2008年8月24日(日)  日立港
              午前4時45分〜午前9時半
ノビタの釣り天国



        泳がせ釣り第5戦


                               
      風が吹いていた
海は荒れぎみ
空は鉛色の雲で覆われ。
風がバッカンの口から飛び出したビニール袋の端を、バタバタと震わしている。
海には無数の小波が湧き、波がザブン、ザブンと足元で吼えていた。
厚手のジャンパーをひっかけてきたが、肌寒かった。
隣りで竿を持っている若奥さんも、ジャンパーに付いているフードを頭から被り、寒そうに体を丸めて屈んでいた。
まるで港は冬景色だ。

カンパチのいない海
午前5時半。
いつもならカンパチが、餌にドドーン!と体当たりしてくる時刻である。
目ん玉を、風に揺れる磯竿2本の先に集中し、その時を待っていた。
10分、20分、30分・・・1時間。
時々、竿先が大きく上下する。
その度に、一瞬、心臓がパタパタとはためくのだが、竿先は数秒すると元に戻ってしまう。
餌のハナダイが、何かに驚き一瞬逃げ廻ったのだ。
ーカンパチなのだろうか?。
そして、何事も無く2時間経過。

いつか、絶望と、あきらめと、悲しみが降ってくる。
そして今日も、釣り人の哀歌が風に運ばれてきた。
「風 散々と この身に荒れて
  思いどおりにならない夢を
   失くしたりして
 人はかよわい かよわいものですね♪」
   (『愛燦燦』by 美空ひばり)

         
波騒ぐ海
来た!
午前7時半を廻っていた。
ーと!
左側の竿の先が、風向きと反対方向に曲がった。
竿尻には、風に飛ばされないよう海水を汲んだバケツを載せている。
ー前アタリ?
何度もこんなアタリがあったので、にわかには信用できない。
コンマ数秒ほどそのままに。
そして待ちに待った本アタリが。
ーキターーーー!
ドドーーーン!と竿先が、下方に突っ込んで行った。
竿をつかむ。

風の中で、もたもたと竿尻に載せたバケツを除き、ライフラインのロープを付けた洗濯はさみを外し。
その間にも、竿はこれ以上は曲がらないほどに引っ張られ。
道糸が海を切り、もう1本の竿の仕掛けが垂れている方向に走った。
隣りの竿の仕掛けと絡んだら、収支がつかない。
焦った。

若い奥さんが
針掛かりしたカンパチとドタバタしていると。
20メートルほど離れた所にいた若い奥さんが、長い髪を風にたなびかせ、心配そうにこちらを見ている。
「髪のみだれに 手をやれば
 赤い蹴出しが 風に舞う♪」
の風情ではないか。
この非常事態に隣りの奥さんを見ているのも、カンパチを何度も釣った余裕なのである。
奥さんが、どうしょう、どうしよと、身もだえしているような。

                                        
   カンパチのたたき
ならば期待に応えてと。
オットトトト・・・、オットトトト・・・、オットトトト・・・、と強風のなか、魚に翻弄され悪戦苦闘する釣り士をしていると。
とうとう奥さんは、いてもたってもいられないとタモを持って、こちらに向かって走り出そうとした。
ーこの辺でやめよう。
エーーィ!と堤防の上に魚を抜き上げた。
奥さんが、ホッとしたように微笑んでいる。
心配して頂いた奥さんに、ペコリとお辞儀を返した。

バッタ、バッタと堤防の上に転がったのは、27〜8センチほどの小ぶりなカンパチ。
見ると、針が外れている。
危機一髪だったのだ。ーホッ!
釣ったカンパチをスカリに入れようとしていると。

納竿
老夫婦が側に立ち、
「何匹釣れましたか」
と聞かれ、2時間でやっと1匹と応えたのだが・・・。
慌てて、ノビタの隣りで竿を出していた。
奥さんと話しをすると、週1回、栃木から釣りに来ると言っていた。

ノビタのように地元の人間ならボーズでもなんちゅうことはないが、栃木から高いガソリン代を払って釣りに来る人達は、それではすまないだろうと思ったが。
奥さんは、海を見るだけで楽しいと言う。
その顔は、決して強がっているのではなさそうだった。
午前9時半まで粘ったが、潮も動かなくなり期待薄すと、納竿。

本日釣果
  カンパチ  28センチ  1匹


















The END
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