２００３年２月２２日（土）湊寄りの堤防

１匹の日 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　日本人かな？ 曇天の空の下 午後４時半、三流の釣り場。 ポセイドンの怒りが治まらないのだろうか。 連日海は大荒れ。 天は厚い雲に覆われ。 氷雨が、ポツポツと地上に降り注ぎ。 遠方の堤防に、怒髪天を突くような波がドドーン、ドドーン！と砕け。 その波は、飛沫を上げながら堤防を越へる。 地響きは天に轟き、地を這う。 ところが此所は、外海の影響遠く及ばず。 鏡の様な海である。 気温は３〜４度、風が無いのでそれほど寒さは応えない。 日本人がいた ３０メートルほど離れた所に釣り人がいる。 日本人だろう、ぐらいしか分からない。 彼が手を振りながら叫んでいる。 「おーーーぃ！」 Ｏだ。 暗鬱で寒々とした堤防は寂しい。 何やらホッとした。 Ｏも多分そうだったかも。 　　　内湾は静か 約束 彼と昨日、午後４時に此所で会う約束をした。 Ｏとノビタの約束は、いい加減である。 時間もいい加減だけど、お互い勝手に破る。 二人は「鉄の結束」ではなく、「コンニャクの結束」なのである。 ノビタはあまり約束はしない。 約束とは、自由を一つ犠牲にすることである。 ノビタは我がままなので、その犠牲がつらい。 Ｏは、そんな約束破りのノビタに慣らされてしまった。 教育というのは大切なのである。 激しい消耗戦 まだ午後５時だというのに、すでに薄暗い海。 その海に仕掛を投入した途端、浮子も仕掛もテトラに食べられてしまった。 この後も根掛かりが続発し。 用意していた仕掛がみるみる減って行く。 午後５時半までに、戦果無しで電気浮子２個を含み２千円ほどの武器弾薬を消費してしまった。 「もう帰るのケェ〜」 とＯの冷やかしのケェ語が、耳を刺す。 確かに、かなり戦う意志を喪失してしまう。 Ｏが何とか ゴールデンタイムの午後６時過ぎ。 Ｏが沈黙を破った。 「タモ、タモ、タモ〜！」 �"オーーーイ、聞こえるか〜！���錫鮠 ������ぢウヒョーー２５センチ、２５センチ、２５センチ！���錫鮠 ����　　・ 　　・ 騒々しさは約３分続いた。 こちらは根掛かりばかり、天国と地獄だぜ〜。 隣りが静かになったと思ったら、 �"俺は平らの方に行く。根掛かるは、アタリは無いはじゃ、やってられねーー！���錫鮠 ����とＯが去って行った。 天晴れ也 Ｏが去ってすぐ。 何十投目かの仕掛を投入、誘うと。 電気浮子の灯が、弾丸の様に海中に消えた。 竿を立てる。 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　２２センチメバル ガッキーーン！と重厚な反動が、手元に返って来た。 フイッシュオン！。 敵は根に奔しる。 その引きに耐えつつ竿を持ち上げ。 リールを一巻き、二巻き・・。 左に潜水し。 今度はＵターンして右へ奔しる。 頑張れメバル！。 三流の釣り場の名誉にかけて。 徹底的に抵抗しろ。負けるな！。 追撃を浴びつつリールを巻く。 水面でバッシャ、バッシャと跳ね。 竿先が２〜３度往復ビンタを喰らう。 �"問答無用！���錫鮠 ����とゴボウ抜き。 小判のような２２センチのメバルだった。 これが始めで最後の手に汗握るドラマであった。 この後、全くアタリ無し。 午後７時半、納竿。 Ｏも結局、ノビタと同サイズのメバル１匹に終る。 本日、ドンコの姿見ず、どうしたんだろう？。 ＜蛇足＞ ドンコは、”生まれて来てどうも済みません”の、食欲が遠のくグロテスクな姿なので、大概の人はリリースする。 でも三流の釣り場では、ドンコも貴重な魚だ。 貧民は、どんな食物でも粗末にしない。 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ドンコの塩焼き ノビタはドンコを大切に料理するようカミさんを教育した。 ドンコや、アイナメや、タナゴの様な身の柔らかい魚は、煮物にしては絶対いけない、これは鉄則である。 ドンコは白身なので、フライにすると美味である。 また、背開きにして１日中天日に干し、塩焼きにして食べると絶品である。 食趣は”独断と偏見の世界”なので、人によって意見はあろうが、ノビタは冬のドンコは絶対美味しいと宣言したい。 ドンコを家に持ち込む事が禁止されている方、釣り場でノビタを見かけたら是非ノビタに只でゆずって下さい。 骨まで愛してさし上げます。 三流の釣り場に相応しい魚 三流の釣り場は湾奥にある。 家族連れがひなたぼっこをかねて釣りに来る様な場所である。 こんな場所に、メバルや、ソイや、クロダイ、アイナメはふさわしくない、釣れる事が非現実的である。 此所では、タナゴや、ドンコや、ギンポクラスがふさわしい。 ふさわしい所でふさわしい魚を釣る感動よりも、ふさわしくない所でふさわしくない魚を釣る感動が優るに決まっている。 銀座の高級クラブで、藤原紀香や、松たか子のようなホステスが、真紅や純白のドレスを着て現われ、 「いらっしゃいませェ〜♪」 とカナリヤのような黄色い声を上げ、隣りに座る。 これはリアリテイであり、感動に値しない。 粉雪が舞う北国の波止場。 継ぎはぎだらけの暖簾と赤ちょうちんが風に揺れる一軒の飲み屋がある。 ガタビシと戸を開けて店に入ると、七輪でホッケを焼きながら松嶋菜々子が、 「熱燗にしますかァ〜♪」 とヒバリのさえずる様な声を投げて来る。 こんな場面、非現実的なので感動に値する。 赤ちょうちんに松嶋菜々子はいないけど。 三流の釣り場には、ふさわしくない３０センチオーバーのメバルがいるはず。 いつか。 Ｔｈｅ　Ｅｎｄ

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