ばして1時間。
手も、足のつまさきも、感覚がない程冷えきっている。
もう引き返せない。
1%の偶然、1%の幸運、1%の可能性に賭けるしか
ない。
砂にタイヤを取られながら、突堤の根元まで来た。
突堤にも、浜辺にも人影なし。 |
旭村の日の出 |
突堤に砕ける波 |
浜辺を攻める
ブルーに変化していく空と海、水平線は紅に染まり。
突堤は絶えず波が炸裂、飛沫が宙に舞う。
白い泡となった潮が、騒然と浜辺に流れて行く。
ヒラメは凪を釣れという。
ここでの戦闘は無理、ターゲットを浜辺に変更。
浜辺からルアーを投げる。
ルアーを投げると、グッと重くなり一瞬ときめくが、
ルアーが波に引かれたのだと、すぐに気ずく。
突堤の南200メートル、北を200メートル、舐めるように探る、全く反応無し。
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ポイントをずらしながらルアーを投げ続けた。
そこだけゆるい海
午前8時、白く泡立つ浅瀬に、別れをつげる。
バイクのある高台に戻ると、南に500メートルほど離
れた砂浜に、3人の人影が見える。
興味が湧き、彼等の方に行ってみた。
近ずいてみると、彼等は波を腰まで被りながらキャス
テイングしている。
彼等の前には青々とした海がある。
そこだけ周囲より深いようだ。
こちらには、ヒラメがいるのか。
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天気は快晴なれど.. |
波打ち際の釣り人 |
しばらく彼等の戦闘ぶりを眺め、ノビタも参戦する
ことにした。
ノビタが竿を持って砂浜に降りると同時に、彼等は
戦場を放棄して高台に引き上げる。
目の前の海がノビタのものになる。
ルアーを投げる。
何度目かのキャステイングで、リールを巻く手にブレーキが掛かった。
「.....!?」
ひょっとして。
リールを巻き竿を立てる。
動かない。
どうした!
根掛かりか?
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南や、北に移動して引いてみる。
ふと、高台を見上げると、先ほどのアングラー3人が、興味深々にこちらを見ている。
まずい!
「ネガカリデスヨー!」
声にならない、声を上げる。
いつまでも遊んでいられない、力を入れる、はずれた。
仕掛けは無事だった。
どっと疲れが出て高台に戻ると、休憩を取っていたアングラー達が、浜辺に引き返して行く。
彼等の後ろ姿には、必ず釣るという気迫がみなぎっていた。
午前9時に旭村の浜辺を後にする。
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