2008年9月7日(日)  日立港
              午前5時10分〜午後8時半
ノビタの釣り天国



        泳がせ釣り第8戦


                               
       雲に覆われた朝
新天地を求めて
夏がどんどん遠ざかり、秋がどんどん近づいて来る。
朝夕の虫の声も、大きくなってきた。
「絶好の釣りシーズン!」
と叫びたい季節なのに。
釣り場が無い。
港は、ほとんど立ち入り禁止。
網の目をくぐって侵入すれば、哀れ釣り人たちが砂糖に群がるアリのように押し合い、一触即発の雰囲気。
ーああ。

「人の行く裏に道あり、花の山」
と雑踏を避け新天地に向かった。
港はまだ夜の酒場のように灯りが瞬いていた。
空を覆う雲が海上まで下り。
うすれていく暁の闇のなか、海と空の境は混沌として見分けがつかない。
北東から吹いてくる爽やかな風が心地良かった。
海には誰もいなかった。

浮子は沈むのだが・・・
釣りを開始して2時間。
誰もいない海が、いつか釣り人で埋まり。
どこでも見られる休日の雑踏が広がる。
木枯紋次郎ではないが、
「あっしには、かかわりのねえことでござんす」
とジッと海に漂う浮子をみつめていた。

      
   時々沈む浮子
浮子がときどき沈む。
そのまま、海中深く潜って行く。
そのつど、老化しヨボヨボの心の臓が若返り。
「行け、行け、レッツ・ら・ゴーー」
と、期待に胸弾むのだが・・・。

浮子は3分ほど潜っていると性も根もつきはてたのか、海上に浮上してしまう。
またカンパチに振られたのだ。
エサのきりょうが悪いのか、体が大き過ぎるのか、わからないけど。
嫌われたのである。
「食べてもらえぬ豆アジを
 涙こらえて泳がせてます
 男ごころの 未練でしょう
 カンパチ恋しい 日立の海♪」
と、そのつど都はるみの恨み節を歌っていたよ。

嫉妬!
隣りで沖アミを餌に浮子フカセ釣りをしている2人連れ。
20〜23センチの良形のアジを、テンポ良く上げている。
ときどき30センチほどのカンパチと、40センチ近い大型のサバも釣っていた。

と・・・。
隣りの釣り士に大物がヒット。
もう一人は不在、その置き竿にもヒット。
隣りの釣り士は大物と激闘しながら、友人の竿を足で押さえようとしている。
友人の竿は海に落下直前のかなり危険な状態。
「この竿上げますか?」
と声をかけると、大物と激闘している釣り士が、哀願するように大きくうなずいている。

落下しそうな竿を掴んだ、数万円するような高級なリールだ。
リールについているレバーを握らないと、ロックが掛からないらしい。
リールのハンドルは左側。
ノビタの安リールは、右側である。

「アイ・キャン・ノット・ドライブ!(お手上げ)」
と、竿を元に戻そうとすると。
激闘する釣り士が、いやいやをしている。
しょうがないので、オタオタとリールを巻く。
竿は磯1号の細竿、引きは倍増される。
「ギブ・アップ!」
わしには無理、と隣りを見ると。

大物と激闘している釣り士が、遠くを見ながら片手で大きく合図をしている。
見ると、彼の友人がニタニタしながらゆっくり歩いてくる。
ーこのバカたれ!早く走って来いヤ。
ノビタの竿にも、ヒットする可能性があるんだゾ。
他人の竿を持っている場合か。
結局、この2人、大サバと30センチほどのカンパチを釣り上げた。

ところが、とうとうノビタの浮子は前アタリだけ。
ークソーー。おれには何で来ない?
と嫉妬で気が狂いそう。
「おお嫉妬よ!
 限りなき悪の根源、徳をむしばむ虫よ!
 いかなる悪も何がしかの喜びをもたらすものだが、嫉妬のもたらすものは、不快、恨み、怒りばかりだ」
     (『ドン・キホーテ』第八章より by ミゲル・デ・セルバンテス)

納竿
午前8時半。
空を覆っていた雲が薄くなり、青空が広がってくると。
気温がどんどん上昇、それに潮の流れもあと1時間で止まる、これ以上は無駄と納竿。
結局、午前5時10分に31センチのカンパチを釣ったのが、初めで最後だった。

本日釣果

  カンパチ  31センチ  1匹

















The END
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