眠ったような海だった 海も空も青く澄んでいた 歳々年々 午前9時半。 出かけようとすると、 「この暑さによく行くね〜」 とカミさんが、トウモロコシを3本と、饅頭1個と、イチジク2個をペロリと食べ。 畳みの上に転がったまま眠そうな眼でこちらを見ている。 昨日、先日村で受けた健康診断の結果が届いた。 それによると、カミさんはコルステロールが正常値を、かなりオーバーしている。 口では気にしているようだが、行動が伴わない。 相変わらず、よく食べ、よく飲み、よく寝る。 「一生は一度きりよ!」 と、抑制というブレーキが、すっかり効かなくなっているのだ。 車なら修理に出すか、買い代えられるのだけど・・・。 昔はこうではなかった。 「あの人は、人の妻として必要な三つのものをそなえています。 それは、教養と、賢さと、美しさですよ」 (『レベッカ』by ダフネ・デュ・モーリアより) まではそろっていなかったけど、あれは錯覚だったのか、と思うほど変貌したのだ。 ねんねんさいさい はなあいに 「 年年歳歳 花相似たり さいさいねんねん ひとおな 歳歳年年 人同じからず」 (『代悲白頭翁』by劉希夷(りゅうきい) の1部分) いや、時は人を刻々と変えていくのである。 昔、輝いて見えていたものも、電池が消耗していくように減っていき。 逆に、どんどん成長していくものがある、図太さだ。ああ。 生気の無い海で 釣りを始めたのは午前10時。 堤防にはルアーマンが4人、何度も何度もジグを投げていた。 時々、ワカシが掛かるが木っ端サイズだけ。 釣りを開始した直後に、 「こんにちは」 と声をかけられた。 木っ端ワカシが・・・ 先日、ここで会った黒鯛釣り師の栃木のテツローさんだ。 海の様子を見て、竿を出すのをためらっていると言う。 海の底まで透けて見えるようなベタ凪。 うだるような暑さ。 確かに、とても魚がいる雰囲気がしない。 なんとかカンパチを コマセ籠を付けたサビキを、海面にポチャ−ン!。 と・・・。 途端に、小魚が海底から湧き上がり、コマセ籠の廻りをグルグルと回遊する。 でも、サビキにはなかなか食いつかない。 1匹が針掛かりした。 道糸が横に走る。 それを追って、次々と新たな小魚が針掛かり。 一気に堤防の上へ、釣れたのは木っ端ワカシ3匹。 何度目か、木っ端ワカシの群れの下に黒い影が。 その影が、右へ、左へ、隼のごとく廻旋している、カンパチだ! また木っ端ワカシが針掛かりした。 その時だった。 いきなり先ほどの数倍の引きが竿先に、そのまま竿先が一気に海面に引き寄せられ。 ーフイッシュ・オーーン! カンパチの引きは鋭い、石持やサバのアタリが夜空の花火なら、カンパチのアタリは落雷ではないか。 そして木っ端ワカシと一荷でカンパチが堤防の上に、24センチあった。 これが初めで最後になるとは・・・。 そして納竿 昼過ぎ、ルアー名人が来た。 彼もヒットしたのは、木っ端ワカシだけ。 次々と釣り人が帰って行き、残ったのは栃木のテツローさんとノビタだけ。 そこに先日ここで会ったゴリラさんがやって来た。 石持とアジ狙いだそうだが、彼の願いも勝利の女神に無視された。 午後2時半。 コマセがなくなった所で、納竿。 今日も、寅さんの「男はつらいよ」の主題歌のうような結果であった。 「奮闘努力の甲斐もなく 今日も涙の 今日も涙の 日が落ちる 日が落ちる♪」 真夏の太陽がジリジリと照りつける堤防の上を、汗を滝のように流しながら、トボトボと帰って来た。 本日釣果 カンパチ 24センチ 1匹 The END |
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