2011年11月26日(土) 那珂湊沖のタコ釣り
原因不明の惨敗!
たった4匹!
敗軍の将、兵を語る
人間が混み合うさまを、”人間ジグソーパズルのようだ”と、トム・ロブ・スミスはミステリー小説『チィルド44』で表現した。
それほどではないが、あの小さい船に15人のタコ釣り師は多かった。
肩と肩が触れ合う近さで、海底にいる1匹のタコを奪いあうのだ。
ータコが誰に釣られるかって?
タコ釣りは、平等が基本の民主主義ではない。
タコ釣りとは、海底にいる1匹のタコの争奪戦である。
森羅万象、ここも勝負の世界であり、実力の世界であった。
そしておれはその競争に、完膚なきまでに敗北した。
トップ17匹。
俺、たった4匹。
毎度のことながら、トッポジージョのセリフ、
「ユーザ・ミ・デイッチ・マイ!」
訳すと、
「何ってこったい!」
を今日も叫んでしまったよ。
「お前の不幸には、訳がある」
敗因は何なのか。
ー道糸を太くしたせいか?
釣り座の位置が悪かったのか?
仕掛けの色がまずかったのか?
誘い方が悪かったのか?
頭の中は困惑悩乱、とうとうおれはアホになっちまった。
「熊にまたがり屁をこけば
りんどうの花散りゆけり
熊にまたがり空見れば
おれはアホかと思われる」
(坂田寛夫)
BGM
みじめな敗北を被ったこんな日は、シャリー・バッシーの『Yesterday, When I Was Young(若かったあの頃)』を聞きたくなる。
ウイスキーをチビリ、チビリすすりながら、一人夜更けに聞くこの歌。
シャリー・バッシーの声も抜群だが、歌詞にも身につまされ、ーああ。深いため息が・・・。
歌詞の和訳は、おなじみのKeiさん。
「若かったあの頃
舌を潤す雨のように 人生は甘かった
私は愚かな遊戯のように
人生を弄(もてあそ)んだ
黄昏の微風が蝋燭(ろうそく)の
炎を揺らすように幾千もの夢を見
果てしない企てをした
砂上に築いてはいつも城は崩れ
夜に生き むき出しの陽光を避けた
今になって知る何という月日の早さ
・・・」
何を狙う?堤防の釣り人
満員御礼
那珂湊港に着いたのは、午前3時20分。
港はまだ闇の中の静寂に。
寒かった!
西からの凍風が身に沁みた。
堤防の外側を洗う波の音は、ザブーン、ザブーンと静か、予報通り今日の海は凪のようだ。
これが、波が高い時はドドーン、ドドーンと堤防で砕ける音が大きくなる。
すでに釣り船の前に、4台の車が止まっていた。
釣り座は早いもの勝ちなので、遠方から来る人は徹夜で場所を取りに来るようだ。
ノビタが希望する釣り座は空いていたのでそこに荷物を置き、寒さをしのぐためコインランドリーに行って時間をつぶした。
午前5時半に船着き場に戻ってくると、船の釣り座は客の荷物で埋まっていた。
本日、釣り客はノビタを含め15人、満員御礼状態である。
タコ釣り日和だったのに
浅場の岩礁地帯で
午前6時。
出船。
黒々と伸びる那珂湊港の堤防の上に、釣り人が杭のように点・・・と立っていた。
外洋は真っ平らだった。
はじめ港を出てすぐの所で10分ほど狙ったが、アタリ無し。
場所を北に向かって10分ほど行った浅場に変更。
そこには、すでに5隻のタコ釣り船が点在していた。
水深5メートルの岩礁地帯で、めちゃくちゃ根掛かりする所、一人5~10個の仕掛けを失ったのではないか。
ノビタもこれまでの最高、4個の仕掛けを岩礁に食われてしまった。
苦戦
午前6時20分。
戦闘開始。
一斉に、《ドボーン、ドボーン、ドボーン・・・》とタコ天仕掛けを海に投入。
と同時に、バタバタ・・・とタコが釣れはじまった。
ノビタには来ない。
10分、20分、30分、40分・・・。
まるでアタリなし。
周囲では、ポツリ、ポツリだが釣れているというのに。
周囲はタコ釣り船ばかり
午前7時45分。
やっと餅が粘りついたような、《グニュ》の感触が道糸を掴む手に。
針掛かりを確かなものにするため、そのまま頭の中でカウントアップ、1、2、3、4、5・・・10。
「ソレーッ!」
と、一気に道糸をたぐりよせ、そのまま船上へ。
はじめの1匹は、1.6キロのまあまあサイズであった。
この時。
これからおれが主役の舞台だと、思ったのだが・・・。
終章
このあと。
小物1匹と、まずまずサイズを2匹追加しただけ。
ーマイッター!
本日釣果
真タコ 0.5~1.6キロ 4匹
The END
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