２００６年１月１５日（日）　涸沼川 　　　　　　　　　　　　　　　午後１時〜午後７時半

初釣り は・・・　　　　　　　　　　 冬眠中 日本は何十年ぶりかの大寒波らしい。 早朝、外に出ると、たちまち顔の表面が凍りつき、笑うとパラパラと顔の皮が剥げ落ちるような寒さが続いていた。 この寒さの塀を乗り越えて釣りに行く元気が湧いてこず、”寝ていて転ぶ憂いなし”と。 昨年暮れからズーッとノビタは炬燵の中でネコのように丸くなっていた。 ５日前の昼も。 炬燵から首だけだし、目ん玉をショボ、ショボさせながらテレビのニュースを見ていた。 ”日本海側の豪雪被害拡大。豪雪による死者は７０人超。秋山郷孤立・・・”のニュース。 ースーパーマンになって助けに行くか・・・ー ”イスラエルのシャロン首相一命とり留めるも、意識回復せず・・・”のニュース。 ー中東情勢は、ますます混沌としてきたな〜ー ”北朝鮮の金総書記、中国を隠密視察・・・・”のニュース。 ー堂々と訪問せんかい！。無理か〜、命を狙う者が多いだろうからな〜ー ”メッカ巡礼で３５０人圧死・・・・”のニュース。 ーこれも神の思し召しか・・・・ー 　　　　　・ 　　　　　・ とブツブツ寝言を言っていると。 ”野菜や石油、高騰！”のニュース。 �"ウッ！��ぢとうめきながら、炬燵から半身を乗り出す。 我が家の金正日総書記は、一言��ぢいやね〜��ぢとつぶやいただけ。 森羅万象、いつもしわよせはより弱い者の所に行く。 我が家では、ノビタの小遣いはこのような物価高のための予備費であり、調整代になっている。 すなわち、ノビタの小遣いは実態がない架空の金、絵に描いた餅でしかない。 宮沢賢治の��ぢ雨ニモ負ケズ��ぢを念仏のように唱える日々は、永遠だ。 �"雨ニモマケズ 　風ニモマケズ 　カミサンニモマケズ 　欲ハナク　決シテ怒ラズ 　イツモシズカニ笑ッテイル 　酒ハ一日ニ３５０ml缶１本ノ発泡酒ダケトシ 　アラユルコトヲ自分ヲカンジョウニイレズ 　皆ニデクノボウトヨバレ 誉メラレモセズ　苦ニモサレズ 　ソウイウモノニ　ワタシハナリタイ（なりたくない）���錫鮠 ����ー喜びも悲しみも幾年つき・・・、そしてジ・エンド。ー 突然、��ぢリーン、リーン、リーン��ぢと電話が鳴った。 受話器を耳にあてると、ドラえもんさんの声。 �"今週の土曜日、小名浜に釣りに行きませんか？���錫鮠 ����と流暢な日本語で誘われた。 　　　　黒船来航 その声を聞いたとたん、泰平の眠りが覚めた。 ー即、了解ー それから、頭の中は１８５３年７月８日（嘉永６年６月３日）の黒船来航の騒ぎとなる。 数日は、期待で夜の眠れないほど興奮ぎみ。 「泰平のねむりをさます上喜撰（蒸気船）　たった四はいで　夜も眠れず」 ところが、当日の雨の予報は好転せず。 その前日、ドラえもんさんから中止の連絡が入った。 ー残念！ー 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　鈴鳴らず 静かな川 １月１５日（日）。 昨夜の雨が嘘のような雲一つない青空が広がる。 気温も上昇しポカポカと春の陽気だ。 小名浜が駄目なら涸沼川があるさと、涸沼川へセイゴ釣りに出撃した。 涸沼川に来てみると。 風も無く絶好の釣り日和なのに、２００メートルほど先に、風景に同化したまま動かない釣り人が一人いるだけ。 釣りを開始したのは午後１時。 ３０分、１時間・・・竿に付けた鈴は��ぢ・・・・・・��ぢ黙して語らず。 野生のガラクタ 午後２時半、そろそろ帰ろうかと思っていると。 その男は「お〜い、どうしたい」と旧知の友人のようにして現われた。 アタリが無いと応えると。 「そうかい」と言いながらノビタの目の前で、いきなりドボドボドボと川に向かって馬のように長い放尿をはじめ、ついでに「ブォーーッ」とほら貝のような放屁をした。 天衣無縫、豪放磊落、天真爛漫、豪傑と馬鹿は紙一重。 ノビタの物差しでは計れない人物だった。 その男、年は６５歳くらいか。 大昔、エノケンという喜劇役者がいたが、その風貌によく似ている。 　　　　　潮が満ちてきて 心理学の本に「世の中に大人など居ない。居るのは大人のふりをした子供が居るだけだ」という記述があったが、そのサンプルを見るようだった。 ”野生のエルザ”ならぬ”野生のガラクタ”のような男は、放尿が終わると川に手を突っ込み「釣れるぞ」と自信たっぷりにどなり。 「これから那珂湊まで餌を買いに行ってくる。チャリンコだから１時間。待ってろヤ」 と言いながら去って行った。 その自信 ”野生のガラクタ”の��ぢ釣れるぞ��ぢの予言に、よし夕刻まで粘ってみようと決意したのだが。 時は何事もなくどんどん過ぎて行く。 鈴が２度ほど弱々しく鳴ったが、すぐ消えた。 午後４時、”野生のガラクタ”が戻って来た。 「お〜い、どうしたい」 アタリも無いと応えると。 �"そうかい���錫鮠 ����とまるで意に介さない。 その自信ありげな態度を見ると、ノビタまでこれまで浪費した３時間が、わずか３分にしか思えなくなった。 彼は５０メートルほど先で準備を始めた。 �"ここでオレは５０オーバーを２０本以上は上げた。みんなと仕掛が違う。オレのハリスには電気が付いている���錫鮠 ����電気でスズキを痺れさせるのか、と聞くと。 馬鹿な奴だと思ったのだろうか、笑って相手にしてもらえなかった。 　　　　　 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　もうすぐ時合 その時が来た 闇が深くなり、満々と水を湛えた川の流れも緩くなった、午後６時半。 ”野生のガラクタ”が、 �"時合だ、注意シロ！。来るゾッ。���錫鮠 ����とどなった。 半信半疑で竿先を見つめていると。 �"リリリーン、リリリーン、リリリリリーー���錫鮠 ����天地を震わす鈴の音が。 反射的に竿を掴み、後ろに仰け反った。 ーガーン！、空振りー 錘の重さだけが・・・。 �"どうしてェー���錫鮠 ����と”野生のガラクタ”が側に来たので応えると。 �"う〜ん。今日は駄目かもしんねェナ���錫鮠 ������ぢエッ！？���錫鮠 ����彼は常人とは違う判断をした。 仕掛を見せろや、というので見せると。 �"人はさまざまだな・・・���錫鮠 ����と判事物みたいな答えが返ってきて、おわり。 ー 一体、彼は何を言いたかったのだろう？ー 　　　　　・・・・？ 幽霊ゴカイ �"見ろ、見ろ���錫鮠 ����彼の指差す川辺を見ると、何か白い紐のような物がクネクネと泳いでいる。 ライトを当てると、青イソメのような虫が岸沿いに数十匹泳いでいた。 �"幽霊ゴカイだ。中身はない���錫鮠 ����彼が手で掬って、コンクリートの上に置いたので触ってみたが、確かに中身のない抜け殻だった。 でも何で生きているように動くのだろう？。 これは幻惑か？。 すっかりコンクリートで護岸された涸沼川のゴカイは、絶滅したと思っていたが。 そのゴカイの亡霊が、うらめしげに浮遊しているようだった。 納竿 ”野生のガラクタ”は午後７時になると、 �"無駄なことは、やるもんじゃネェ���錫鮠 ����とあの��ぢ釣れるゾ��ぢなんて、まるで忘れたかのように威勢よく帰って行った。。 �"釣れるぞ��ぢを信じたノビタが馬鹿だったらしい。 でも何か憎めない”野生のガラクタ”。 また騙されるかもしれないけど、また会って、ハリスに付けた電気仕掛とやらを見せてもらおうと思った。 午後７時半、納竿。 �"かへりはひとりの月がある　いっぽんみち���錫鮠 ����　　　　　　　　　　　　　　　　（山頭火） 今年の初釣りはボーズでスタート、月並みだけど終わりよければ全て良しさ。 というか、これしか言いようがないじゃないですか。 本日釣果 　ボーズ Ｔｈｅ　ＥＮＤ

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