辛うじて1匹の日 なんとか1匹確保 いつも新たなり 今日もカンパチに戦いを挑んだ。 カンパチとの戦いは多様、大同小異の小異を入れれば100戦100様で、いつまでもその戦いは色褪せない。 そのつど衝撃と畏怖と興奮に没我し、 心まで新陳代謝させてくれる好敵手だ。 殷(いん)を興した湯王(とうおう)は毎朝顔をあらう。 かれはそのための青銅製盤に、九つの文字を彫りつけた。 苟 日 新 日 日 新 又 日 新 (『大学』に残された孔子の言葉) 以下に読み下す。 苟(まこと)ニ 日ニ 新(あらた)ナリ 日日(ひび) 新(あらた)ナリ 又(また)日ニ 新(あらた)ナリ 司馬遼太郎の『風塵抄』では、 「湯王が勢いよく顔を一洗して、おれはきのうのおれではないぞ、 さらに一洗して、きょうはうまれかわったぞ、 という素朴な明るさにあふれている」 となるが、ノビタの場合は前述の心の新陳代謝と解したい。 何ごともなかったかのように 初めのバラシ 午前4時半、餌釣り開始。 雲多い東の空が薄く白んできた。 西空高く、ぼんやりとオレンジ色をした半月がある。 港はまだ眠りから覚めず深閑としていた。 風も無く、空気は水気を含み生暖かく、 汗がだらだらと肌を滴り落ちていく。 薄闇の中、時々、竿を撓らせのは20センチ近いアジばかり。 本命のハナダイは来ない。 午前4時50分、やや小ぶりだが規格外(10センチほど)のアジを泳がせてみた。 すると、午前5時。 「ガタッ」 と異様な音が。 振り返ると、カンパチ釣り用の竿が堤防から7分ほどせり出し、 海に突っ込みそうになっていた。 「キターッ!」 餌釣り用の竿を放りだし、慌ててカンパチ用の竿にしがみつくと。 ーなんてこったい! 浮子が何ごともなかったように浮上してきた。 バレたのだ。 餌が大きくて飲み込めなかったらしい。 切歯扼腕しながらまたサビキ竿をシャクッていると、 フグの群れ泳ぐ海中に赤い魚が数匹混じるようになり、 ハナダイが1匹釣れた。 すぐ泳がせたのだが・・・。 逃げた魚は二度と食いつかなかった。 今日も夏空 初めの1匹 それから1時間、2時間・・・、ハナダイは6~7匹確保し、 カンパチ用の竿も2本出したのだが、海からカンパチの気配は消え、 まったくアタリなし。 いつか空から雲が消え、強い日の光が地上を灼いていたが、 東からの涼風が焦熱地獄から救ってくれていた。 午前7時35分。 と・・・。 アジにゴチャゴチャにされたサビキを、解きほぐしていた時だ。 「ガガ」 と竿が引き摺られる音が。 振り返ると、竿が斜めに”へ”の字に曲がり、 ビシ、ビシと海に引き込まれていた。 この瞬間、たるんで伸びきって、よどんでいた神経が一気に硬くなり、エンジン点火。 脱兎の如く走り、全身で竿にしがみつく。 と、敵は堤防の際に突っ込んでくる。 警報のスイッチ・オン! ーリリリリ・・・・ 全身に警報が鳴り響いた。 堤防際を走られると、貝殻でハリスが切られてしまうのだ。 リールが空回り、ドラグを締めていなかった。 ーああ。 慌ててドラグを締め、竿を真っ直ぐ沖の方に伸ばしてカンパチを岸から離し、一気に堤防の上に。 全身に火薬が詰まったような敵は、以外と小ぶりな29センチだった。 納竿 このあとが続かない。 午前8時10分。 もう帰ろうと竿を1本片付けていた時だった。 まだしまっていない竿の浮子が、海面で激しく踊りだし、そのまま海中に消えた。 そのまま数秒待った。 と、またも浮子が何ごともなかったように海面に浮上。 2回目のバラシだった。 くやしくなりその竿1本で戦いを延長したのだが・・・。 午前9時、未練をふっきり納竿。 本日釣果 カンパチ 29センチ 1匹 The END |
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