今日も1匹だけ 期待の黄昏 負け元覚悟で 聞くこえてくるのは、夢もチボーもない噂や、風のたより。 そのたびに空を眺めてため息ばかり。 だれの言葉か忘れたけれど、「ため息は命を削るカンナの音」と焦燥し。 淡い期待が、童謡『しゃぼん玉』の第2節のように、 「しゃぼん玉 消えた 飛ばずに消えた うまれてすぐに こわれて消えた♪」 浮かんでは消え、浮かんでは消え。 早や5日、釣りに行っていない。 このままでは植木のように、根腐れしそうだぜ。 ーさてどうしよう? おまめたんからの投稿では、旭村、滝浜海岸の石持は好調らしいけど・・・。 旭村、昔はなんでもなかった距離だけど、今はやけに遠くに感じる。 ハイリスク・ハイリターンに挑戦するか、否か、ハムレットのように深刻に悩んだけど。 結局、川の流れすなわち易きに流れて、久慈川河口の石持に決めた。 噂では、一晩徹夜しても20〜24センチが2匹釣れるかどうからしい。 どうやら今日は、美空ひばりの『柔』の覚悟がいるようだ。 「か〜つと思うな 思えば負けよ〜 負〜けてもともと ・・・♪」 フグはいるけど・・・ 現場に着いたのは、午後6時40分。 空はピンク色に染まり、今まさに日が沈むところだった。 中天からやや西側に三日月が、その下に宵の明星が白く輝いていた。 冷たい風が北東からパタパタと吹いていた。 海は凪ていて河口で砕ける白波は無い、石持釣りには良い状況ではなさそうだ。 それでも、長さ400メートルほどの堤防に石持釣りが40人ほど、結構賑わっていた。 中央からやや沖側に空きがあり、そこで竿を出すことにした。 竿を2本準備し周囲の様子を伺っていたが、あの人も、この人も、ただ杭のように立っているだけ。 ー石持は旭村の方に逃げて行ったのかい? 三日月が白く寂しい 誰かが釣ってからでも遅くはないと待つ、5分、10分、15分・・・周囲で魚が釣れた気配はない。 他人などあてに出来ないと、午後7時釣り開始。 開始して3分、竿先がヒクヒクヒクと踊っている。 ー・・・・・・? 竿を掴み、後ろに仰け反った。 −哀し! まるでライトな手応え。 はじめの一匹は不倶戴天の敵、17〜8センチのフグ野郎だった。 とうとう それから待つこと30分。 突然、何の前触れもなく。 錘負荷30号、長さ4.5メートルの竿先が、バシッ、バシッ!と、張り倒され、叩き伏せられ、蹴っ飛ばされた。 竿を掴み、後ろに仰け反った。 ドドーン!と今度は重厚な手応え。 続けて、ドタッ、ドタッ、ドタッと敵の憤怒が道糸を走る。 ワッセ、ワッセ、ワッセと心臓をパタパタさせながらリールを巻いて来て。 ーどうだまいったか! と高さ2メートルの堤防の壁越しに引き上げたのは、期待はずれの23センチ。 でも待望の1匹である。 納竿 1匹はまだ奇跡の領域、2匹なら必然の領域と、さらにもう1匹を狙ったのだが・・・。 10分、20分、30分、40分・・・。 餌はフグに取られ、ハリスまで切られ、いくら待てども本命のアタリは無し。 午後8時半。 ギブ・アップ!ではない、君子ムダな抵抗はセズと納竿。 8時ころ、右隣りにいた若者達の一人が、胴付2本針の仕掛けで30cmほどのセイゴを釣ったのを目撃しただけ。 周囲で石持を釣った人はいなかった。 一人去り、二人去り・・・・・・。 ノビタも現場を後にした。 白い三日月が夜空に煌々と照っていた。 「月澄むほどに われとわが影踏みしめる」 (山頭火) 本日釣果 石持 23センチ 1匹 本日の釣果 The END |
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