2008年6月16日(月)  湊寄りの堤防
              午後5時20分〜午後7時半
ノビタの釣り天国



    今日も釣れた♪
   

                                      ピンク色の月が
異相の男
先日、アジを大釣りした場所に男が一人、竿を出していた。
「どうですか?」
と声をかけると男が振り向いた。
ー途端、ギョッ!
顔いっぱいを占有する目、鼻、口。
造作が大きいのだ、その顔が破顔している。

普通の顔を予想していたので、まるで魑魅魍魎(ちみもうりょう)の親玉を見たようなショックを。
ー異相だ!
英雄、豪傑、怪人に多い顔である。
彼の話しでは15時間粘って一度アタリがあっただけだと言う。
ー今日はだめか・・・。
と思わずつぶやきながら、彼の隣りに荷物を下ろした。

午後5時20分。
釣り開始。
堤防には、隣りの男とノビタの二人だけだった。
西日はまだ高く、その勢いは衰えていない。
生暖かい南風が吹いていて、海は数を超えた小波で埋めつくされていた。
空気は蒸されていた、じっとしていても体が汗ばんでくる。
仕掛けを、いつものようにドボーン!と足元に落として数分。

思いがけず竿先が、上下に元気よくお辞儀を繰り返した。
これを見て、
「おおお・・・・凄い、凄い、凄いアタリだ!」
100メートル先にも届きそうな大声を上げたのは隣りの男。
獲物を引き上げると、毎度おなじみ20センチ前後のタナゴである。
「なんと巨大な魚だ!」
と男は叫んだ。
なんか馬鹿にされいるような気がしてきたのだが・・・。

        
小波はあったが凪
この男、善玉か悪玉か。
「渡る世間に鬼はない」
で接すべきか、
「他人を見たら泥棒と思え」
で接すべきか。
こんな時は開高健でいこう。
「仲良くし、油断するな!」



カーチャンに、もてあまされた男
上げいっぱいが、午後3時57分(那珂湊潮位)。
まだ潮止まりの時間帯だ。
タナゴを1匹釣ったあと海は沈黙。
ヒマなので竿をもう一本出した。

隣りの男は、堤防の壁についているムール貝(潮見貝)や、カキを、引っ掻き具で取り、その剥き身を餌にしていた。
その引っ掻き具で取れたムール貝や、ホヤや、ナマコは、餌にするだけでなく、持ち帰り食べるらしい。
・・・・・・が。
それを食べるとホッキするので、うちのカーチャン嫌がるんだ、と言いながらガハハハ、ガハハハ、ガハハハ・・・・・・と笑っている。
                                          
    引っ掻き具
今日は何時までやるのか聞くと。
「今日は帰って来るな」
とカーチャンに言われてんの、とガハハハ、ガハハハ、ガハハハ・・・・・・笑っている。
サラリーマン川柳傑作選を地で行っているような。
「粗大ゴミ 毎朝出るのに 夜帰る」

何を狙っているのか聞くと、大物と言う。
どんな大物か聞くと。
5年前ここでタモで掬ったとき、柄が折れて逃がした奴だという。
彼の声は大きい。
彼から15メートル離れた所にいるのだが、耳の鼓膜が痛くなってくる。
こんな大声では大物が逃げると、気がきでなかったが彼は一向に無頓着だった。

逃がしてから毎週、春夏秋冬ここに通っているのだが、まだ釣れないのだと言う。
気が遠くなるような話しである。
これは、
「待ちぼうけ 待ちぼうけ
 ある日 せっせと 野良かせぎ
 そこへ兎が とんで出て
 ころり転げた木のねっこ♪」
の童謡の内容に、似ていないか。
                                                             
褒める男
午後5時45分、待望のアジが釣れた。
サイズは17センチほど。
それを見た隣りの男、
「たいしたもんだ。腕が良いんだな〜」
馬鹿にしているのか、本当に褒めているのか。
その5分後に、また同じようなサイズのアジ。
また、
「まるで宮本武蔵だな」
と隣りの男。

NHKの「プロフェッショナル」で、褒めて教育すると人は成長が早いと言っていた。
たとえが悪いが、「ブタもおだてりゃ木に登る」の伝か。
本の題名など忘れたが、それに女の褒め方が書いてあった。
ばかな女には、あなたのような素直な女は世の中にあまりいないと褒め。
強情な女には、女性には稀な意志の強い女だと褒め。
うそつきな女には、話しがうまく退屈しないよと褒め。
平凡でとりえのない女には、君の誠実さには感心すると褒め。
こちらの褒め言葉を、まともに受け取る女には、君は本当にいい人間だ、根からの善良さを持って生まれてきたんだねと褒める。
要は、褒めようと思ったら人間、必ず褒めることが出来るということかもしれない。
隣りの男、ひょっとしたら教育関係者か。

落日入れ食い
午後6時20分。
17〜20センチの小ぶりなアジを10匹と、20センチほどのタナゴを2匹釣った。
午後6時半過ぎ。
パラパラと、さみだれのように釣れ始まり。
隣りの男の、
「たいしたもんだ、たいしたもんだ」
の声援を休みなく背に受けながら釣り続ける。

        
入れ食いタイム
東の空に薄紅色に染まった楕円の月が浮かび。
西の空には、真っ赤に燃えた丸い夕陽が。
「見事な夕陽だ!」
と隣りが、黒々とした雲海に隠れていく夕陽を見ている。
月も出ていますよ!と言ったが、月には興味がないらしく落日から眼を離さない。
風が止んだ。
静かな黄昏だ。

この時から堤防が闇に包まれる午後7時20分まで、海が沸騰し爆発した。
前回と同様、竿1本で戦った。
ノビタの奮戦ぶりを見て、
「ホウ、ホウ、ホウ・・・・・・」
と隣りは、フクロウが鳴くような叫びを上げている。

納竿
午後7時半。
コマセがなくなった所で打ち止め。
沖アミは初めの2〜3回しか使っていない。
残った沖アミを海に捨てようと思ったが、隣りの男に入りませんかと聞くと、ナント!涙を流さんばかりの大喜び。
子供を大学に入れてから釣り餌を買ったことがない、こんな美味しい餌を使ったのは何年ぶりだろう、と感極まった声で言う。
なんか、こちらが恥ずかしくなってきてしまった。

「お先に失礼します」
と言うと、何度も、何度も、ありがとうございます、と言う。
彼は、
おんりえどごんぐじょうど
「厭離穢土欣求浄土」
ではないだろうか、と余計な心配が・・・。
彼は正真正銘の善玉だった。
オレンジ色に染まる楕円の月の下を、重い釣果をぶら下げて帰ってきた。

「色即是空
 空即是空
 日々是好日」

本日釣果
  アジ  15〜24センチ  57匹
  タナゴ 17〜20センチ   9匹

















The END
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