2009年12月5日(土) 午後4時半~午後7時半
         

ノビタの釣り天国


            たった3匹

                                      雨が降りはじめた
雨降らば降れ
「有漏地より無漏地に帰る一休み
  雨降らば降れ
   風吹かば吹け」
 (一休禅師)
雨がドカドカ降っていた。
このまま雨に打たれて死んでしまいたくなるような降りっぷりだ。
かたさんも、何処かで釣りをしている。
客観的に申すならば、狂気の沙汰である。
でも止められない。
なんせ40センチオーバーのセイゴが釣れるのだ。
ここはぐっと我慢の一丁目ではないか。

はじめの2匹
午後6時半。
釣りを開始してからすでに2時間経過。
まだ40センチどころか、1匹も釣れていない。
川はまだゆるやかに逆流していた。
3本の竿先に付けた鈴は、沈黙したままだ。
天も地も晦冥のなか、雨音が沈黙をより深くしていく。

と・・・。
目の前の竿が、上下にゆるやかに揺れている。
やや東よりの弱い北風が吹いていた。
ー風か?
ヘッドランプの灯りで他の竿を見たが揺れていない。
ー小枝が道糸に捕まったのかも。
とそのまま放置しておいた。

ーと!
竿が。
いきなり、バシッ、バシッ、バシッと上下に大きく振幅し、
そのままお尻を持ち上げ、川に飛び込もうとした。
「キタ~」
竿にしがみつき、仰け反ると。
ズシーン!と重い手応えが返ってきた。

リールを一寸の容赦もなく、ガンガン巻いた。
川岸には捨石がゴロゴロしていて、油断をすると最悪のシナリオになってしまうのだ。
ようやく護岸された岸まで寄せると、なんとダブル!
この時、岸沿いの道は10センチほど水没していた。
勢いよく魚を土手に引き上げようとすると、
ーアッ!
下針についた1匹が、ドボーンと針から外れてしまったのだ。
シマッタ!と思ったが、魚は水面に横倒しになったまま動かない。
落ちた時に頭をコンクリートに打ち、脳震盪を起こしたようだ。
危機一髪であった。
それは42センチもあるセイゴだった。
もう1匹は30センチだったが、大人と子供のような違いであった。

卵を割らずには・・・
この10分後に今度は別の竿が、
「リリーン、リリーン、リリーン」
と来訪を告げてきた。
一気に岸まで寄せ、土手の上に引き上げようとした時だ。
「ガッツ!」
と異様な音が。
土手に上がったセイゴを仕舞い、ヘッドランプの灯りで竿を点検すると、なんと穂先が折れていたのである。
ーああ。
「卵は卵を割らずには食べられない」(フランスの諺)
要は、何かを手に入れたなら何かを失う。
痛みなくしては何物も入手できない教えであるが・・・。
それにしても38センチのセイゴの代償にしては大き過ぎやしないだろうか。

納竿
午後7時半。
かたさんが、雨をバシバシ体から弾かせながらやって来た。
帰ろうの誘いだった。
即、了解。
ところで何匹釣ったのか聞かれたので、3匹と応えると。
「エッ!」
と驚かれた。
ー・・・?
今度はノビタが聞くと、
「14匹」
の応え。
「エッ!」
と今度はノビタが吃驚仰天。
目の毒、気の毒、お気の毒の14匹とは・・・。
彼の14匹を聞く前までは、3匹で幸せだった。
この3匹、彼の話を聞いた途端に、不幸な3匹になってしまったのである。ーああ

帰りのかたさんの車中、
「ヨッシャー明日も出撃じゃ!」
と宣言すると。
かたさんも付き合うという。
何か賭け事をし、勝ち逃げするのは申しわけないという感じではあったけど・・・。
今日も、
「めでたさも ちうくらいなり おらが春」
  (小林一茶)
だった。

本日釣果
セイゴ  30~42センチ 3匹
















The END
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