2007年10月31日(水) 日立港沖堤防
                 午前6時50分〜昼12時半
ノビタの釣り天国



      こんな日もあるさ
   

                          
             青い空、白い雲
悲しい釣果
聞くも涙、語るも涙。
の近松半二の書いた、
人形浄瑠璃『傾城阿波の鳴門』の一場面、

(母 お弓)
「して、その親達の名は何というぞいの」
(娘 お鶴)
「あい、ととさまの名は十郎兵衛。
 かかさまの名はお弓と申します」
(母 お弓)
「あ、これこれ。ととさまは十郎兵衛、かかさまはお弓。
 三つの年別れて、ばばさまに育てられてゐたとは、疑ひもないわがむすめ」
 と、見れば見るほど幼顔、見覚えのある額のほくろ、
「やれ我子か、なつかしや」
(このあと娘お鶴は、実の父親に誤って殺されてしまう話し)

ではないが。
ノビタの今日の話しも、涙なくしては聞けない話し。ーああ。

今日もお知り合いに
夜明け前。
まだ外は真っ暗だった。
日立フイッシングセンターサウス店に入り、Eー子さんとノビタの本の話しをしていると、
「わたしもサイン入りの本を買いました」
と店にいたお客が。
どこかで見た顔である。
あとで気ずいたのだが、日立フイッシングセンターのHPによく登場するKさんだった。

本を買って頂いたと聞き、急に親しみがわき(ノビタは現金である)話しをすると、彼はノビタの釣り日誌を、ほとんど見ているようだった。
そこに、先日知りあった栃木のタコ釣り名人が。
彼らと、日立フイッシングセンターの船に乗った時には、すっかり夜が明けていた。
今日はKさんが南端で、栃木の名人とノビタは中央で下船。
栃木の名人は南へ、ノビタは北へ、これが運命の別れ目だった。
この時、神様は知らん顔、ーうらめしい。

北へ向かおうとすると、日立フイッシングセンターのYさんに声をかけられた。
彼はルアーで、ヒラメを狙うと言う。
早く釣りを開始したかったので、挨拶もそこそこにYさんと別れる。

         
北側は閑散
期待で一杯
いつもの所で大タコが、「おいで、おいで」をしているような気がして。
飛ぶように先を急いだ。
「行くかなくちゃ
 君に逢いに行くかなくちゃ♪」
    (『傘がない』by 井上陽水)
と気持ちは恋人に逢いに行くような・・・。

海が時化て1週間ぶりの沖堤渡船である。
この間にタコが三波春夫の、
「こんにちわ こんにちわ
      世界の国から〜♪」
を歌いながら、ゾロゾロと沖堤の廻りに集結しているような気がしてならなかった。
”山高ければ谷深し”、この期待が失望を倍加したのである。

始めの一杯
釣りを開始したのは、午前6時50分。
今日も透き通るような秋晴れだ。
空は青く高く。
白い雲が、マリン・ブルーの空に映える。
北西から、爽やかな微風が吹いていた。
海の色は菜っ葉色だったが、気にするほどではない。
暖かいので、セーターは脱いだ。

「もし、もし、もし、もし、点、点、点、点、点。
 お元気ですか?」
と海底を、タコ天仕掛けで小突いて行く。
10分、20分、30分・・・、まるで応答がない。

午前7時半。
と・・・。
仕掛けが、海底で海草に絡んだ感触。
ガン!と竿を振り上げると、まとわりつくような粘っこい引き。
竿を上げ下げし、全力でリールを巻いた。
海草のような物が、ジワジワと上昇してくる。
「・・・・・ひょっとして?!」
血が騒ぐ、心臓の鼓動がドッキン、ドッキンと聞こえてくる。
そして、とうとう水面に茶色い風呂敷が。
                                    
  昼過ぎの堤防
この瞬間、
「ハーレルヤ、ハーレルヤ♪」
の大合唱が。
そして、
「南無帰命頂来毘沙門天!
(なむ きみょう ちょうらい びしゃもんてん)」
一気に海面から堤防の上に引き上げた。
はじめの1杯は1.8キロ(真タコ)、まあまあサイズだった。

悲劇の終幕
このあと1時間、2時間、3時間、4時間・・・・。
もうどれほど歩いたであろう。
足も重くなり、意識も朦朧とし。
ユラユラ揺れている海草が、タコの足に見えてきて・・・。
惰性にまかせ、タコを探っていた。

午後12時20分だった。
海底でブレーキが。
ーまた根掛かり?
と竿を大きく煽ると、持ち上がった。

ー海草が絡んでいるのか?
と思いつつ強引に引き上げてくる。
そしてタコが水面に。
なぜか不安が一閃、二閃、水面から一気に引き上げようとすると。
当然と言えば当然、まさかと思えばまさか。
タコが水面で仕掛けを離し、アッと言う間にドロン!。

ー悪夢だ!
心臓が口からはみ出しそうになる。
チャイコフスキーの交響曲第6番ロ短調作品74『悲愴(ひそう)』が厳かに天に鳴り響く。
哀怨にして悲痛、悲惨にして苛烈。ーああ。
「わたしバカよね おバカさんよね♪」
と我が身の愚かさを呪ったが、あとの祭り。

        
外海はうねりが
納竿
午後12時半、精も魂も尽き果てて納竿。
この日、南から中央で釣った人は、8〜10杯ほど釣ったらしい。

帰りの船で、また日立フイッシングセンターのYさんと一緒になる。
聞くと、彼も堤防を枕に討ち死にしたそうな。
お互い、
「運命は切り拓くものではなく、受け入れるものである」(佐野洋子)
と、あきらめた方がよろしいのか。

本日釣果
  真タコ  1.8キロ  1ハイ





















The END
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