タコはまだまだ健在 天気は上々 新たな闘志 先週は、最後の最後に大タコを逃がし、 「 ベイビー おまえを俺のものに することは 叶わぬ悲しき 願いなのか だれのせいでも ありゃしない みんな おいらが悪いのさ ちゃんちゃか ちゃんちゃかちゃ〜ん♪」 と、エリック・バードン&アニマルズの『悲しき願い』を口ずさみながら、タコが消えた海をボーゼンとみつめていたのだが。 傷心を癒すために一昨日、床屋へ。 そこで、若い女性の理髪師とタコ料理の話しをしていると、体中に元気が湧いてきて。 またまた”タコこそ我が命”と、日立沖堤に出撃することに。 ロシュナンテ頑張れ! 朝、5時10分、自宅前。 ロシュナンテに跨り、スタータをオン。 「クシュ、クシュ」 と喘いだあと、沈黙。 ーどうした? もう一度、スタータをオン。 「クシュ、クシュ」 と喘ぎ、沈黙。 ーお〜ぃ、どうしたい! 走行距離1万8千キロ、人間で言ったら70歳ほどのロシュナンテ。 いつ死んでも可笑しくない年だが。 今、『短くも美しく燃え』なんてつぶやきながら、死んでもらったら困るのである。 ー死ぬなよ、死ぬなよ。 と口の中で声をかけながら、スタータをオン。 そしてとうとう、 「クシュ、クシュ、シュッ、シュッ、シュッ・・・、ルルルル・・・」 と息を吹き返した。 5時半を廻っていた。 紅く染まる堤防 2番船に間に合う すでに東天は白み。 その底は、薄っすらとピンク色に染まっていた。 中天に、白い三日月と、星が、朝日に霞んで浮かんでいる。 寒い朝だった。 2番船に乗ろうと焦りつつ、冷気を裂いて突っ走った。 午前6時15分。 日立港第5埠頭船着場。 やや強くそよぎ出した西風に、旗がハタハタとなびいている。 日立フイッシングセンターの2番船に乗り込んだのは5人。 そのうちノビタを含む3人が、タコ釣り師だった。 ノビタは中央で下船。 堤防に立ち南側を眺望すると、栃木のタコ釣り名人がいた、彼に向かって手を振りながら北へ向かった。 斜めに射す朝日を受け、堤防も港も赤く染まっていた。 先週は、”つ”抜けと、期待が大き過ぎて惨めな結果となったこともあり。 今日は美空ひばりの『柔』の心で、 「勝つと思うな 思えば負けよ 負けてもともと この胸の♪」 期待はひかえめに。 はじめの1杯 北西の方向から、ゆるい風が吹いていた。 今日も、青い海、青い空。 遮るものがない空から、燦々と降り注ぐ陽光が眩しい。 まるで、 「光る海 光る大空 光る大地 行こう無限の地平線♪」 (『エイトマン』by 前田武彦 作詞) の舞台だ。 時々、白い波飛沫がテトラの間から舞い上がる。 閑散とした堤防に3人の先客がいた、中に久慈浜のタコ釣り名人もいる。 午前6時55分。 第一投、サンマを結わえたタコ天仕掛けをドボーン!と海面に落とした。 この瞬間が、もっとも熱い。 希望の白い雲が、胸中一杯に湧いているのだ。 そして、10分、20分、30分・・・経過。 希望の白い雲が、失望という灰色の雲に変化していく。 今朝、同船したこの道20年のタコ釣り名人が、はじめの1杯が釣れるとホッとすると話していたが、名人でもそうかと感じいったのだが・・・。 午前7時30分。 ヒョコヒョコと海底を移動していたタコ天仕掛けが、ピタッと停止した。 反射的に、ガーンと竿を跳ね上げた。 ゴミのような物が持ち上がる。 ータコだ! ガン、ガン、ガンと竿を三度、大きく煽り、タコ天の針をタコの体に深く食い込まし。 そのままリールを巻きタコを水面に。 水面に浮いたタコを目で確かめ、 「オーレッ!」 とそのまま堤防の上に。 「ペシャッ!」と堤防の上に落ちたのは、600グラムほどの小ぶりなタコだった。 小さくても嬉しい1杯だ。 釣ったタコをスカリのある所まで運ぼうとすると、「シュッ!」と勢いよく顔に水をぶっかけられた。 渥美清ではないが、 「たいしたもんだよ、タコのションベン!」 一矢(いっし)でなく、一ションベンを報いられたのである。 穏やかな海で 危険がいっぱい! 午前8時5分に、1キロほどの2杯目を追釣。 午前8時25分に、600グラムほどの3杯目を追釣。 それから10分ほど経過した時だった。 竿を上下にシャクル手に突然、マッタ!がかかった。 ガンと竿を持ち上げたが、動かない。 固さの無い吸着。 ータコだ! 大きそうである。 この瞬間、エルヴィス・プレスリーの『この胸のときめきを』が、 「When I said "I need you" You said you'll always stay♪」 流れてくるような・・・。 舞い上がる気持ちを抑え、道糸を緩めて竿を堤防の上に置く。 それから3分。 竿先を海面に向けながら道糸のたるみを取り、腰を落とし、 「エーーイッ!」 と竿を持ったまま、仰け反った。 と・・・。 竿が、おもいっきり空に跳ね上がった。 ーああ。仕掛けがない! 仕掛けを繋いでいた”より戻し”が、半分から切れていた。 このタコ天、昨日、倉庫から見つけ出してきたもの、点検が甘かった。 頭の中で、何度も後悔がこだまする。 このあとも仕掛けを根に掛けて、次々とロスト。 アランドロンの出演した映画『危険がいっぱい』ではないが、ここは岩礁地帯”危険がいっぱい”なのである。 午前9時15分までに、3個の仕掛けを失ってしまった。 仕掛けは残り1個、餌のサンマは1匹。 もうあとが無い。 映画の題名『熱いトタン屋根の猫』のように、タコ天仕掛けが岩盤に触れるたびにピョン、ピョン跳ねて、思いきって攻めることが出来なかった。 納竿 1時間、2時間、3時間・・・。 大旱(たいかん)に雲霓(うんげい)を望むが如く、タコを探り続け。 危険に神経が鈍磨してきたわけではないが、現状を打破しようと。 「Go to break!(当たって砕けろ)」 に転じた。 これが良かった。 午前11時45分。 本日最大の1.8キロをゲット! でも昼の12時20分に、とうとう最後の仕掛けを根に掛けて失ってしまう。 本日のタコ戦は、巡洋艦3隻と空母1隻を撃沈、戦艦4隻を大破したような戦いであった。 船着場に行くと、近くで栃木のタコ釣り名人が釣りをしていた。 彼は、2.2キロを含むタコを4杯釣ったようだ。 今は、友人とヒラツメカニを狙っているのだが1時間ほどで1匹と、そちらの方は駄目のようだ。 午後1時の船で帰ってきた。 「人間よ。汝、微笑と涙とのあいだの振り子よ」 (ジョージ・ゴードン・バイロン) 本日釣果 真タコ 0.6〜1.8キロ(合計 4.2キロ) 4杯 The END |
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