2003年11月15日(土)久慈川河口
   午前3時30分〜午前6時00分         

     山高ければ谷深し


河は呼んでいる                L'eau Vive
1957年のフランス映画「L'eau Vive」(河は呼んでいる)。
この映画を知らない。
でも題名が、これから川に行く釣り師の気持ち、ホップ、ステップ、ランラン♪を表しているような気がして・・・。

この映画の紹介文には、こう書いてあった。
「この映画は、 明るい農村風景が美しい南仏プロヴァンス地方を流れるデュランス河を舞台に、 ひとりの少女の、心の成長を描いた佳作です。」 (写真をクリックすると、主題曲のメロディー♪が)
・・・・・・。
「ヒロインのオルタンスを演じたパスカル・オードレは、 まさしく烏の濡れ羽色といってよい黒髪と、 澄んだ美しさがまことに印象的な女優でした」(映画評より)

  
パスカル・オードレ(「河は呼んでいる」のシーンより)







 
その娘
1時期スポットライトを浴びた彼女だが、いつか映画への出演依頼が来なくなって。
霜降る大地を、裸足で歩くような人生が。
「電話の前に1日中座って待っている母(パスカル・オードレ)の姿を見て、映画俳優にだけはなりたくないと思った」と、その娘は語っている。

映画の題名のように、”河は呼んでいる”と夜明前の久慈川へ飛んで行ったけど。
河は、お呼びでなかった。
パスカル・オードレの何万分の一の無念かもしれないが、無念な結果に終る。


夜明け前                        まだ暗い海
昨日の情報では、深夜から早朝にかけ30匹程釣れたそう。
ならば”つ抜け”は間違いないと思った。
(”つ抜け”とは1桁を越えること。
1つ、2つ・・・・9つ、の次は十(じゅう)で、”つ”が抜ける)

午前3時20分、日立フイッシングセンターサウス店の前にある自販機で、温かい缶コーヒーを買っていると、E−子さんが店のシャッターを開けに来た。
まだドラキュラ男爵が徘徊するような、こんな時刻にだ。
彼女は週に1日休みを取るだけ、他は毎朝この繰り返しである。
思わず「E−子さん頑張れ!」と応援したくなった。

文明の副作用で、精神も、肉体も脆弱になった現代人、頑張りが足りないのでは?。
釣り師にとって、夜明け前は時間に千金の重みがある。
E−子さんに、朝の挨拶もそこそこに、大慌てで現場に向かった。

嫌なムード
冷蔵庫を開けたような冷風が、北東から吹いていた。
ヘッドランプを付けた釣り人が、一人、2人・・・と帰って来る。
普通、朝拙めの好機を逃す釣り人はいない。
帰った方が良いのかと、期待のシャボン玉が、急激にしぼんで行った。

堤防への階段を上ると、付近に人影無し。
2週間前とは、えらい様変わりだ。
海の方に歩いて行くと、倉庫の手前から人の垣根と竿林が続く。
魚はいるのかも、でも場所が。
甘いアメと苦い薬を、一度に口に含んだ気分に。
でも、すぐ充分な空きスペースが見つかり、ホッとする。

 
波もほどほどなのに
始めの一匹
釣りを開始したのは、午前3時半。
開始して5分ほど経過、竿に付けた鈴が、チロチロチロ♪と鳴った。
大きく合わせた、空振り。
それから5分ほど経過、今度は、リリリリリ、リリリリリ、リリリリリ♪と、勢いよく鳴った。

ちょっと間を取り、竿を大きく後ろに引く。
魚の憤怒が、ゴトゴトゴトと手元に伝わって来る。

始めの一匹は、16センチほどの小振りだった。
これは偶然か、必然か。
「神がサイコロをふるうことはない。すなわち世の中の全ては必然の結果であり、偶然などというものは存在しない」(アメリカの経済学者の話し)
石持はいる。ひたすら待つ。その時を!。

地震
午前3時45分頃、いきなりドーーンと、地鳴りのような音がしたかと思ったら、今度はガタガタガタと、倉庫の方から震動が聞こえて来た。
地震?、でも揺れを感じない。
この直後、携帯電話でカミさんから”津波の心配はない”の連絡があり、地震だったことを知る。
このショックで、釣れるといいのにと思ったが。

河は応えず
午前4時以降、竿先に付けた鈴が鳴ったのは2回だけ、いずれも針掛かりしなかった。
頭上に瞬いていた星、輝いていた月が、いつか雲に隠れ。
夜空が不機嫌な様相となると、寒気が一層身にしみ、鼻水がこぼれた。

周囲に立つ影法師も、コンクリートのように固まって動かない。
陰陰滅滅と時は流れて行く。
しぐれる山間を、托鉢姿で孤独な影を引き摺りなら歩いて行く山頭火の心情も、さもあらん。
空が白み、しだいに明るくなって来た。

午前6時、百年河清と納竿。
「山高ければ谷深し」
もう釣りはやめるか。
                          
寒さに耐えた報酬
本日釣果
    石持 16センチ  1匹

The End


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