![]() 2018年4月13日(金) 午前5時40分~午後12時 那珂湊のカレイ戦 敗戦の将兵を語る マコガレイ4匹とムシガレイ6匹 ![]() 名人と再会 那珂湊港に着いたのは午前5時。 冷たい西風が吹いていて寒かった。 しきりに鼻水が出る。 でも凍死するほどではない。 夜は明けていた。 今日もつれたか丸に乗った。 オレンジ色のカッパを着た釣り士が、船に荷を運んでいた。 ーこむさんだ! ほぼ1年ぶりの再会だ。 カレイ釣りの名人で、地元で彼を知らない人はもぐりと言われる。 いつか彼を超えたいと思っているけど、その可能性はない。 でもあきらめない。 我が座右の銘は、 「人生における失敗者の多くは、諦めた時、 どれだけ成功に近づいていたかに気づかなかった人である」 (トーマス・エジソン) ーボーズよ大志を抱け! 初めは静かな海だったのに ![]() 午前5時20分、出港。 今日の釣戦者は、自分を含め7人。 いずれもその装備からペテランのアスリートと見た。 船で狙うマコガレイ釣り士は、個人的にアスリート(競技者)とみなしている。 おそらく将来はオリンピックの種目になると思っている。 その時のために俺は努力する。 だから沖のカレイ釣り士は、すべて俺のライバルになる。 ーああ、今日も燃える、闘志が燃える、俺の胸の中で。 風が強く、うねりがあるので竿は1.8メートルの長めの7:3調子とし。 仕掛けも長めの3本針仕掛け、錘は50号にした(普段は40号)。 港を出ると思ったより波も低いと思ったのだが・・・。 航走15分。 那珂湊沖の戦場に到着。 着くと同時に、ザブーンと波の洗礼を受けた。 午前5時40分、釣り開始。 風はひゅる ひゅる 波はざんぶりこ、と歌の文句のような荒海になった。 右舷側は俺を中央に、3人ならんだ。 開始から10分、右舷大トモの釣り士が20センチほどの木端ガレイ(ムシ)を釣った。 これが海の初めのおもてなし。 船の揺れはしだいに大きくなり、立って竿持つのが困難になってきた。 荒れる海で ![]() 1時間経過。 午前6時50分。 海底を小突く動きに、突然マッタ!がかかった。 直後に、 ーククッ、ククッ、ククッ。 とマコさまの引きが。 はじめの1匹は、25センチほどの小ぶりなマコさまだった。 このあと海は再び沈黙。 午前7時15分、気分転換にスネーク天秤を、L型天秤の3本針仕掛けに変えてみた。 特に理由はない。 7時40分に30センチオーバーのマコガレイがきた。 このあと9時までに25センチ前後のムシガレイを2匹追釣。 風はますます強くなり、丘のような波が船を押し上げ押し下げし。 潮の流れもきつく、50号の錘は海底を離脱してフワフワ流されていく。 今日は、初めから最後まで右舷から左舷に潮が流れ、仕掛けも右舷から左舷に流された。 潮の流れが速くなると、道糸が船底を擦るので慌てて道糸を巻き戻し、潮がゆるくなるまでロッドキーパーに置き竿にして待つ。 今日はこの繰り返し。 このロスが、ボデイブローのように俺の足を引っ張ったと思う。(言い訳ではないヨ) 伏兵ども ![]() 風が泣き、波が喚き、船が揺れる。 こんなシチュエーションでは、頭の中の感応式探知機がまともに働かず、合わせずらい。 宮本武蔵は、それでも敵の動きを読めと云う。 「敵の見かけは虚像であり、虚像に目を眩(くら)まされずに実像を看破しなければならない。 いかなる相手に対してもいかなる状況に置かれても、驚かず、恐れず、疑わず、惑わずの心を保って敵の機先を制する」 でもね、頭の中の感応式探知機が誤作動しているのに、合わせるなんて無理な話し。 合わせも困難だったけど、伏兵も多かった。 やはりフグが邪魔をした。 牡丹に唐獅子、竹に虎、そしてカレイにフグは付き物だけど。 今日はフグを7匹も駆除した。 おまけに40センチクラスのネコザメ2匹。 てっきりタコだと一瞬喜んだけど、浮上したのは石だった。 いつもの時刻 午前9時10分。 風や波の雑音の中から確かな信号をひろった。 マコさまの応答だ。 船上に上がったのは36センチのマコさまだった。 この時点で、こむさんはマコさま7匹を釣っていた。 そろそろいつもなら、運命の分岐点である。 いつもこの時刻を過ぎると、どういうわけか俺は釣れなくなる。 ところが今日はその時間が延びている。 午前9時45分までに、20~34センチのムシガレイを2匹追釣。 そして、午前10時5分に、35センチのマコさま1匹を追釣した。 そのあとは、食い逃げの名手、フグのアタリがたまに届くだけ。 隣りの船は0~9匹 ![]() 午前11時50分。 ラス前10分。 速い潮の流れに、道糸を出したり巻いたりしながら海底を小突いていた。 神経は、弛んだゴムのようにすっかり伸び切っていた。 その時だ。 いきなりガタガタガタ・・・と、海底から怒気が届く。 一瞬にして眠気がはじけ飛んだ。 3~4秒の間を置いて、竿先をゆっくり持ち上げ聞きあわせると。 ググッ、ググッ、ググッと、激しく竿先を叩きのめす。 これぞ極上の夢、至福の一撃。 猛々しく勇猛、圧倒する反撃は間違いなくマコさまだ。 中国の諺に、 「三日楽しむなら豚を殺して食べなさい。 1週間楽しみたかったら結婚しなさい。 一生楽しみたかったら釣りを覚えなさい」 がある。 まさに釣りは極上の暇つぶし。 ![]() タモで掬うかと一瞬、思ったがそのまま海面からエーイッ!と引き抜くと。 おりしも、大波が沈むタイミングと重なった。 引き波の強烈な反動が、マコさまを救った。 マコさまの口から針が飛び出し、マコさまは海中に消えた。 神は与えそして奪う。 まるで空に向かって跳ねたカエルが、いきなり地上に叩き落とされ脳震盪を起こしたような衝撃だった。 しばらくボーゼン自失。 慌てて仕掛けを海に返したが、時すでに遅し。 直後に、船長の終了宣言。 終章 こむさんはマコガレイ8匹とムシを6匹、今日も彼に及ばかった。 でもそのこむさんに、次回頑張りま賞とマコさまを5匹頂く。 王者の余裕か、感謝、感謝である。 彼がトップだと思ったら、頸椎を損傷し通院中の東海村の読者が、海底を小突けない体でマコガレイ11匹を仕留め本日の竿頭。 カレイ釣りは海底を小突くセオリーを覆す、目から鱗が落ちる釣法である。 うーん、今後の参考にしよう。 結果はどうであれ、今日も粉骨砕身、燃えつきて真っ白な灰になった。 夕刻、風呂上り、今日も島崎藤村の『酔歌』を口ずさみながら缶ビールを飲む。 「甲斐なきことを嘆くより、きたりて美(うま)き酒に泣け」 ーああ。 本日釣果 マコガレイ 25~36センチ 4匹 ムシガレイ 20~35センチ 6匹 The END |