２００５年１０月３日（月）　日立港周辺 　　　　　　　　　　午後６時半〜午後９時

何とか２匹 誰もいない海　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　空っぽの堤防を 空は雲で覆われ、星も月もない。 人影なく、鳥影なく、虫鳴かず。 闇に溶けた空っぽの堤防の上を、北風がヒューヒュー疾走し。 寄せる波が、ドドーン、ザザザーーッ、ドドーン、ザザザーーッ・・・と、テトラで砕けている。 先が闇に消えた堤防を、風に逆らいながら釣り馬鹿が１匹、 �"今夜こそ、今夜こそ���錫鮠 ����とつぶやきながら、釣れると信じて疑わず。 まだ見ぬ恋人を思う旅人のように、胸を熱く熱く燃やして先を急いでいた。 　　　　怒涛逆巻く海で 釣れない 教えてもらった所は、濃い闇が溜まっていた。 釣りを開始したのは午後６時半。 足元で波が、 �"ゴー・ホーム。ゴー・ホーム・・・・・・���錫鮠 ����と叫んでいる。 顔に降りそそぐ飛沫が塩辛い。 竿が風に吹かれてビリビリビリ震え、竿を持つ手が次第に垂れ下がる。 １０分、２０分、３０分、・・・・・・・１時間経過。 電気浮子の赤い灯りが、波に揉まれて見え隠れしているが、魚の反応は無い。 先日もこうだった。 海中も空っぽなのだろうか。 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　不思議な青い光り 不思議な光り 飛沫を上げて吠える海は。 海坊主や、デバカメや、恐竜が出てきても可笑しくないロケーションだ。 と不思議な光りがボーーッと海面に表れた。 それを見た時は、ノミの心臓がピョーンと跳ね上がったヨ。 その朦朧とした青い光りの玉は、トマトほどの大きさ。 潮の流れに身をまかせるようにして漂い。 １個だった玉が。 ２個、３個、４個・・・・と増えていき、いつか海一面が青い光りの玉で。 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ひとだま まるで、三途の川を人魂が漂っているような光景だった。 　ぜんなんし　　にゃくうこくどしゅじょうおういぶつしんとくどしゃかんぜおんぼさ　　　　そくげんぶっしん　にいせっぽう �"善男子。若有国土衆生応似仏身得度者観世音菩薩・・・。即現仏身。而為説法。 おういびゃくしぶつしん 応似辟支仏身・・・・・���錫鮠 ����胡蝶之夢のような青い光りの玉は、いつか暗い闇の中に消えて行った。 納竿 午後８時過ぎ。 始めの場所に見切りをつけ、新たな場所へ移動した。 開始してから１０分ほど経過。 待望のアタリ。 始めの１匹は、狙いがそれて海タナゴ。 その直後に、やっとメバルがでも期待外れの小物。 それで全てだった。 午後９時、納竿。 �"物そのものを味わう。 　・・・・貧しい人はその貧しさに徹する。 　愚かな者は、その愚かさに徹する。 　与えられたというよりも、もって生まれた性情をつくす。 　そこに人生、いや人生の味があるのではあるまいか���錫鮠 ����　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（山頭火） ＜蛇足＞ ”落胆”はガキのころから犬猿の仲だが、どうしても縁が切れない。 そしてまた夢破れ空母も戦艦もことごとく撃沈されるような落胆の日々。 辛うじて小サバが１匹とか、イワシが数匹とか、サッパが数匹の戦果である。 とても日誌に書いて報告する気にはなれない。 最近逝った画家の座右の銘は「犬馬ハ難ク魑魅ハ易シ」。 平凡な犬や馬を鑑賞に耐えられるように描くのは難しいが、妖怪の絵は苦労せずとも人を驚かせる。 カンパチやヒラマサ、ＧＴなど極上のネタを日誌にするのは易しいが、イワシやタナゴ、サッパが数匹の日誌は難しい、とも読める。 またしばらく水彩画の勉強でもするか。 本日釣果 　　海タナゴ　　２２ｃｍ　　１匹 　　メバル　　　２０cm　　　１匹 　　　　　　　　　　　　　　　　　　本日釣果 Ｔｈｅ　ＥＮＤ

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