2007年12月20日(木)  湊寄りの堤防
              午後4時50分〜午後9時半
ノビタの釣り天国



        メバルはいた♪
   
                                      
  東の空に月
今夜も貸切
暮色蒼然となった堤防。
中天の東側に楕円の月が白く輝き。
その下に夕陽に染まったピンク色の雲が横たわる。
北から南に動く大気に揺曳するビニールの袋、ほとんど無風。

湖のような真平らな海は、潮が引き海底が透けていた。
ノビタ一人しかいない、満目蕭条の港。
今夜も港は、壺中の天(自分だけの理想郷)である。
「独り住むほどに淋しきはなく
 独り住むほど安けきはない
 その安けさは淋しさを補って余りある」
     (山頭火)

思わぬ先客
いつものポイントに着いた。
途端、足元からバタバタバタと真っ黒な鳥が。
「オーマイ・ガッ!」
なんと、鵜が堤防の際から逃げたのだ。
この先客、魚を腹いっぱい捕食し、体が重く飛び立てないのか水面を走って行った。
30メートルほど沖で止まりこちらを振り返り、
「ギャオーーー」
と大口を開けて一叫び。
これは鵜語で、「あほーー(阿呆)!」という意味。

ーバッキャローーー!
と返したが、精神的なダメージは大きかった。
あいつめ、ノビタの分を残してくれただろうか。
ーどうしよう?
青江美奈の『長崎ブルース』になっちまった。
「逢わなきゃ 夜が やるせない
 どうすりゃいいのさ 思案橋
 ああ・・・ せつないメバル釣りブルースよ♪」
しばし迷った末、荷物を下ろした。

    
メバル釣り仕掛
アタリはあるのだが・・・
釣りを開始したのは、午後4時50分。
ドボーン!と投入した電気浮子の赤い灯りが、うす闇が這う海上に鮮明に輝いた。
数分後、その赤い灯りが海中を赤く染めて沈んだ。
ードキリ!
でも1、2、3、4、5と数えるうちに、不死鳥の如く赤い灯りが、ポッカリと海上に戻ってしまった。

ともかく、鵜に襲われても魚はまだ残っていると、ホッ。
ただこのアタリ、この後も続くが針掛かりしない。
漫画の、顔の前にブタの骨をぶら下げて走る犬のように、欲求不満になっちまうよ。
なんとか針掛かりさせたのは7〜8センチの規格外れ、即却下し海に返品。
午後6時過ぎ、やっと合格したメバルは、20センチ強だった。

                         
  愛用電気浮子
場所を変える
そのあと。
針掛かりしないアタリに嫌気がさし、場所を変更することに。
しばし場所選定に多岐亡羊となったが意を決し、月明りを受け仄白く佇む港の中を、新たな場所に向かって歩いて行く。
雲一つない群青の夜空。
月が星を圧し一際白く輝き、星は幾つか月から離れた北の空でひっそり瞬いていた。
弱いが、刺すように冷たい北風に鼻水が誘われる。
新たな戦場は、黒い闇が溜まるテトラの周囲だ。

此処も、ボンヤリ海底が透けていた。
今夜も、5.3メートル磯竿1号1本、メバル針10号1本のシンプル仕立て、餌は青イソメである。
新たな戦場で、一振り入魂の第一投。
数分後、電気浮子が勢いよくズボッ!と海中に消えた。
ー慌てるな、畳の目を数えろ!
1〜2秒、間を取りバシッ!と竿を振り上げると、ググッと手応え。
敵はテトラの際に走った。
でも所詮、ノビタの敵ではなかった。
難なく敵を岸に引き寄せ、そのまま堤防の上へ。
本日、2匹目も20センチを超えていた。

好事魔多し
此処は、小メバルのアタリが無くイライラさせられなかったが、本命のアタリも遠かった。
午後8時過ぎ、パタパタパタと入れ食いとなったが、”好事魔多し”(とかく邪魔が入りやすい)である、なんとライントラブル発生。ーああ。
「私バカよね おバカさんよね
 うしろ指 うしろ指 さされても
 あなた一人に 命をかけて
 耐えてきたのよ 今日まで〜♪」
と、細川たかしの『心のこり』を歌いながら、ライントラブルを解決した時には、すでに時合は過ぎていた。

と・・・。
「こんばんわ」
と薄暗闇から、玉ころのように声が耳穴に飛び込んできた。
見知らぬ”ザ・釣り侍”が、挨拶をして行ったのだ。
この挨拶、「衣食足りて礼節を知る」ではないが、なかなか出来るものではない。
今日も一つ勉強になった。

終章
時おり水平線上に稲妻が走る。
音は無いが、雷であろう。
どこで落雷しているのか見当がつかないが不気味だった。
その度に空を仰ぐのだが、雲一つない月夜に変わりはなかった。

午後8時半を過ぎると、アタリが途絶えた。
フリードリッヒ・フォン・ハルデンベルクの『青い花』に、「出来事はもう結末がついたように見えるとき、実際はやっと始まったばかりのことがよくあるものだ」という記述がある。
釣り師は、そう思ってずるずる釣りを続けるのでは?
午後9時半、”あきらめは心の養生”と竿をたたんだ。
帰り道、凍てついた空気を吸いながら歩いていると、グーグー腹が鳴いた。
「月のひかりの すき腹ふかく しみとほるなり」
   (山頭火)

本日釣果
メバル 18〜22センチ 7匹
     7〜10センチ  6匹 全て返品

















The END
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