2003年12月12日(金)三流の釣り場
   午後7時〜午後9時半        

     今日もまた・・・・


別世界で                     テトラ上の月光
墓場のような静けさだ。
ザザーーッ、ザザーーッと、テトラを洗う波の音だけである。
気合が必要な冬の夜釣り。
でも此所は居心地が良い。

体まで黒く染まるような闇、その闇に浮かぶ黄色い電気浮子を、ジッと眺めていると。
体内に澱んだ娑婆の鬱が、大気にゆっくりと放出されて行くような。
この一時に息を吹き返し、この一時に我れを取り戻す。

夜空を覆う曇に何条もの亀裂が走り、その隙間から月光が漏れ、星が輝き。
その光りが、人気の無い堤防を薄く照らし出す。
風が無いせいか、寒さはさほどでもなかった。

2人の釣り侍
凛とした寒空の下、共に戦い、共に美しく散ろうと、今夜もドラえもんさんが押っ取り刀で馳せ参じてくれた。
砂浜に落とした一粒の米を探すようなメバル釣り、一人よりは2人の方が良いに決まっている。
それに釣れない時は、名人も・・・・だからと、あきらめもつく。

ドラえもんさんは、久慈川産の生きている藻海老を、バケツに入れて持って来た。
使ってはどうかと薦められたが、ドラえもんさんが獲物を仕留めるまで待つことに。(これが裏目に出たのかな〜)

貧乏暇なし
ドラえもんさんが、
「正月用の海老を釣るんです」
とテトラに向かって走って行った。
しばらくすると、
「駄目でした〜」
と肩を落として戻って来た。

「今度はメバルを狙います」
と反対側のテトラへ飛んで行く。
「ダメデシタ〜」
と戻って来て、またエビを狙います、と堤防の縁を探っている。
あっちへ飛び、こっちへ飛び、やったら忙しい。
まるで”貧乏暇なし”の釣り版を演じているようだった。

とうとうドラえもんさんに・・・
午後8時半過ぎか。
隣りのドラえもんさんが、
「オッ!」
とつまった感嘆音を発した。

振り向くと、インターラインロッドが宙に弧を描いている。
勝利の女神はノビタを外し、隣りのドラえもんさんに微笑んだ。
暗いので顔の表情は見えないが、ドラえもんさんの喜びが大気を通して伝わって来るようだ。

堤防の上にハネたのは、20センチほどのメバルだった。
この後、海は再び沈黙ス。
「あれが始めで最後でしたね〜」
と、ノビタは何度も溜め息を漏らすばかり。

納竿
この後1時間、2〜3度、微かな手応えを感じたが針掛かりせず。
午後9時半、納竿。
今夜は、ノビタだけ美しく散った分けで・・・トホホホ。
腕の差か。餌のせいか。ポイントか。運か。日頃の行いか。
ドラえもんさんに、完敗、乾杯、カンパ〜イ。

「1匹と10匹のあいだにはさほどの差はないのさ。魚釣りは1匹つれたらそれでいいんだ。
1匹とれるのと1匹もとれないとにひどい差があるんだ。ここだよ」
(開高 健「私の釣り魚大全」)

  ”肩凝りを みやげに今日も 釣果なく”(読み人知らず)

The End
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