2011年11月10日(木)  午前6時20分~午後12時
       那珂湊 海水温 18.3度
       那珂湊の潮汐 大潮 満潮  4:06  干潮  9:17
ノビタの釣り天国

       
2011年11月10日(木) 那珂湊沖のタコ釣り

            神は我を見捨てなかった!!

                                    良形タコ8杯!
いざ出撃!
明日は1年ぶりのタコとの再会。
「あー だから今夜だけは
       君を抱いていたい
 あー 明日の今ころは
          僕は船の中
とせつなく。
頭のシンが弾けてなかなか寝付けない。
それでも6時間は眠ったろうか。
夜明け前。
顔を洗い。餅を2個焼いて海苔に包んで醤油につけて食べ。大小を済まし。
フーフー言いながら熱いお茶をいっぱい。
ーいざ出撃じゃ!
午前4時45分。
空は薄い雲に覆われ、月も星もない。
ロシナンテのスターターをオンすると、
「ルルルルーン!」
と静かなエンジン音が、深沈とした夜の底を這っていく。
この瞬間、ロシナンテと俺は一心同体となり、そのまま深い闇の中へ突っ込んで行った。

BGM
今日のBGMは、ディスコミュージックの『サニー』、ボニー・Mが歌っている。
英語の歌詞を知りたい人は、・・・>こちら

「サニー、昨日までの僕は土砂降りの人生
でも、君の笑顔が僕の痛みを消した
暗黒の日は去り、光に満ちた日が訪れる
君こそ、真実そのもの、君を愛している

サニー、太陽の花束をくれてありがとう
サニー、愛を与えてくれてありがとう
君は君自身のすべてを僕に託してくれた
まるで身長が3メートルになった気分さ
サニー、真心を教えてくれてありがとう
サニー、何から何までありがとう
・・・」


5代目ロシナンテ
ロシナンテは、この9月1日に生まれ変わった。
5代目である。
先代はこの8月に死んだ。
享年8才であった。
人間なら80才ほどか。
一言も文句を言わず、俺に酷使されこの世を去った。
謝、謝、謝。

国道245号を行く。
若いロシナンテは、法定速度を気にしない。
雲に覆われた空の下。
ビュービューと風を切り、街灯や対向車のランプの光をけちらし、走った。
ー寒かった。
ハンパじゃなかった。
鼻水をすすり、涙を流し、クシャミをしながら、ハンドルにしがみついていた。

                                          
いざ戦場へ
釣る場所が・・・
那珂湊港の船着場に着いたのは、午前5時20分。
東の空だけが、闇の底から青く浮き出ていた。
ー遅かった!
すでに先客が、好ポイントを占領していた。
空いていたのは、左舷の中央だけ。
この場所では、あまり良い思いをした事がない。
残りものには福は無いのである。
この時点で、かなり戦意を失っていた。

午前6時。
那珂湊港を出港。
一攫千金を夢見るタコ釣り師は、ノビタも含めて総勢9人だった。
ノビタのいる左舷側には4人いた。
《ドドドドドド・・・・》と船は轟音を響かせ、波を乗り越え、飛沫を上げて突っ走る。
20分ほど走行した所で停止した。

俺だけどうして?
即、釣り開始。
錘120号のサンマを付けたタコ天仕掛けを、われ先に《ドボーン、ドボーン、ドボーン・・・》と海に放り込んだ。
1号は3.75グラムであるから、120号は450グラム。
これをリズムカルに海底で踊らせ、タコを誘惑するのである。
力に自信の無い者には、できない釣りである。

水深は5~7メートル。
海底は山あり谷あり、根掛かり当たり前の岩礁地帯であった。
開始して2~3分、ノビタの右隣り船先(ミヨシ)に近い人が良形のタコを引き上げた。
続いて先端の人にも来た。
このあともこの2人は、次々とタモも使わず、タコを引き上げていた。
ノビタはそれを指を咥えて見ていた。
右舷側から、
「ウォー良い形だ!」
と、景気の良い声が聞こえてくる。
俺は声を出さずに叫んだヨ。
「おいタコ!お前、人を選んで釣られろよ。
 俺は他の誰よりもお前を愛しているんだぜ」
と。

なんてこったい!
午前7時20分。
釣りを開始してから1時間経過。
「我ときて 遊べや 親のないマダコ」
と呼びかけながら、タコ天仕掛けをヒョコヒョコ海底で踊らせていると。
やっと、ノビタにも遅い春がやってきた。
ズッシリとした手応えが、海底に伸びたロープから伝わってきたのである。

水深4メートル。
あっと言う間に海面に姿を現したタコ。
右隣りの人のまねをして、そのまま船に引き上げようとした時だ、ナント!船腹に張り付いてしまった。
隣りの人がタモで掬おうとしたけど、はがれない。
船長が引っ掛けカギを持ってきたが、はがれない。
結局、逃げられてしまった。
ーああ。
きっと、レオナルド・ダ・ビンチの『モナリザ』は、俺を見て笑っているのだ。

      
樽から溢れるタコ
とうとう来た!
ミヨシ側の2人は、これみよがしに快調であった。
まだ左舷側で釣っていないのは、ノビタと左側の大トモにいる釣り師だけ。
俺だけではない、とその時はまだそれほど焦っていなかったが、とうとう大トモの人も良形をゲット。
彼もそれを皮切りに、ポツポツ釣れ始まった。
とうとう左舷側では、ノビタだけが落ちこぼれてしまった。

念流兵法心得の一つ、
「運ハ我能(よ)ク勤メ応ズル所ニ在リ、怠(おこた)ル可(べか)ラズ」
ーあきらめるな。
 怠けるな。
 シャクレ、シャクレ。
 必ず来る。
と、自己暗示をかけてシャクっていると。
ググッと来た。
「キター」
と思ったら根掛かり。
仕掛けが1個、海の藻屑になる。

午前7時50分。
また《ググッ》と来た。
ーまた根掛かり?
ロープを弛ませてから、グッと引いてみた。
ズッシリと持ち上がった。
「キター。船長タモ!」
と叫ぶと、船長がタモを持って飛んできた。
船長が、
「ヨーシ、糸を弛ませるな!」
そして、佐々木小次郎のツバメ返しの速さで、海面に浮かんだタコを掬ってくれた。
「おお良形だ!」
と船長も、全員タコが釣れたところでホッとしたようだ。
船床を這うタコが、くやしそうに「グー」と啼いた。

事実は小説より奇なり
このあとポツリ、ポツリと来たが、海底から引き上げて来る途中でタコに逃げられることが数回あった。
天は無駄な事をしない。
ノビタが逃がした直後に、右側の釣り師と左側の釣り師が交互にタコを釣り上げるのだ。
ノビタが逃がしたタコだと思うのだが、それを証明することは出来なかった。
それでも午前11時までに4匹、それから沖上がりまでに、バタバタと4匹追加。
あと1時間延長していたら、間違いなく”つ抜け”したのでは?

7杯目のタコを、海面から引き上げようとした時だった。
例によって、
「船長!」
と叫び、タモ入れを頼むと。
船長が左側から、そしてナント!隣りの釣り師が右側から、同時にタモを海に突っ込んだのである。
《ドボーン!》《ドボーン!》
と。
隣りの釣り師は船長が来るのが2~3秒遅れたので、心配してタモを持ってきたのだ。
2人は真ん中にいるノビタが邪魔になり、互いに相手にきずかず同時にタモを入れたようだ。
タモとタモが水面で、
「ガチッ!」
と衝突し。
衝撃で針が外れ、タコがジャンプ。
そのまま遁ずらしようとしたのだが、2つのタモが挟み撃ちし、危機一髪、で御用。
1匹のタコが、2つのタモで掬い上げられたのだ。
9死に一生を得ることができなかったタコが、船床で「グフーッ、グフーッ」と泣いていた。

沖上がり
午後12時、沖上がり。
今日の竿頭は、17杯だったようだ。
ノビタの右側の人がトップだったのだろうか。
彼はタコもいっぱい釣ったが、仕掛けも随分根に掛けてロストしたようだ。
彼は仕掛けをロストする度にノビタの脇を通り、船に常備されている1個千円の仕掛けを船長から購入していたが。
おそらく6~7個は購入したのでは。

ノビタの左側の釣り師も、5~6個はロストしていたはず。
ノビタは3個仕掛けを失っただけで済んだのだが、この辺に釣果の差がついたのかも。
彼らは根掛かり覚悟で、積極的に攻めたのである。
ところが。
ノビタは根掛かりを恐れ、戦々恐々として海底を攻めていた。
ーこの違いだ。
開高健は云う、
「男が危険を冒す気力を失ったらどうなるのだ。
 生きた心地もせず、死んだ真似をして生きている、ということになるんじゃないか」
次回は、根掛かりを恐れず、もっと積極的に攻めよう。
それにしても那珂湊沖の真ダコ釣りは、絶好調だった。

本日釣果
真タコ    800~1600グラム  8杯

The END
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