2010年12月12日(日) 午前6時半~午後0時
           那珂湊沖(タコ釣り)
那珂湊 水温 
16・8度<潮>小潮 満潮  8:50 干潮 14:30
ノビタの釣り天国


         上も下も見ぬが仏


                                     なんとか2ハイ
見果てぬ夢
船のタコ釣りは、ノビタにはナバロンの要塞である。
難攻不落なのだ。
これまで3度挑戦し、その戦果は玉砕に近い。
この間当方は、”戦闘機(タコ天仕掛け)13機帰還セズ”の損害を蒙った。
店では1機1300円~1700円もする(船の常備品は1機1000円、付け足しながら釣り糸は無料で貸してくれる)。
船賃も高価だ。
かみさも爆発する、
「そんな当てもない釣りを止めて、那珂湊の市場で大タコを買ってきたらどうなの」
と。
タコ釣りは男のロマンである、と声を出さずに返しているけど。

250億円もかけた金星探査機「あかつき」も、
金星軌道に入り損ね、宇宙のちりとなったではないか。
宮城まり子は言う、
「チャレンジに失敗はつきもの。冒険心を無くさないで」
と。
ナバロンの要塞も、グレゴリー・ペック率いる6人の特殊部隊が、
死線を超えて要塞を爆破した。
誰かが言っていた、
「情熱さえあれば、不可能なことはない」
と。
そして今日も、吹けば飛ぶようなロシナンテに跨り、
まだ暗い夜明け前の国道245号を。
吉田拓郎の『まにあうかもしれない』を聞きながら、那珂湊へぶっ飛んだ。

  『まにあうかもしれない』吉田拓郎
「僕は僕なりに自由に振るまってきたし
僕なりに生きてきたんだと思う
だけどだけど理由もなく
めいった気分になるのはなぜだろう

思ってる事とやってる事の
違う事へのいらだちだったのか
だから僕は自由さをとりもどそうと
自分を軽蔑して 自分を追いこんで

なんだか自由になったように
意気がっていたのかも知れないんだ
まにあうかもしれない 今なら
今の自分を捨てるのは 今なんだ
・・・」

天気晴朗なれど波高し
黎明の5時過ぎ。
暗闇の中、那珂湊港の船着場は活気に溢れていた。
船灯りが煌々と輝き、次々と到着する釣り客の車のヘッドランプが左右に走り。
釣り客が、船と車の間を白い息を吐きながら行き来している。
群青の空には、無数の星の欠片が輝いていた。
西から冷たい風が吹いていたが、気にするほどではない。
今日も天気は上々。
                                         
天気晴朗なれど
午前6時、出航。
墨を流したような海を、赤、青、黄、白の船灯を点けた船が、
大名行列のように連なり港を出て行く。
外洋はうねりがあった。
船は、波飛沫をあげて疾走する。
いつものように左舷の中央からややミヨシ側に座を取ったが、
飛沫をかぶるので後尾に避難した。

本日、同船同夢のタコ釣り師は、ノビタを含め10人。
ほとんど先客に場所がリザーブされていて、
釣り座は、いつもの左舷の中央からミヨシ寄りのポジションに。
このポジションはいつも不漁なので、今日は場所を変えたかったのだが・・・。
ノビタを含め、左舷側に5人が並んだ。
船長が今日選んだ釣り場は那珂湊港から航程30分、
常陸那珂港の北、日立港寄りの沖合い5キロメートルほどの所、
水深35メートルの岩礁地帯だ。

釣りを開始したのは、午前6時半。
ノビタの左側の釣り師は、顔つきも備えも百戦錬磨風、
右側はタコ釣り始めての初心者風。
初心者の道具は、船に常備の無料の貸し糸と、船に常備の1個1000円の仕掛け。
左側の百戦錬磨には負けても仕方がないが、右側の初心者には負けられないと思った、
けど・・・。

男子一生の不覚
午前7時。
ヒョイヒョイとタコ天をシャクッていると、仕掛けがピタッ!と岩盤に吸着した。
ガーン!と思っきり仕掛けを引っ張ると、
グワッーーーと漬物石のように重い未確認物体が持ち上がった。
「キターーー」
と?、思ったら。
フッと重さが消えてしまった。

残ったのは、風に吹かれて揺れる道糸だけ。
道糸を手繰り寄せると、サルカンが伸びきって、繋いでいたタコ天が切り離されたのだ。
ーああ。
あの重さは、3キロを超えていた。
釣れたら、逆転ホームラン並みの大ダコであったろう。
あのごついサルカンが外れるとは、予想もしなかった。
ー男子一生の不覚。
落胆が頭の中で渦を巻いた。

『イソップ物語』の”はげ頭の騎手”のなかに、
こんな格言があった。
「不幸なできごとを苦にするな。
生まれた時から身につけているものでない限り、
いつまでもそばに有りはしない。
我らは裸で生まれ、裸でこの世を去っていく」
のだと。

なにをくよくよ川端柳
こがるるなんとしょ
水の流れを見て暮らす

落胆を洗い流し、またシャクリ続けた。

  
   眠狂四郎がいた!
円月殺法を見た
午前7時45分。
1.5キロのはじめの1ハイが釣れた。
30分ほどして、今度は右側の初心者が、ノビタと同サイズを海面からゴボウ抜き。
ビギナーズラックだ、と思った。
陽光が燦々と海面に降りそそぎ、船は波にユラユラと揺れていた。
左側の初心者は、いつかコックリコックリ眠っているように見えたのだが、
釣り糸を持っている指だけがヒクヒクと糸をシャクッていた。
まるで眠狂四郎だ。

ひまなので彼を見ていた。
突然、眠狂四郎がスクッと立ち上がった。
そして、
前かがみになり、釣り糸をエッサ、エッサと手繰りよせている。
釣れたのかと聞くと、ウンと頷いている。
彼とノビタの間に立てかけてあったタモで、
2キロほどの良形タコを海面から掬ってやった。
まるで円月殺法である。
この男、実はタコ釣り名人なのか。

百戦錬磨も
午前9時。
2ハイ目がきた。
1ハイ目と同じ1.5キロ。
過去3回の戦いでは、まだ1ハイも釣っていない時間なので、
今日は期待できると思い。
かつ、左側の百戦錬磨はまだ釣っていなかったこともあり、
気持ちは随分と楽であった。

このあと、ノーヒット、ノーランになるとは・・・お釈迦さまでも知らぬ仏の予測がつくメェ。
ひねもすのたりくたりの波と、ポカポカ陽気と、
無応答の海に眠気を誘われたのか、
百戦錬磨も船縁に頭を乗せて眠ってしまった。
まだ1ハイも釣っていないのに。
                                            
それでも美味い
今日も夢破れて

午後0時に、根掛かりし止めた。
ノビタたのいる左舷側は不調であった。
ボーズはなかったが、百戦錬磨が1ハイで、他の4人は2から3ハイ。
この日、我々の乗ったT船と同時に那珂湊港を出航し、
別のポイントに向かったC船は、11人乗船し船中51ハイ、竿頭は22ハイ釣ったという。

タコ釣り船だけではないが、釣果の半分の責任は船長にある。
今回は、われわれが乗ったT船のポイント選びが誤ったようだ。
次回は、かたさんとC船に乗ってみることにした。
音楽家のリストは、
「技巧は機械的な練習からではなく、精神から生まれる」
と言う。
タコ釣りも、精神から技が生まれる(?)、ノビタには棺おけに入るまでの課題になりそうだ。

追伸
帰港し、駐車場でロシナンテに荷物を載せていた時だった。
「近くて良いですね」
と隣りに止めていた車の釣り客に言われた。
ロシナンテの車番を見たようだ。
彼は、先ほど船の後尾で400グラムほどのタコ一ハイを恥ずかしそうに、
長さ1.5メートルのクーラーボックスに仕舞っていた男だ。

何処から来たのか聞くと、相模原から車で片道4時間かけて来たと言う。
向こうのタコは形が小さいので、形が良いと聞く那珂湊まで来たと言う。
不幸の度合いで言ったら、ノビタの数倍不幸な人であった。
周囲を見渡せば、必ず自分より不幸な人がいる、たしかに・・・。

本日釣果
 真タコ 1.5キロ 2ハイ

The END
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