2007年11月15日(木)  湊寄りの堤防
               午後6時25分〜午後8時半
ノビタの釣り天国



      思いがけない勝利♪
   

                          
              月下で・・・
真タコの値段
スーパーの食品売り場に行くと、真タコが陳列されていた。
それを見た瞬間思わず、
「トレビアーン♪」
と心の中で快哉したね。

小さなトレーに盛られた正味量102グラムの真タコが、ナント!298円である。
家に帰りカミさんに報告すると、
「調子にのるんじゃないぞ!」
と嫌な顔をされ、
「野菜の値段をチャンと見てこい!」
と追い討ちを。
思わず、
ーくやしかったら朝鮮人参か、松茸か、キュウリ(この季節は高値だ)でも栽培してみろ。
と胸臆で毒ついていたね。
(我が家では、山の幸はカミさんの家庭菜園で、海の幸はノビタの釣りで、と形だけは賄うことになっている)

3日ほど前、80歳の妻が75歳の夫の殺害を計画、殺人未遂容疑で逮捕された事件がテレビで報道されていた。
”丙午(ひのえうま)の女は男を食う”(干支(えと)の丙午に生まれた女は夫を殺すという迷信)という言い伝えがある。
ーこの女性は丙午生まれだったのか?。

凶悪犯罪が後をたたないが、それほど身につまされるものはない、でもこの事件だけは身につまされましたねーー。
この事件、”対岸の火”ですましてよいのだろうか。
所詮、夫婦は赤の他人、男と女。
「男と女の間には
 ふかくて 暗い 河がある♪」
   (『黒の舟歌』by加藤登紀子)
なのだ。
敵が何を考えているのか本当の所よくわからない、ひょっとしたら我が家にもイエローカードか、レッドカードが出ているのかも・・・。

いざ出撃
久々にタコを狙う。
昼間は潮の動きが鈍いので、今日は夜討である。
満潮17時12分、潮が動き出すのは18時半ごろ、と早めに夕飯をすませ家を出た。
港はすでに夜の闇にどっぷり漬かっていた。
オレンジ色の三日月が、南西の空にひっそり浮かんでいる。
星は薄い雲に覆われ、ほんの数個だけ。
北風がヒューヒュー吹いていたが、寒くはない。

夜タコを狙うのは初めてだが、ボーズは避けたい。(自分の釣歴に傷がつく)
頼山陽の漢詩に、『不識庵撃機山』がある。
この詩は、上杉謙信が川中島で、乾坤一擲、武田信玄と雌雄を賭けた決戦を表したもの。
「鞭声粛々夜河を渡る
 暁に見る千兵の大牙を擁す
 遺恨十年一剣を磨き
 流星光底長蛇を逸す」
上杉謙信ではないが、ノビタもぼんやり伸びた白い道を”鞭声粛々”と、タコが待つ決戦場に向かった。

北風が吹き荒れる海で
釣りを開始したのは、午後6時25分。
暗闇の中でよくわからねど、堤防には3人のタコ釣り師と、ヘッドランプを付けた4人のエビ釣り師がいるようだ。
10分、20分、30分、40分・・・と時が過ぎて行く。
「お〜いタコよーー。どこにいる?」
と暗い海に呼びかけながら探っていると、それにこだまするよに仕掛けが停止する時がある。
一瞬、心が踊るのだが、全て軽い根掛りだった。
その都度、失望を味わいながら、また探り続ける。
ヒューヒューと耳を切る風に、寒さが加わってきた。
頭の中では、あせりと、せつなさと、むなしさが、真っ黒な渦になって吹き荒れていた。

「タコよーーどうした?。早く出てきてくれーー」
野口英世の母シカが、アメリカにいる息子(英世)に宛てた手紙に、こんな部分がある。
「・・・・・・
 はやくきてくたされ。
 はやくきてくたされ。
 はやくきてくたされ。
 いしょ(一生)のたのみて(で) ありまする。
 にし(西)さむいてわ おかみ(拝み)。
 ひかし(東)さむいてわ おかみしております。
 きた(北)さむいてわ おかみおります。
 みなみ(南)た(さ)むいてわ おかんて(で)おりまする
 ・・・・・・」
まるで次元が違う話しで申しわけないのだが、ノビタがタコを待ち焦がれる思いも同じであった。

ノビタとタコの死闘
と・・・・。
海底をヒコヒコと引き摺っていたタコ天仕掛けが、ガガと岩盤を擦るようにして停止した。
ヘッドランプを点け腕時計を覗いた、午後7時43分だった。
強引に抜こうとしたが、動かない。
ータコか?
半信半疑のまま、道糸を弛ませ置き竿にした。

<そのころ海底では>
タコが、
「わが輩はタコである。まだ名はない」
と言ったかどうかは知らないが、8本の足を岩盤に張り付け、タコ天を抱いていたのである。

タコは2日前に、小さなヒラツメカニを一匹食べたきりだった。
飢えていた。
暗い岩盤の影に隠れ、獲物が近ずくのを今か今かと待っていた。
朝から晩まで、太い針を付けたサンマが何度も目の前を行き来していたが、彼はだまされなかった。
彼は驚くほど用心深かった。
なぜなら彼は、生まれた時から親を知らず、兄弟を知らずの天涯孤独で、このせちがらい海の中、独りで生き抜いてきたのだ。

でも今日は飢えていた。
周囲が暗くなると目が霞み、飢えが極まり、意識が朦朧としていた。
そして魔がさしたと言うべきか、とうとうタコ天仕掛けに飛びついたのだ。
サンマに付いている針が見えなかった、見えたのは美味しそうなサンマだけだった。
飛びつくと同時に、サンマが逃げようとした(注:ノビタが上で引っ張った)。
彼はサンマが逃げると思い、
「逃げるか!」
とサンマを強引に引っ張り、岩盤に張り付いた。
その瞬間、
「ガガガ」
と針が岩盤を擦った。
その音を聞いた途端、彼は罠に嵌ったことに気がついた、
「シマッタ!」
と臍尾噛んだが遅かった。

直後、道糸が弛んだ。
彼は、人間がタコを油断させるための戦略であると、一瞬にして悟った。
そして、
「やるか人間!、俺はお前なんかにゃ負けないぞ!」
と、彼は海底から堤防の上に向かって宣戦を布告したのである。

<地上では>
糸を弛ませてから5分経過した。
もしタコなら、岩盤から足を離しているころの時間である。
タコを引き上げようと。
ヘッドランプを点けて竿先を照らしながら道糸の弛みを取り、竿先を下げ、腰をかがめ、
「エーーイ!」
とエンジン全開で竿を振り上げたが、仕掛けはビクともしなかった。

まるで鉄の塊でも引っ掛けたような固さだ。
ー根掛かりだ!
リールのドラグを固く締め直し、ギリギリと竿を引っ張ったがピクリともしない。
真っ暗な堤防、水面から6メートルはある高さ、での綱引きである。
海に引っ張り込まれるような恐怖が、湧いてくる。
根掛かりなら意味もないが、また道糸を弛ませ竿を放置しておいた。

<海底では>
海面が、ヘッドランプの灯りで一瞬明るくなると、
「来るぞ!奴は一気に俺を引き上げる気だ!」
と叫びながら、彼はより強い力で岩盤に張り付いた。
直後に。
ガーン!と強烈な引きがきた。
彼は耐えた。
ーこれくらいの引きがなんだ!。俺は海底がゴーゴーと渦を巻いていた時でも岩盤に張り付き、じっと耐えてきたのだ。
こうなったら持久戦と。
彼は、人間があきらめて道糸をハサミで切るのを待った。

<地上では>
時間を置いて、何度か仕掛けを引き抜こうとしたが、仕掛けは動かない。
何度目かのトライだった。
竿先を力を込めて引くと、バリバリと何かが剥がれるような・・・、そしてズルズルと30cmほど持ち上がった。
ーソレッ!
とリールを巻こうとしたが、仕掛けはまたも凝固。
そのまま膠着状態に。
時は過ぎていく。
ー道糸をハサミで切るしかないか。
と、ほとんどあきらめていた。

時刻は午後8時5分。
渾身の力を込めて竿を引っ張ると。
バリバリバリと、何かが剥がれるような感触が。

<海底では>
時間を置きながら、何度も、何度も、強烈な引きが来た。
その度に彼は踏ん張り、
「皇国ノ興廃コノ一戦ニアリ、各員一層奮励努力セヨ!」
と、8本の足を叱咤激励していたのだが。
人間は、なかなかあきらめない。
彼は2日間何も食べていなかった、彼の体力はすでに限界に近ずいていた。

そして、とうとう難攻不落の城郭が・・・。
足が1本バリバリと岩盤から剥がれた、続けて2本目がバリバリと、そして3本目がバリバリ、点、点、点、点。
とうとう彼は岩盤から引き剥がされ、水面に浮上して行った。

タコの述懐。
ーなぜだ?
俺は全身全霊をかけ、人間に根掛かりと思わせるようガッチリ岩に張り付いていた。
これまでの経験では、このような膠着状態が長くても15分続くと、人間はあきらめて道糸をハサミで切っていた。
その度に俺は難を逃れてきた。
ところがどうだ?
今回は、膠着状態が30分も継続したのに、人間は道糸をとうとう切らなかった。
人間は、俺の張力の限界を見通していたのだろうか。
まるで川中島の決戦で、武田信玄の作戦の裏をかいた上杉謙信の戦法ではないか。
違うのは、武田信玄は危機一髪のところで難を逃れたが、俺は人間に捕まったということか。

そして彼は、
「わたしは今日まで生きてみました
そして今わたしは思っています
幸せだったと♪」
 (『今日までそして明日から』by 吉田拓郎)
を歌いながら、いさぎよく海面に浮上して行ったのである。

<そして地上>
「ソレーーッ、今だ!」
と全力でリールをギリギリと巻いた。
何かが浮上してくる。
「・・・ゴミ?」
海面を、ヘッドランプで照らした。
なんと、タコだった。
タコが掛かっていたなんて、全く予想していなかった。

そのまま一気に堤防の上に。
「グシャッ!」
とタコは、堤防の上に落ちた。
1.6キロの真タコだった。
信じられないような戦果だった。

納竿
根掛かりと勘違いしたタコとの戦いに、拍子抜けしてしまった。
でもあきらめて道糸を、ハサミで切らなかったことに、ホッ!
思わぬ天からの恵みに満足し、今夜はこれで充分と午後8時半、納竿。
家に帰り、いつものようにタコを計量す。
始めに、ビニール袋に入れた真タコを持ち体重を量り、そのあと何も持たないで体重を量る。
その差分がタコの重量だ。
この方法は先日、床屋に行った時に散髪してくれた女性が、ご主人も同じ方法でタコの重量を量ると言っていた。
タコの重量を量る方法としては、割とノーマルなのかもしれない。


本日釣果
 真タコ  1.6キロ 1杯。



















The END
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