2011年10月8日(土)  午前6時~午後0時
       仙台 海水温 19.3度
       仙台の潮汐 中潮 満潮 13:51  干潮  7:18
ノビタの釣り天国


        塩釜沖でヒラメ釣りの妙技を見た!

                                        船中最下位
ヒラメ釣り名人
後ろをふりかえると。
ーまただ!
左舷の先端にいる名人が、またヒラメをフイッシュ・オン。
柔らかい胴調子の竿が、宙に丸く弧を描いている。
彼の隣りで、東北丸第32の女船長がタモを持って海面を睨んでいた。
そして、
ードタッ、ドタッ、ドタッ。
と、無念そうに船上でのたうった獲物は、60センチを超える良形ヒラメ。
名人は朝のうちほとんど入れ食いだった。
まるで、人間に化けた怪力乱神(かいりきらんしん)を見るようであったぞなもし。

名人。
40代、中肉中背。
さんさんと降り注ぐ秋の陽射しを浴びながら終始、従容不迫(しょうようふはく)であった。
動かざること山の如く、静かなること林の如く、竿を持ち泰然と海を見つめている。
その姿、眠り狂四郎の円月殺法を彷彿させる。
静かに敵を誘い、敵の動きに変化があったところで一撃、狙った獲物は一匹たりとも逃がさない。
名人はこの日、45~80センチ級のヒラメを16枚釣った。
彼は3日前に、21枚釣ったそうな。

       
齧られたイワシ
ノビタは、根に入られ幹糸を切られたのが1匹、巻き上げる途中でハリスを切られたのが1匹、餌のイワシを齧られたのが3匹、結局ゲットしたのは2匹だけ。
名人と比べたら恥ずかしいけど、2匹なら日立や那珂湊ならまずまずの釣果だ。
なんたって6年間、自慢じゃないけど日立沖では1匹もその姿を見なかったのだから。

この日、深夜。
NHKの『プロフェッシュナル』を見た。
都内の地下デパート食品売り場を、都内トップの売り場にした部長のドキュメンタリーである。
安売り販売で客を集めたわけではない。
売れ行きが伸びない店内の内装、テナントの配置、そして従業員の熱意を改善したのである。
かたや客を集め購買力をそそる才、かたやヒラメを寄せて食わせる才。
狙う対象は違うけど、この部長とヒラメ釣り名人の感性は常人を超えている。
ーああ、彼らの足の爪でも煎じて飲ませてもらうしかないか。

BGM
今日のBGMは、ヒラメへの熱い想いをこめてマライア・キャリーの『emotions(エモーション)』にした。
7オクターブの音域を持つその美声をどうぞ。

「あなたのお陰で知った心のざわめき
思ってもみないほど奥深い思い
あなたのお陰で知った心のざわめき
天国より高く舞い上がる気分
感じるわ素敵な気分

これほど満たされたのは初めてよ
恋をしてるの 生きてるんだわ
酔いしれて 舞い上がってるの
あなたが優しく触れると
私はもう夢心地
幻なのかしら
でも好きよ 心の奥のこのざわめき・・・

船長は女性
今回、われわれが乗ったのは第32東北丸。
船長は寺島明美さんという女性。
女性としては日本初の遊漁船の船長かも。
元気があり、気配りあり、船の操舵も確か。
                                          
第32東北丸
”天空の城ラピュタ”に登場する女盗賊ドーラのような豪傑婆さんではない。
近所にいるお姉さんのような船長で、客が、
「餌10匹、追加!」
とさけぶと、
「ハーイ」
と応え、餌をバケツに入れて走ってくる。
ヒラメとやりとりしていると、すばやくタモを持ってきて、
「良かったですね」
と言いながらタモで掬ってくれる。
ーとてもいい感じ。
彼女がいることで、船上が明るく感じるのは俺だけではないだろう。

開始直後に
午前5時。
まだ闇が溶ける塩釜港を、東北丸3艘が、《ドドドド・・・》とエンジン音を響かせ出航。
われわれが乗ったヒラメ専門船第32東北丸は8人、カレイ専門の第38東北丸と、ジギング専門の第35東北丸は満員御礼のようだ。
深いワインレッドに染まる暁天の下、ベタ凪の海を漁場に向かって疾走していく。
航程1時間。
船は戦場に着いた。
日はすでに海上にあり、陽光が波間でキラキラ砕け散っていた。

           
いざ出撃!
午前6時。
「プップー」
の汽笛を合図にマイワシを付けた仕掛けを、一斉に《ドボーン、ドボーン、ドボーン・・・》と海面に投入。
ノビタはデジカメで夜明けの海をカシャ!、皆さんに数秒遅れてドボン!
と思ったら、
「ヒラメが上がりましたよ!」
とスピーカーごしに船長の明美さんの声が。
ーウッソー!
開始からわずか数秒である。
やはり、トップを切ったのは左舷先端の名人であった。
名人は、間をあけずに次々と釣っていく。

俺だって、
「信じるのだ。こんなちっぽけな人間でも、やろうとする意思さえあればどんなことでもやれるということを」
(ゴーリキィ)
でもね、名人と俺の腕には天と地のひらきがあるんだよ。
                                            
本日快晴
はじめの1匹
開始して10分、20分・・・。
ー応答なし。
斜め後ろの名人には次々と掛かるのに・・・。
名人は、ヒラメが近くに寄っているかいないか空気で分かると云う。
ー俺だって。
と、錘を海底の岩盤から50センチほど上に調整しながら、全神経を竿を持つ手に集中する。
ヒラメ30とか40とか云う、もしアタリがあったら焦らず、ヒラメが餌を飲み込むまで待てと云う。
そのアタリが来ない。
ゆっくり竿を上げ下げする。
ちと間を空けて、また竿をゆっくり上げ下げしてみる。

午前6時半。
と、その時だ。
いきなり《ガタガタガタ・・・》と、竿先がハンマーで殴られたような振動が。
不意打ちだった。
ーオオオオ・・・。
竿先を持ち上げると、《ガックン、ガックン、ガックン・・・》と強烈な連打。
「フイッシュ・オン!」
リールを巻いて来る途中、何度か《ガガーン、ガガーン》の追撃があったが、無事海面に。
隣りに来ていた船長の明美さんに、タモ入れしてもらった。
「大本営発表、敵艦一隻、ゲキチン!」
7年越しの大願成就は、46センチのヒラメだった。
それにしても、”ヒラメ30とか40とか”あれはなんじゃらほいの1匹であった。

         
餌のマイワシ
塩釜沖のヒラメは魚影が濃い
このあと。
午前7時半に、35センチを1匹追加したのが最後であった。
おまけにポツリ、ポツリと45センチ級のイナダも来ただけ。

ただ。
なんどか餌のイワシに食いつくアタリを感じ、そのつど餌のイワシが齧られるニアミスや。
海底から重量感のある敵艦を50センチほど浮上させたところで、猛烈な引きこみで根に潜られ、一瞬にして幹糸が切られたり。
海底から2~3メートルほど敵艦を浮上させたところで、強烈な反撃に耐えられずハリスが切れたり。
切歯扼腕のバラシに何度か泣かされたのである。
バラシたヒラメを加えたら、7匹釣ったことになる。
ー塩釜沖のヒラメの魚影は濃いぞ!

沖上がり
午後0時。
おき上がり。
トップは16匹だが、かたさんとノビタを除く5人は5~7匹の釣果であった。
他にイナダ、ワラサが多数釣れていた。

われわれは、本命2匹とちと残念だったけど、今回の塩釜遠征は良かった!
なぜなら、
名人の仕掛け、その釣法を知ったことが最大の成果である。
”タダ1匹ノ魚ヲ惜シムニ非ズ、釣道ノ極意ヲ得シコトヲ喜トス”。
「今日の我に、明日は勝つ」
今回の経験を次回に活かしたら、2桁だって夢じゃないぞ!

本日釣果
ヒラメ  35~46センチ
イナダ  45~47センチ


The END
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