 ２０２１年１２月２８日（火） 午前５時５０分～午後１２時 那珂湊沖でタコ釣り  終わりよければ全て良し孫と２．８キロのタコ１匹  タコを釣りたいシベリアから寒波が到来し、日本海側は大雪に埋もれた。 大雪を落とした西風が、アルプスを越えて太平洋側をこの冬一番に冷やしている。 海も波高く、釣りへの意欲を削ぎとられる日々だ。 でも、タコのスーパーでの値はどんどん高くなり、庶民の手が出せなくなった。 ここで一発、かみさんを喜ばせたい。 そして。 巨大タコを海底で掛ける歓喜、それは山師が１０年かけて金鉱を探りあてたような感動を味わいたい。 ーラッキーストライク、アゲイン！ 今年彼岸に旅立ったエレキギターの寺内タカシが云った。 「ギターは弾かなきゃ音が出ない」 釣りにいかなきゃタコは獲れないのだ。 死は確実に近づいている。 今やらなきゃ先はない、と出撃した。  午前４時、玄関を出て外に出た。夜空にバナナのような月が浮かび、その廻りに星がポツポツと点在している。 西よりの冷たい風に、一瞬ブルッと体が震えた。 気合をかけずにいられよか。 ー敵は那珂湊沖にあり、エイエイオーッ！ 凍てつく空気を破るように、白く伸びるアスファルトを飛んだ。 手指も、足指もガチガチに痺れ感覚がない、ヘルメットの中の顔も固まっていた。 航程１５分の那珂湊沖 午前４時半、闇に沈む船着き場に着く。 埼玉、横浜、川崎、足立、栃木など各地から集まった車がエンジンをかけたまま停車している。 午前５時半出港。 一攫千金を夢見る、タコ釣りの猛者２０名ほどが乗船。 港を出ると、船は真っ直ぐ那珂湊沖へ。 船の灯りに照らせれ小波に覆われた海は、以外と穏やかであった。 港を出て１５分ほどで釣り場に到着した。 今日も絶好の釣り日和  午前５時５０分、釣り開始。沈黙の海だ。 人の声も聞こえない。 釣り師全員、黙々と水深２７メートルの海底を小突いている。 潮の流れがきつく道糸が沖に流されていく。 リールに表示される道糸の長さは３５メートルを超えた。 置き竿にして潮の流れが緩むのを待った。 午前６時１０分。 隣りの釣戦者が４００グラムほどのタコを釣り上げた。 ー俺が狙うのはそんな小物じゃない。 と心の中でつぶやいた。 ポツリポツリと３０分間隔で誰かがタコを釣っていた。  船長の一言午前７時半。 それまで吹いていた冷たい西風が、おさまり今日も絶好の釣り日和になった。 でも海底からは何の異変も伝わってこない。 １時間、２時間、３時間・・・。 船長が様子を見にきた。 「どう、釣れた？」 「まだです。今日は大ダコを狙おうとサンマを付けたテンヤ仕掛けなんですがね・・・」 「錘は何号使ってるの？」 「１００号です」 「今日は潮の流れがきついからそれでは仕掛けが浮くな（錘が海底から離れること）、もう少し重くした方が良いよ」 この船長を俺は絶対的に信用している。 何度も仕掛けについてアドバイスしてもらい、その適格性に感服している。 それだけではない、釣り上げたタコを一目見てその重さを言い当てる、その誤差は１００グラムグラム以内である。 そしてその時がきた 船長の指示どおり錘を１００号から１２０号に替えて、ドボーン再度仕掛けを海に投入した。 その直後だった。 午前９時１０分。 潮の流れ」がきつくゴムバンドで引っ張られるようにギューンと道糸が右に流されていく。 それを引き戻そうと竿を立てようとした。 その時だ。 仕掛けが車のタイヤを引っ掛けたように異常に重くなった。 そのまま竿を持ち上げようとすると、未確認物体が海底で少し浮く感じがした。 ータコだ！ 「船長ーーー！」 大声で船長を呼んだ。 これは前回、釣戦時、海面まで引き上げたタコゴボウ抜きした時に、バラしてしまい。 かけつけた船長にタコを掛けたら大声で呼べと言われたからだ。 満員の船で大声を上げると、次々と釣り客が船長を呼んでいる。 まるで俺の声がこだましているようだった。  タコが水面に浮上した。笠を広げたように８本の足を海面に広げてタコが浮上した。 ー大きかった！ スタッフがギャフを持って駆けつけ、難なく船に引き上げた。 船上を這う大ダコ。 ３時間待ったかいがあった。 一陽来復。 ーああ、ここに君がいる幸せ。 遅れてきた船長が、 「３キロは超えていないな、２．８キロかな」 この後、計量すると２．８キロだった。 おそるべしその鑑識。 納竿 この後はなかった。 ２．８キロで満足した俺は、さほどタコへの執着心もなく竿を出していた。 午後１２時、納竿。 今日の狙いは数ではなく、メガタコだった。 メガタコとは呼べないけれど、２．８キロ、今年最大のタコに満足した。 終わり良ければ、全て良しさ。 翌日、スーパーにいって湯でタコの値段を見たら、７５０グラム１パックが２８００円であった。 それを見てまたまた胸のかかで拍手。 本日釣果 タコ ２．８キロ １匹 Ｔｈｅ ＥＮＤ |