2015年3月18日(水) 曇りのち晴れ
       那珂湊 海水温  9.2度
  那珂湊港の潮汐 中潮 満潮 14:06  干潮 08:24
ノビタの釣り天国

       
2015年3月18日(水) 午前6時10分~午後0時10分 大洗沖


     
  なぜ上針に掛からない?


                                      
38、39、40センチの3匹
試行錯誤の仕掛け

昨年の7月から、
「あの手この手の 思案を胸に
 仕掛けを作り 9ケ月過ぎた
 馬鹿な考え休むに似たりと 言うかみさん
 つくる笑顔が 憎たらしい
(『王将』の替え歌)
なんてぼやきつつ、沖のマコカレイ戦をイン・ドア・フイッシングシしていた。

勝負する仕掛けは完全オリジナル。
ああでもないこでもないと試行錯誤を繰り返し。
いつの間にか玩物喪志に陥り、仕掛け作りに魂が囚われていた。
分別過ぎれば愚に返る、その仕掛け愚なのか秀なのか、それを試す日を待ち焦がれていると。
最近、鹿島灘沖でポチポチ座布団が釣れだした情報が。
春がその時を運んできたのだ。

爽やかな朝
3月18日、早朝。
昨夜は、一晩中頭の中が祭りのような明るさで、一睡もできなかった。
寝不足だが、気力はパチパチと放電していた。
春とは言へまだ肌寒い。
冬用の防寒着にするか、春用のフイッシングウエアにするか迷ったが。
今日の予想最高気温は14度、結局、春用のフイッシングウエアを着ていくことにした。
晦冥の道路を、ロシナンテに跨り那珂湊に向かって走った。
ー良かった!
寒さを感じない、風がむしろ爽やかだ。
時々、目前に亡霊のたましいのような白い靄がせまり後ろに消えて行く。

          
ベタ凪
釣り座の位置
午前、4時10分。
那珂湊港にとうちゃこ。
闇に包まれた船着き場、車が一台エンジンをかけたまま止まっていた。
先客は右舷ミヨシに荷物を置いていた。
おれは右舷のトモで釣ることにした。
釣り座、少なからず釣果を左右する。
ーほんとだよ!

その日の潮の流れや風向きで、船の流れる向き(前か後か)が変化し、カレイが釣れる順が変わるそうな。
詳しい解説は飛ばす。
とにかく竿の下にカレイがいるかどうか。
名人だって相手のいない相撲はとれない。
でも船が流される方向なんて、だれも予測できやしない。
時間とともに変化する時もある。
このような神のみぞ知る釣り座を、どうのようにして選ぶ?
自分も含め多くの人は過去に良い思いをした場所か、よく釣れていた釣り座を選ぶ。
あとは運まかせだ。
残り物には福があるで、あとから来た人が大当たりする時だってある。
だから、釣り座は気にしてもしかたがないのかも。

                                      
        湖のような海で
出船前
ヘッドランプの灯りで釣りの準備をしていると、
「おはよう!」
と言いながら闇の中から手を振っているのは、小美玉市のスズキさんだ。
彼はおれの隣り、右舷の中央に釣り座を確保した。
彼もペテランだ。
彼が言うには、右舷の先端に釣り座をとったのは埼玉の名人だそうな。
左舷に女性アングラ一人と男性アングラ一人が乗った、二人とも百戦錬磨のペテラン風だった。
今日は、5人乗船したことになる。

夜が白々と明けた5時20分、船長到着。
近藤勇のような強面(こわもて)の船長が、
「おはよう」
と言いながら船に乗り込んできた。
根は良い人間なのだが、何か聞くと怒られたような気分になる時もある。
こんな船長だが船代を徴収するときは、
「お客さまは神さまです」の三波春夫に変化し、満面ニコニコ顔になる。
いつも三波春夫でいてもらいたい。

船長に餌をもらいに行き、
「今日は5匹が目標だけど・・・」
とハードルを下げたのだが、
「あまり期待しない方が良いよ」
と言われてしまった。
昨夜、一睡もしなかった戦意が一瞬少し冷めかかったが。
「安定は情熱を殺し、不安は情熱をかきたてる」
(プルースト)
9ケ月待ち焦がれた闘志は、そう簡単には冷めなかった。

そして出船
午前5時半、出船。
外洋は波もなく風もなく穏やかだった。
海上は白い靄で覆われ、陽は隠れていたが暖かく。
最高の釣り日和だった。
これで釣れれば・・・。

船は一路、南下して行った。
航程30分ほどで現場に着いた。
午前6時10分、一振り入魂の第一投。
水深メーター付きのリールが示した水深は40メートル。
海底は砂地で、錘で小突くたびにズ、ズ、ズの感触が竿を持つ手に返ってくる。
船は2回ほど移動したが、アタリなし。

船は再び20分ほど南下した。
そこで、右舷船首の名人が20センチほどのムシガレイを釣り上げたのが、船中はじめの1匹であった。
小刻みに小突いたり、時には大きく竿をシャクッたり。
船長の話しでは、底潮は5度と真冬並みの低さで喰いが悪いと言う。
考えてみれば彼らは真冬でも素っ裸なのだ。
UNIQLOのヒートテックを着ているわけでもなく、羽毛布団にくるまっているわけでもなく。
真冬の荒野で素っ裸で凍えている時に、サーロインステーキを目の前に出されたようなもの。
凍えて口が開かず、サーロインステーキを眺めながら喰いたくても食えない無念に涙を流す。
これは厳しい釣りになりそうだ。

   
ひねもすのたりのたりかな
はじめの1匹
午前7時20分。
釣りを開始してから1時間10経過していた。
精神のゴムが弛み、惰性的に海底を小突いていると、ククッと微かに海底からの応答を受信。
お頭の中にハテナマークが湧いた。
1~2秒おいて竿先を少し持ち上げてみた。
「ノー・アイ・ナーダ。
  何もないったら何もない(中米コスタリカの言葉)」
ーあのククッは気のせいだったのか?

少し間を置いて、また竿先を持ち上げてみた。
その時だ。
いきなりドドーン、ドドーン、ドドーン。
と、百雷一度に落ちたような衝撃が、竿を持つ手に伝わってきた。
リールを巻くとググッググッググッと強烈に引き込む。
「キターーー」
となりのスズキさんが、
「船長、マコだマコだタモタモタモ」
と船長を呼んでくれた。
船長にタモ入れしてもらい即、メジャーで計ると、39センチ。
待望の1匹だったが、「めでたさも ちゅうくらいなり はじめの1匹」であった。
おれの作成した仕掛けは、上針重視の仕掛けではじめの1匹は一番上の針に掛かるはずであった。
それがおれの意図を裏切り、3本針の真ん中に掛かったのだ。
理由がよくわからんばい。

お祭りしたカレイ
午前7時40分。
海底を小刻みに小突いていると、微かにククッと応答が返ってきた。
そのまま小突くと、またククッと応答が返ってきた。
「・・・?」
そろそろと竿先を持ち上げると、ドドーンとまたも百雷の衝撃が。
追撃を何度も受け、ハラハラドキドキさせながら浮上させたカレイ。
船長がタモ入れしようとすると、船の後方に勢いよく走っていく。
まてまてコラッと引き寄せようとすると、ますます逆らって逃げていく。
いきなり、
「お祭りだ、糸を出せ出せ」
と船長が船の反対側に向かって叫んだ。
反対側の釣り師とおまつりし、引っ張られていたのだ。
無事、船長にタモ入れしてもらったのは38センチのマコガレイだった。
これも不思議なことに、3本針の真ん中の針に掛かっていた。
                                            
      フグが友情出演
そして最後に
このあとが続かない。
「春の海
 ひねもす のたりのたりかな」(与謝蕪村)
と竿を持ちながら眠気に襲われていた。
24~5センチのフグやムシガレイがときどき友情出演するだけの時が過ぎていく。
と・・・。
午前9時半。
右舷ミヨシの名人が35~6センチのマコガレイのダブルを引き上げ。
その直後、隣りのスズキさんもダブルを引き上げた。
今度はおれだと構えたが、とうとうおれには来なかった。
どうやら船が前の方に流れていて、隣りのスズキさんのところでカレイは尽きたようだ。
10時ころに隣りのスズキさんが32センチを1匹追釣したあと、また海は沈黙してしまった。
11時半。
ひさびさにコツコツと小さい応答。
船長にタモ入れしてもらったのは、この日最大の40センチ。
これも我が意図に反して、3本針仕掛けの一番下、3本目の針に掛かっていた。
この謎を解明しないと、次に活かされないと思ったのだが・・・。
それにしてもマコガレイ、奥が深い。

午後0時15分、沖上がり。
この日、左舷側の二人はボーズを食らってしまった。
右舷側は、船の先頭側にいた名人が2匹、となりのスズキさんが3匹。
そしておれが、38、39、40センチの3匹。

本日釣果
マコガレイ    38~40センチ   3匹
ムシガレイ     24センチ     1匹
ショウサイフグ   26センチ     2匹(リリース)

The END
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