2010年11月29日(月) 午前6時半~午後0時半
           那珂湊沖(タコ釣り)
那珂湊 水温 
16・8度<潮>小潮 満潮 10:09 干潮 2:52
ノビタの釣り天国


        夢破れて・・・


                                    これっきりですか?
期待
期待ってやつは、放置しておくとどんどん膨張していく。
2週間前、かたさんが船で良形タコを11ハイ釣った。
その日の竿頭だったそうな。
それ以来、
寝ても覚めても頭の中はタコ、タコ、タコ・・・。
頭の中の75ミリ総天然色大スクリーンには、
次々と押し寄せるタコを、バッタ、バッタと切り捨てているノビタが鮮明に映っていた。

昨日、海が穏やかになったので、
船長に予約の電話をすると、
「釣れてるよ。凪だよ、タコ釣りには最高だよ。
今日は6ハイから11ハイ。
西風が吹いているから、明日はもっと期待できるかも。今がチャンス、待ってます」
と火に油をそそぐような誘い。
電話を切ってから、
下手(ヘタ)な人でも釣れるのか、聞き忘れたことに気づいたが・・・。

翌日。
まだ夜の底に沈んでいる国道245号を、
ロシナンテに跨りブッ飛んだ。
酒も飲んでいないのに全身が熱かった。
冷たい風が、まるで気にならない。
気分はすでに、甲斐バンドが歌う”ヒーロー”だった。

HEROヒーローになる時、それは今~
「HERO ヒーローになる時、それは今
HERO 引き裂かれた夜に おまえを離しはしない

生きるってことは 一夜かぎりのワン・ナイト・ショー
矢のように走る 時の狭間(はざま)で踊ることさ
今夜お前はヒロイン もう泣かさないよ
この魂のすべてで お前を愛してるさ
銀幕の中泣き顔の ジェームス・ディーンのように
今が過去になる前に 俺たち走り出そう

だから
HERO ヒーローになる時、それは今
HERO 引き裂かれた夜に おまえを離しはしない

・・・



予想外の展開
午前6時半、釣り場着。
今日乗船した同船同夢の釣り師は9人。
左舷に5人、右舷に4人。
ノビタは、左舷のミヨシから2番目に陣取った。
今回は、前回(11月11日)の屈辱戦、決して負けられないではなく、
必ず釣れると思っていた。
それも10ハイは固いと。
2週間この日のために作戦を練り、負けるはずはないと。

水平線上に浮かぶ雲の裂け目を、紅く染めながら日が昇ってくる。
穏やかな夜明けだった。
海は、ものうげにのたうっていたが凪に近い。
これ以上は望めないほどの釣り日和だった。
ひんやりとした風が顔を撫でていく。
寒くはなかった。
このときはまだ未来は、桃色に輝いていたから。

「水深23メートル、初めていいですよ」
と船長の声を合図に、一斉にタコ天仕掛けを海にドボーン、ドボーン、ドボーン・・・。
開始から10分ほど経過。
と・・・。
ノビタの左隣りが、1キロほどのタコを釣り上げた。
左端(大トモ)の人にもきた。
そう焦らなくてもよか、残り物には福がある。
と、まだ余裕があった。
背後(右舷側)の釣り師が、快調にタコを釣り上げていく。
1時間、2時間・・・。
左隣りはすでに4ハイ、背後(右舷側)の釣り師は8ハイ。
なのに・・・。
ノビタは仕掛けを4個失ったけど、まだアタリすらない。
                                       
今日も釣り日和だった
錘よりも軽いタコが
拝啓。
午前9時半。
「・・・?」
海中に伸びたラインから、なにやら手応えのような、そうでないような・・・。
歯ごたえがないのです。
おかゆです。
味がないのです。

気になるので、ラインを半信半疑で手繰(たぐ)りよせました。
とうとう未確認物体が海面に浮上。
みんなが見ていました。
それはタコ天の針より小さい、規格外れのマイクロタコ。
船上に引き上げようとすると、針の間からすり抜け逃げました。
正直、ホッとしました。
衆人環視のもとで釣り上げるには、勇気がいるタコだったのです。
サヨウナラ。
敬具。

初めの一ハイ
そのあとは空っぽの時間が過ぎていくだけ。
1時間、2時間・・・。
まてどくらせど音沙汰なし。
何もかも放り投げ、家に帰りたくなってきた。
白くギラギラ輝く海を見ていると睡魔に襲われ、夢現(ゆめうつつ)。

午前11時10分。
またラインが動かなくなった。
ー根掛かりだ!
道糸を残っていたパワーの全てをかけ引き上げたが、ピクリともしない。
と、その時、道糸が弛んだので力いっぱい引くと、持ち上がった。

「タコだーーー」
道糸を引く手に、重量感が伝わってくる。
薬師丸ひろ子ではないけど思わず、
「カ・イ・カ・ン(快感)!」
と叫んだね。
釣り上げたのは、1.6キロのタコだった。

納竿
以降、最後の最後までアタリなし。
夢破れてタコ一ハイ。-ああ!
ノビタの人生なんて、この繰り返し。

故モナコ王妃、グレース・ケリーはこんな言葉を残した。
「落胆のない人生なんて、味のない人生よ」
落胆こそ人生の肥やし。
でも肥やしが強烈過ぎると、根が焼けてしまうことも。
もうタコは追いたくないよ。
午後0時半、沖上がり。

本日釣果
 真タコ 1.6キロ 1ハイ

The END
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