2003年12月5日(金)三流の釣り場
   午後8時半〜午後11時        

     狙い外れの釣果


氷雨降る戦場へ                 高級な寿司ネタ
街灯の淡い灯りが、車の無い駐車場をボーッと照らしていた。
さすがにこんな、曇天、寒空の下で、夜釣りをする様な気狂いはいないようだ。

光が届かない、闇が支配する区域を、ヘッドランプの灯りを頼りに進んで行った。
今にも崩れ落ちそうな重そうな空から、パラパラと氷雨が降りそそぐ。
水溜まりが、数箇所に有った。
避けられない所は、ズブズブと水溜まりの中に入って行く。

モクモクと足を運んでいると。
いつもの塊が、脳裏に形を表してきた。
体内に澱み、沈殿し、積み重なった陰隠滅滅した塊だ。
有為転変の中、塊は毬藻のように成長して行き。
もはや土崩瓦解か。
人間一生三万日、なるようにしかならん。
「あしたに道を聞かば夕べに死すとも可なり」(論語)
幸いなるかな、まだ道を知らない。

無人の堤防
三流の釣り場は、遠方からの微かな光りに、薄くその姿を表し。
満目蕭状の中にあった。
全身を耳にして、釣りの準備を始めると。
ザバッ!と、波がテトラで弾ける音が。
微かに流れる北風が、ガサガサと何処かでビニール袋を揺らす。
その都度、心臓が轟き、闇を振り返った。

磯1号、5.4メートル竿を出し、胴付き針3本仕掛に青イソメを付け、メバルを狙うことに。
第一投は、午後8時45分。
それから1分もしないうちに根掛かり、仕掛を電気浮子もろとも失った。
哀し。

フイッシュオン!
午後9時20分、魚の反応が無いので場所を移動。
堤防際から黒く海上に伸びるテトラ。
その足元は、ブラックホールのように濃い闇がまとわりついている。
その濃い闇から、4〜5メートルほど離れた所に仕掛を落とした。
浮子の黄色い灯りが、海面に直立したところで、リールを巻いて道糸の弛みを取り。
そのままゆっくりと竿を起こし、海中の仕掛を引き寄せる。
森羅万象、逃げる者を追う本能を利用した誘いだ。
引きの力で、電気浮子の黄色灯りが、海中に沈んだ。

突然、クイ、クイ、クイ、と海底から道糸を引く応答が。
竿をハネた。
「フイッシュ、オン!♪」
浮子釣りの手応えは、半年ぶりだ。
快感が全身に満ち、脳裏から黒い塊が亀裂し、粉砕し、霧消した。
逃げようとする敵に。
「ガンバレーーー」
と呼びかける。
お前は逃げる。俺は追う。
でも俺とお前は、紐で結ばれた一体さ。
これも運命、南無阿弥陀仏。

敵を堤防の際まで引き寄せ、そのまま堤防の上に。
始めの一匹は、21センチの海タナゴだった。
狙いは外れたが、嬉しい1匹だ。

私が先に
まるでこの時を待っていたかのように。
チロリーン♪とポケットの中で、携帯電話が鳴った。
ドラえもんさんから、駐車場に着いたの連絡だった。
「釣れましたよ!」
と彼の気持ちを、あおいだが聞きとれたか。

この後、意気大いに上がり、ソーレッ!と仕掛を再投入すると。
待ってましたとばかりに、クイクイクイと魚の反応が。
今度は17センチと、小振りの海タナゴだった。
暗い闇から人が近ずいて来る。
声をかけると、ドラえもんさんだった。

一時、小振りになった雨が、また勢いを増して来た。
ドラえもんさんも、ちょっとためらったようだが、すぐ気を取り直し、隣りで釣りを開始した。
「それでは悪いですが、お先に尺メバルを」
と、自信あり気に第一投。
すぐ「アッ逃げた」と竿を上げ、首をかしげながら仕掛を点検している。
餌だけかじられたようだ。
この動作を、数回繰り返していた。
名人も木から落ち、筆を誤るのかと、嬉しくなる。

納竿
ノビタも、何度かアタリを感知したが、針掛かりせず。
何度目か、手応え有りと堤防に引き上げると、魚がウニになっていた。
「高級ネタを釣りましたね」
とドラえもんさんが笑ったので、進呈しますよと言うと、大慌てでウニは駄目なんですと、手を振った。

ドラえもんさんが、
「大きい奴をブラ下げて来ますと」
竿を持って、暗い闇に消えて行った。
そのドラえもんさんが、午後11時近く、空振りで戻って来た頃から、雨足が強くなり撤退することに。
帰りは、ドラえもんさんに家まで届けてもらった。
                              
本日釣果

本日釣果
海タナゴ  21センチ 1匹、17センチ1匹ウニ 1個 ーーーリリース




The End
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