2007年10月19日(金) 湊寄り
               午前5時50分〜午前10時10分
ノビタの釣り天国



     なんとか一杯ゲット
   

                          
             神秘的な夜明け
夜明け
黎明(れいめい)。
駐車場から海へ向かう。
黒い雲が覆う暗鬱な空の下。
うす闇に伸びる灰色の道を、灯りをつけずに歩いて行く。
前方に境の無い墨色の空と海があった。
進んで行くうちに、海上に横たわる雲海が横一文字に裂け。
その隙間を、朝の陽光がオレンジ色に染めた。
神秘的な夜明けである。

北風がバタバタと吹いていた。
寒さは感じないが、釣りはやりにくそうだ。
釣り場に近ずくころには、すっかり夜が明けていた。
釣り人が3人、風の中でやりにくそうに竿を振っている。
アジ釣りとルアーマンのようだ。
タコ釣りは一人もいない。ーホッ(タコ釣りは貸切だ)。

ナンタル・サンタル・チア
早速、タコ釣りの準備をはじめた。
釣りを開始したのは、午前5時50分。
サンマを結わえたタコ天仕掛けを、ドボーン!と海底に沈め。
仕掛けが海底を転がる信号に全神経を集中しながら、ゆっくりと海底を探って行く。

と・・・。
午前5時58分。
開始したポイントから30メートルほど進んだ所で、
ーピタッ!
と仕掛けが停止した。

ー・・・う?!
反射的にガーン!と、竿をハネ上げた。
ー持ち上がった、重い!
ガン、ガン、ガン、と竿を煽りながら、
「ギリギリギリ・・・」
とリールを巻く。
錘負荷100号、全長3.6メートルの沖竿が、満月のように曲がった。
心臓が、ドドーン、ドドーン、ドドーン・・・と激しく弾んだ。
そうして、とうとう敵が海面に、
ー大きい!

海面に広がった茶色の大風呂敷は、幅1.2メートルもあろうか。
堤防上から海面まで約6メートル、抜き上げなくてはならない。
不安が頭の中一杯に、
ーやるしかない。
と覚悟。
「南無八幡台菩薩!」
エーイッ!、タコを海面から引き抜いた。
大空に舞い上がった大タコが、8本の足をバタバタさせながら上がって来る。
水面から5メートルほど上昇、と・・・仕掛けとタコが分離し、
「サヨウナラ サヨウナラ
 元気でいてね♪」
と大タコは海へ、ボチャーン!。
と始めの一杯は、”一敗地に塗(まみ)れ”、切歯扼腕したのである。

やっと・・・
しばらくはボーゼン自失、堤防の上に腰を下ろし空を見上げていた。
雲が割れて、青い空が広がり。
斜めに射す朝日が、港を赤く染めていた。

中国の于武陵(西暦810年頃)が書いた『勧酒』という詩がある。
「 勧君金屈巵  君に勧む金屈巵(きんくつし)
 満酌不須辞  満酌(まんしゃく) 辞するを須(もち)いず
 花発多風雨  花発(はなひら)いて  風雨多し
 人生足別離  人生 別離足(べつりた)る 」

この詩の井伏鱒二の名訳が有名だ。
「 コノサカズキヲ ウケテクレ
 ドウゾナミナミ ツガシテクレ
 ハナニアラシノ タトヘモアルゾ
 「サヨナラ」ダケガ 人生ダ」

「さよなら」だけが人生とは、あきらめきれず。
タコが落ちた周囲を何度も何度も、大タコを探したのだが・・・、結局、最後まで行方不明のままだった。

気を取り直し、また次なるタコを求めて、1時間、2時間、3時間。
「虚仮の一念、岩をも通す」と、モクモクとタコを探っていた。
そしてとうとう。
午前9時10分だった。
再び仕掛けが海底に吸着した。
今度は持ち上がらない。

道糸を弛ませ、置き竿にしたまま5分ほど放置したあと、ガーン!と思いっきり竿を振り上げると持ち上がった。
漬物石を持ち上げるような重量感、この衝撃、この感触、この光輝、が劇的でたまらない。
海面に広がる茶色い風呂敷、また試練の時だったが、今度は無事堤防の上に引き上げた。
重さは1.6キロあった。
逃げたタコは、この2倍はあったのでは・・・。
またまたくやしさが蘇るのだった。

納竿
タコ釣りでボーズになることは、10回のうち1回くらいである。
この自信を維持したいと今日も頑張り、なんとかボーズを逃れたこともあり、潮の流れも止まった午前10時10分、納竿。

本日釣果
真タコ  1.6キロ  1杯



















The END
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