今日も何故、何故? 束の間の晴れ間 情熱にも賞味期限が 雷雨が気になる季節だ。 ー雨は降らないか? 雨だけなら良いが、雷が混じらないか? 雷が来たら命がけ。 ひょっとすると、一巻の終わりかもしれない。 ・・・と。 いつもこんなことを考えているうちに、釣りに行く意欲が蒸発してしまうのだ。 情熱にも賞味期限がある。 くよくよ考えたり、単なる物臭で、情熱を放置したままにしていると、いつか情熱も冷め朽ちてしまい。 時には、滅多にない好機を逃してしまうこともある。 庭に出て空を見上げると。 雲に覆われていた空に明るさが増し、薄雲を通して光が漏れている。 雨は大丈夫かもしれない。 それに、雷雨は突然来ない、雲が湧き、雨が降り、雷が近場に落ちるまでには時間差があり。 生還できるチャンスはある。 ー行くべし! と全身に喝を入れ、家を飛び出した。 鬼軍曹に会う 堤防に着くころには、雲が大きく割れその隙間から青い空が覗いていた。 西日を浴びながら歩いていると。 南から吹いてくる涼しい微風が、汗ばむ体を冷ましてくれた。 海は鏡のような凪だった。 昼下がり、港は別世界のような静謐に沈んでいた。 しばらく行くと、前に釣り人が一人歩いている。 その歩く様、天下広しと言えどもこれほど磊落な歩きっぷりを見たことがない。 左手に竿を2本、右手にバッカンを持ち、背中全体を覆うリュックサックを担ぎ。 ユラリ、ユラリと、風に漂う布切れのように歩いている。 その後姿は、地球温暖化も、アメリカの次期大統領の民主党候補も、原油高騰も、俺には関係ないと言っているようだ。 その後姿に見覚えあり。 「暑いですね」 と声をかけると、 「おーー」 と振り向いた。 ー鬼軍曹だ。 顔が笑っている。 驚いた!、別人かと思ったヨッ。 なんせ、彼の笑顔を見たのは初めてのような気がする。 話しかけると、いつものように、ウン、ソウダ、オー、と必要最低限の言葉しか発しない。 数よりサイズの良いアジを狙うのだと言いながら、彼は途中で分かれた。 ノビタはまず数と、そのまま先週の場所に向かった。 アジが釣れるポイントなのに・・・ いつもの場所を遠くから見ると、・・・6人のアジ釣り師がいた。 陽射しに白く霞む彼らの動きは、緩慢だった。 なかの3人は堤防に座ったままだ。 沈まない浮子 近ずくと一人だけ動いている人がいた。 先週、ここで会った栃木の人だった。 様子を聞くと、昼から来て小ぶりだが30匹ほど釣ったと言いながら、クーラーボックスを開けて釣果を見せてくれた。 「人類皆兄弟、不幸はともかく幸せは分かちあおう」 と彼の隣りで竿を出させてもらった。 釣りを開始したのは、午後3時半。 そのうちに彼は、サイズの大きい奴を狙うと言いながら場所を移動、彼のいた所に行って、大いに期待したのだが・・・。 そうはイカの金玉だった。 彼が去った海には、閑古鳥しかいなかった。 「今にみていろボクだって」 と、10分、20分、30分、1時間、2時間、3時間・・・待ったのだが、その今がなかなか来なかった。 ところがギッチョン。 ノビタの位置から30メートルほど先では、ポツリ、ポツリだが良形アジが切れ目なく釣れているのだ。 突然、叫び声、 「しまったーーー。大きい奴を落としたよ」 ダブルで掛かったアジの、大きい奴を上げる途中で落としたらしい。 「他人の不幸は蜜の味」 嬉しくなって、胸のなかで拍手していたよ。ーホントに。 納竿 黄昏が近くなると、陸も海も靄のカーテンに隠れ。 灯台の白い灯りが、靄のカーテンごしにぼんやりと円を描いていた。 「ボーーーーーーー」 と姿が見えない船の霧笛が、空気を振動させながら消えていった。 反応が無い海に見切りをつけ道具を片付けていると。 ナント、隣りの釣り人が良形のアジをまたまた釣り上げたのだ。 まだ小アジを2匹しか釣っていなかった、せめてもう1匹と、慌てて仕舞った竿を出し直した。 おかげで竿を出すとすぐに、22センチの良形アジを1匹追加したが、それっきり、以降、発展も飛躍もなし。 午後8時。 元気も電池切れとなり、釣り道具を片付けていると。 暗闇から、釣ったアジの数を話している声が耳に飛び込んできた。 「30匹は釣ったよ」 「いいな〜、俺は12匹だよ」 ・・・と。 他人の幸せは塩の味、ーああ。 今日も『男はつらいよ』の1日だった。 「奮闘努力の甲斐もなく 今日も涙の 今日も涙の 日が落ちる 日が落ちる♪」 本日釣果 アジ 15〜22センチ 3匹 The END |
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