今日も・・・・ 夕陽映える 港黄昏る 日が丘の上まで傾き、陽射しが地を這うように低く港を照らしている。 微かな風の気配が、テトラから堤防沿いに動いていた。 ほとんど無風に近く、寒さを感じない。 堤防の先に鵜が1羽、ノビタが近ずくのを気にしながら羽根を休めていた。 先客がいた 今日も 夕陽映える海面が美しい。 いつものように磯竿2号を2本出し、竿の先に鈴を付け、足元にサビキ仕掛けを落とした。 竿を2本並べた直後に、 「リリーン。リリーン。リリーン・・・・・」 と鈴が鳴り響いた。 「いらっしゃいませ。いらっしゃいませ。いらっしゃいませ・・・・」 と今日も鈴の音が、タナゴちゃんの歓迎の挨拶のように聞こえてくる。 案の定、初めの1匹は18センチほどのタナゴちゃんだった。 『我ときて 遊べや 親の無いタナゴ』 タナゴちゃんは、誰もいない、魚もいない、冬の海の唯一のお友達である。 石岡の人に会う サビキ仕掛けに沖アミを付けていた。 と・・・・。 目の前に若い人が立っていた。 「あの〜・・・。ひょっとするとノビタさんでは・・・・」 ーアラララララ・・・・。 いささか動揺。ノビタという実像は知られない方が、文が書きやすいという気持ちがあるので・・・。 若い人はTsさんと言う方で、石岡の人だと自己紹介された。 昨年、ノビタのHPを知り、もともと釣り好きだったそうだが、さらに釣りにハマったらしい。 ノビタの釣りエッセイ「明日に賭ける釣り」が近く出版されることも知っていて、本を購入したら座右の書にしたい、本にノビタのサインを貰いたいとまで言われ、感謝感激でした。 Tsさんも、帝国ホテルで開催予定の出版記念パーテーに、是非招待したい人だと思った。 Tsさんは、今朝、午前6時半に大洗沖堤にカレイを狙いに渡り玉砕、くやしくて阿字ケ浦方面に釣りに来て小さいタナゴを3匹釣っただけらしい。 午後5時半には帰って行った。 海の黒い宝石 Tsさんが帰った直後、1本の竿の餌を交換しようと持ち上げると、異様に重い。 ー・・・・・・? これはヒトデかと思ったのだが、堤防の上でヘッドランプに照らされたのは、なんとナマコ!。 3日ほど前、ナマコが高騰し今では海の黒い宝石と言われ、密漁が問題になっているというNHKテレビのトピックスを見た。 その中で、ナマコの値段がキロ15万円であると、確かに話していた。 今やナマコは、チョウザメの卵であるキャビアや、中国料理のツバメの巣や、フランス料理のファグラなどに匹敵する最高級食材で、とても庶民の口に入るしろ物ではないのである。 この間、Mr.Xから強奪したナマコは100グラムはあった、金に換算すると1万5千円である。 海の黒い宝石 ードキリ! Mr.Xは、魚の価値を金に換算する男である。 ーMr.Xがこの事実に気がついたら・・・・。 とても1万5千円なんて、ノビタのふところ事情では支払えないのである。 だからと言って返せと言われても、とっくの昔に胃から腸を経て、体外に放出されてしまっているのである。 今は、Mr.Xがこの事実に、永遠に気ずかずにいてもらうことを、ただ祈るだけ。 でも今日は、自力本願で1万5千円を手にしたわけで、もう蝶のように、羽のように舞い上がってしまいました、ハイ。 これも既に、ノビタの胃袋の中である。 納竿 周囲が薄暮に包まれた頃から鈴は鳴き止んでしまった。 まてどもまてども鈴は鳴らない。 闇に白くボーッと伸びる堤防の上に人の気配も無い。 午後6時、納竿。 本日釣果 タナゴ 15〜20センチ 13匹 ナマコ 20センチ 1個 本日の釣果 The END |
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