2007年7月20日(金) 日立沖のスルメイカ
           午後6時15分〜午後11時半
ノビタの釣り天国



    スルメイカ狂乱の沖で
   
                          
              ベタ凪だった
ベタ凪の黄昏
海上にひっそりと浮かぶ龍翔丸、その船上で十数名の釣り侍がその時を待っていた。
空は薄雲に覆われ。
鏡のように平らな海は、その先が靄に消えて見えない。
風はゆるやかに南から北へ。
大海は沈沈と暮れていく。
すぐ目の前で魚がバッシャ!と飛沫を上げた。
宵の明星は見えないが、まるで頼山陽の漢詩の感である。

                      くも  やま    ご  えつ
 「雲耶山耶呉耶越   雲か山か 呉か越か
                     すいてんほうふつ    せいいっぱつ
 水天髣髴青一髪    水天髣髴    青一髪
                      ばんり ふね  はく   あまくさ  なだ
 万里泊舟天草洋    万里 舟を泊す 天草の洋
                     けむり ほうそう  よこ       ひようや ぼっ
 煙横蓬窓日漸没    煙は蓬窓に横たわり 日漸く没す
                     べっけん   たいぎょ  はかん  おど
 瞥見大魚波間跳    瞥見す 大魚の波間に跳るを
                     たいはく ふね  あ        めい           つき  に
 太白当船明似月    太白 船に当たって 明(宵の明星) 月に似たり」

                       (『漢詩鑑賞入門』高木正一 他著 創元社より)

最後の乗客
ミタ船長の合図で、一斉に釣りを開始したのは午後6時。
その時、ノビタはまだ釣りの準備中だった。

ーと言うのは・・・。
ノビタが日立港第5埠頭の龍翔丸船着場に着いたのは、午後5時。
驚きましたね。
ミタ船長がノビタを見て、大きく手を振り。
先客全員の目ん玉が、ノビタに集中砲火を浴びせ。
東海村の佐藤さんが船から飛び降り、体重100キロを超す巨体をものともせず、ドタドタと駆けて来てノビタの荷物を奪い。
「こっち、こっち」
と先導してくれる。
まるでスター並み、と思ったけど・・・。
要は、最後の乗客であるノビタを、全員が急き立て。
ノビタが船に腰を下ろす間もなく、まってましたとばかりに龍翔丸はエンジンを全開、第5埠頭を離岸したのである。
と、まるで動き始めた列車に飛び乗ったような慌しさ。
釣りの準備などしている間は無かったのである。

東海村の若い人
疾走する龍翔丸のキャビンでくつろいでいると。
若い人が来てノビタですかと問われ、船が疾走している間、彼と話していた。
キャビン室内は、エンジンの轟音で言葉が粉砕されるので、会話は通常の2倍か、3倍の努力を要したが・・・。

若い人はノビタと同じ東海村の人で、沖釣り専門と言っていた。
今日は会社を休んでの釣行らしい。
子供さんは2人いるようだが、休日は奥さんと子供を放ったらかして釣りに夢中なそうな。
ーそれはまずいのでは?
と言うと、「ノビタさんの後を追っているのです」と言われてしまった。

かもさんも、休日はほとんど釣り狂い。
室生朝子は言う。
「私にとって釣りは大きなストレス解消の役目をしていたから、
 忙しければ忙しいだけよけいに釣りにひたりたいのです」
”かもさん”も、彼も仕事が忙しいのである。

糸が巻けない、ああ!
皆さんより遅れること15分。
ドボーン!と60号の錘を付けたプラ角仕掛けを海に投入。
ところが、道糸の出がなんとなくスムーズでない。
これが、この後に発生するリールの糸巻きトラブルの原因だったが。
翌日、日立フイッシングセンターで調査してもらうまでは分からなかった。

トラブルは、PEラインを自動で巻き取ろうとした時に起こった。
100メートル出た糸を巻き取ろうとスイッチをオンすると、糸が30メートルほど巻かれた所で巻き取りがストップ。
リールを見ると、糸を巻く芯の左側に糸が集中して巻かれ、そこが盛り上がりリールの天井につかえて回転できなくなっていたのである。
ーガーン!
青天の霹靂、一気に士気阻喪、ああ!。
でもなんとか立ち直り、重症を負ったリールを手技でカバーし、とうとう最後まで戦い抜いた。

イカ爆発
午後8時半までは、ポツリ、ポツリだったけど。
それ以降、船上はイカの嵐。
仕掛けは、龍翔丸オリジナル、イカスッテ、イカ角、プラ角・・・、イカはまるで仕掛けの見分けをせず狂ったように食ってきたヨ。
釣れる水深は、初め100〜70メートルだったのが、60〜50メートルに、最後は30〜15メートルと上昇し。
暴風のようなイカの襲来に、右も左もバケツで海水を汲むようにイカを釣っていたけど。

ノビタは惨めだった。
リールが”危うきこと累卵のごとし”とか、”ダモクレスの剣”の状態で。
何時、糸が巻けなくなっても可笑しくない状態だったのだ。
だから、イカが掛かっても超スローモーションでしか糸を巻けず。
その上、”泣き面にハチ”糸巻きに気が取られていると、海のスプリンターの如き40〜45センチの大サバに、ドドーン、ドドーンと仕掛けに飛びつかれ。
仕掛けをゴチャ、ゴチャにされ。
その度に血だらけになって、サバの胃の中に収められたスッテを外していた。

沖上がり
午後9時過ぎから雨が降ってきた。
でも誰も気にするものはいなかった。
雨降る中、全員、頭から湯気を出して戦っていたヨ。
                                       
トレトレのサバの塩焼き
3セット用意して行った仕掛けは、全てお釈迦になり。
最後は、イカスッテ1個だけで戦っていた。
まるで桐野利秋(西郷隆盛の部下で西南戦争で戦死)が言う、
「男子たるものは、絶対にへこたれてはならん。
 銃があれば、銃で戦い、
 銃が破損したら刀で戦い、
 刀が折れたら素手で戦い、
 腕を失ったら歯で戦い、
 生命(いのち)を取られたら魂(たましい)で戦うのだ」
の檄に応えるが如く。

午後11時半。
ミタ船長の合図で沖上がり。
”目出度さも ちゅうくらいなり ノビタのイカ釣り”、リールを直し再挑戦だ!

本日釣果
スルメイカ 25〜30センチ 約60杯
大サバ   40〜45センチ 18本




















The END
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