2009年1月28日(水)  涸沼川のセイゴ釣り
              午後4時50分〜午後8時半
ノビタの釣り天国



        今日も待っていた♪

                                       
雲多きたそがれ

尽きない思い

朝。
太陽がいっぱいの空。
北東の風が、庭の木枝を揺らしている。
気温は低いが、今日も釣り日和。
ふと、倉田百三の「出家とその弟子」の一節を思い起こす。

「わしは生まれた。
 そして太陽の光を浴び、大気を呼吸して生きている。
 見よ。
 あの弓なりの空を。
 踏みしめている黒土を。
 生い茂る草木、飛び回る禽獣、女のめでたさ、
 子どもの愛らしさを。
 ああ私は生きたい。
 いつまでも。
 いつまでも。」

”ダッペ将軍を追う”は、大儀名文、スローガン、旗指物。
その心は、セイゴへの尽きない思い。
火の消えた灰の下で、火の塊がまだ真っ赤に輝いているような。
豪華な晩餐を楽しんだあと、まだ手をつけていなかった珍味があったような心残り。
そんな思いが、胸の中でチロチロと燃えている。

仕掛けの手入れをした。
セイゴの歯でボロボロになったハリスと、歯先が鈍くなった針を交換すると。
胸の中で情熱の炎が、一気に乾燥した藁に点火したかのように、ゴーゴー音を立て燃え上がったヨ。

   
  ノビタのセイゴ仕掛け
新しいポイントで
午後3時半。
「たまには、辛子明太子でも釣ってきてよ!」
のカミさんの声を背に外に出ると。
空一面の灰色の雲、身を切るような凍風、陽は雲に隠れ、寒々しい。
ー止めようか?
と、一瞬迷ったが。
迷っていられるほど人生は長くはない。
”死しての千年より、生きての1日”と、躊躇逡巡する心を鼓舞し、ロシュナンテに跨った。

涸沼川のいつもの場所に来てみると、車が4台止まっていた。
一昨日、かたさんと釣っていた所には、先客が4人。
彼らから50メートルほど先に行くと。
まるで川に生えた毛のような、枯れ草(葦)が岸辺に立っていた。
迷わず、今日はそこで釣ることにした。
なんせ、
「毛のある所に喜びがある」
   (フランスの諺)
なのである。

餌泥棒
竿を3本並べ終わったのは、今日も午後4時50分。
橙色に染まった空に、黒々と散在する暗鬱な雲。
陽は地平線に隠れようとしていた。
冷たい北東の風が吹いていた。
縮緬皺を刻む川面、その上を木の枝がゆっくり上流に向かって流れていく。

釣り始めてから10分、20分、30分、40分、・・・1時間。
竿先に付けた鈴は沈黙したままだ。
いつものことながら、焦燥、不安、絶望などの暗雲が、次々と胸中に去来する。
「女が男を待たせるのは、もっと期待をふくらませてあげたい一心からなのよ」
   (ヘネローレ・エルスナー ドイツの女優)

時々、仕掛けを回収してみると餌がない!
ホシはすぐ分かった。
何度目か、仕掛けを回収すると。
空からカニが墜落してきて、地上で脳震盪を起こしお陀仏に。
ー天網恢恢疎にして洩らさず!
カニが罪を償い、ブッダになったのである。

         
                               鈴が鳴った!
初めの2匹
午後6時。
川の流れは、上流に向かって勢いを増し。
風は、北からの微風に変わった。
燦爛とし暗鬱な橙色は空から消え、淡い朱色が西空を染めている。
川には薄青い静謐な夜の闇が漂っていた。

午後6時10分。
「リリーン、リリーン、リリーン・・・・・・」
と、何の前触れもなく2本の竿の鈴が、ほぼ同時に鳴り響いた。
闇夜に剣の、不意打ち。
「キョウトー(驚倒)!」
いずれの竿を掴むか、脳味噌が揺れる。
竿先に付けたケミホタルの黄緑色の灯りが、より大きく揺れている右端の竿を手に取った。

竿先を上げながら、リールを巻く。
ゴトゴトと重厚な手応えが返ってきた。
ペコ、ペコとお辞儀を繰り返す、中央の竿を横目にリールを巻いてくる。
初めの1匹は、目測30センチオーバー。
針を呑まれている。
そのまま竿を放置し、もう1本の竿の獲物を引き上げる。
2匹目も、目測30センチオーバーだった。
これも針が呑まれていた。
この勢いは続かず、このあとはポツリ、ポツリ。

納竿
川の流れが止まったのは、午後7時半。
これまでに、ポツリ、ポツリと9匹釣っていた。
このあと川の流れが上流から下流へと変わり、流れも急となってきた。
午後8時までにもう1匹追加したが、これが最後だった。

午後8時を過ぎると、川岸から釣り人の気配が消えた。
空は雲に覆われ、月なく、星なく。
闇に溶けた川辺に残ったのは、開高健の言う日本人の”味の素”だけ。
「だいたいわびしさとか、さびしさとか、いうものは、
私たち日本人にとって”味の素”みたいなものである」
    (「日本人の遊び場」 by 開高健 より)
その”味の素”に耐えながら、午後8時半まで粘るも鈴は鳴らなかった。
午後8時半、納竿。

セイゴは、スリ身団子にし、おでんの具にして骨まで愛しました。−ハイ♪

本日釣果
  セイゴ  27〜30センチ  10匹





















The END
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