石持はまだ遠い こんな海に? 朝8時。 青空に、真っ白い綿雲が浮かんでいる。 「もしも明日が 晴れならば・・・♪」 と待ち望んでいた快晴だ。 ここ5日、氷雨まじりの曇天と強風で、釣りに行ったら凍死してしまいそうな日が続いていた。 心は海に飛んだ。 「行かなくちゃ 君に逢いに行かなくちゃ♪」 ー君とは、誰を指す? 石持君あり、メバルちゃんあり、チアユさんあり、トリ貝君あり、この季節になると逢いたい君が多くなり特定することが難しいのである。 悩ましい。 水温はまだ13度、でも予報では南風が吹き気温が上昇するらしい。 悩んだ末に、英断を持って君は石持君に決定した。 ーところで開戦時刻は? 潮が朝の5時から昼にかけて、一気に1メートル20センチほど下る。 午前中は潮の下がる勢いが速くて釣りにならない、ならば潮が下げから上げに転じる午後2時過ぎ開戦とした。 午後2時まで、まだ大分間があるけど何も手がつかない。 昔、昔、子供のころ鎮守の森から祭りの太鼓や、笛の音が、ドンドンドン、ピーヒョロロ、ピーヒョロロと聞こえてくると、教室の中の勉強なんて上の空だった。 あの時と同じだ、地上に燦々と降り注ぐ陽射を見ていると何もかもが上の空である。 釣り人がいた! 午後2時過ぎ。久慈川河口。 河口は盥の中を掻き回す騒ぎだった。 千早振る波は、川の上流に向かって幾重にも突進していく。 予報では暖かい南風だったのに、見事に予報がはずれ冷たい東風がヒューヒューである。 閑散とした堤防に、ポツーン!と一人先客が竿を出し、石の塊のように立っていた。 条件は最悪だ。 底荒れも激しいだろう。 冷静に考えたら、バカバカしくてやってられない状況である。 でもこのまま帰ったら、朝からの焦燥がおさまらない。 もしかしたらに賭けてみようと、竿を1本だけ出した。 魚信 石持のアタリ? 午後2時半、釣りを開始。 ・・・20分経過。 竿先が波に引っ張られ、風に押し倒され、不連続なお辞儀を繰り返していた。 と、突然。 「リリーン、リリーン」 と2回、鋭く鈴の音が鳴り響いた。 ギョ!として竿先を見ると、ピシッ、ピシッと激しく頭を振っている。 竿つかみ、勢いよく後ろに振り上げた。空振り! ー今のアタリは石持のアタリでは? と、一気に闘志に点火、竿をもう1本出した。 釣れたのは・・・ それっきりだった。 また竿は、波にひかれる度にお辞儀を繰り返すだけ。 午後3時半。 「リリリ・・・・・・」 と鈴が鳴った。 竿がブルブル振るえながら頭を上下に振っている。 竿を掴み、後ろに大きくのけぞった。 ー手応えアリ! 結構重い。ガタガタと敵の動きが道糸を走り手元へ。 これは石持だ、と思った。 ところが、堤防の壁を乗り越えて足元に転がっつたのは、ナント!手の平カレイ。 胴突き3本針仕掛けの真ん中の針に掛かっていた。 アタリが激しかったわけである。 ー夢破れてカレイあり! 納竿 この後、30分ほど粘ったけど何も起こらず。 午後4時、納竿。 何やらドッと疲れて現場を後にした。 「こころむなしくあらなみの よせてはかえし」 (山頭火) 本日の釣果 マコガレイ 20センチ 1匹 本日の釣果(手の平カレイ) The END |