2011年3月6日(水) 午前6時20分~午後12時
           常磐沖(カレイ釣り)
那珂湊 水温 
 8・2度<潮>大潮 満潮  4:59 干潮 10:54
ノビタの釣り天国


       必殺仕掛け人、見参!


                                ちともの足りないけど・・・
寒い朝を走る
午前5時。
星が散る群青の空の下。
闇をかきわけ、《トトトト・・・・・・》とロシナンテが国道245号を走って行く。
向かうは那珂湊港。
道筋にボンヤリと伸びたヘッドランプの灯りを頼りに。
時速40キロメートル、制限速度をオバーしている。
ロシナンテが、
「だんな、もっと速く走れますぜ」
と俺をせかす。
「これ以上は無理だ。
ハンドルを握る手がかじかんでいる」
「だんなも年には叶わんですか」
「ひとのことを言えるか」
先日、何の変哲もない角を曲がりきれずに転げやがって」
「言いたくないけど、あれはだんなのハンドルさばきが悪かったんですぜ」
「そうかい、でも昔のお前ならあれくらいのハンドルさばき、へでもなかったぞ」
「・・・・・・」

露出した顔に突き刺ささる空気が痛い。
一句、浮かんだ。
「”冬の朝 肉にしみいる 寒さかな”どうだい?」
「品がないし、”静けさや 岩にしみいる 蝉の声”(芭蕉)を、まねただけでしょ?だんな」

同船同夢10人
船着場に着いたのは、午前5時半。
その前に車が7~8台止まっていた。
ロシナンテから釣り道具を下ろし、右舷の中央からややミヨシ寄りに荷を置いた。
「おはようございます」
「おはようございます」
と黒い影法師が、次々と船に乗り込んでくる。
本日の同船同夢の客は、ノビタを含めて10人。

     
  本日絶好の釣り日和
竿を出し釣りの準備をしているうちに、夜が明けてきた。
船長も来た。
そして、出船したのだが・・・。
200メートルほど走ったところで、Uターン。
全員が、
「????」

船着場に戻ると、
船長があわてて飛び降り、車に走った。
そして、車から巾着(サイフ)を取り出すと、笑いながら戻ってきた。
ー昨日乗った12人の客料金が入っていたのかな?
「しっかりしろよ船長!」
と誰かが叫んでいる。
午前5時50分、改めて”敵は常磐沖にあり”と出船した。

本日釣り日和
港を出た。
水平線が赤く染まり洋々と広がる海原がある。
見晴らす限り真っ平らだ。
西からの微風があったが、申し分のない好天気。
今日こそ陸での恨みを晴らしてやる。
凍てつく夜に何度、カレイ乃助に振られ泣いたことか。
カレイに恨みはないけれど。

それは外面、
うらんでも、うらんでも、うらみきれないこの思い。
仏の顔も三度まで。
必殺仕掛け人と呼ばれた(誰も呼んでいない)この俺が、
止むに止まれず昼に見参、常磐の沖でそのうらみを晴らしてしんぜよう。
お代は結果しだいで、ようござんす。

ここで、あの有名な仕掛け人の口上が舞台に流れてくる。
「晴らせぬ恨みを晴らし 許せぬ人でなしを消す
いずれも人知れず 仕掛けて仕損じなし
人呼んで仕掛け人 ただしこの稼業江戸職業づくしには載っていない」
そして幕が下りる。
と、今度は西崎緑が哀愁をこめながら歌う『旅愁』が・・・。

釣り開始直後から
午前6時20分。
磯崎漁港沖合い5キロメートルほどで、船は止まった。

          船、船、船・・・
周囲には、既に1.2、3、4、5、・・・10隻の遊漁船が集結していた。
我々もおくれをとらじと、
仕掛けを一斉に、ドボーン、ドボーン、ドボーンと海へ。
ノビタも、
「目を覚ませカレイ乃助!
いつまでも砂に潜って、”春眠暁を覚えず”なんて寝ている場合じゃないぞ。
逃げるなら早く逃げるべし」
と呼びかけながらドボーン!

投入して2分もしないうちに、
ノビタから右2人目の若者が、40センチ前後のマコガレイを船上に。
それを見て、
ー皇国ノ興廃コノ一戦ニアリ、各自奮励努力セヨ!
と全身に喝!
頭から汗を散布しながら、竿をシャクリ続けた。

はじめの1匹
午前6時半。
釣り開始から10分ほど経過。
水深35メートルの砂地を、50号の錘でトントン叩いていると。
ーその時!
《クッ》
と、何か物を踏んずけたような、ぶつかったような・・・。
一瞬、キラリと頭の中を閃光が走った。
微妙だが異様であった。
                                         
40センチ!
ーもしかして・・・。
と、竿先を水面に刺し、そのまま30センチほどリールから道糸を出し。
1、2、3、4、5、・・・10、とカウント・アップ。
竿先をソーッと持ち上げると。
《クククッ、クククッ、クククッ・・・》
と明確なアタリ。
続けて、
「くやしい・・・。われ一生の不覚」
と、海底から無念の声が聞こえてきた。
ポンピングしながらリールを巻く。

途中何度も、
《ググッ、ググッ、ググッ》
と引き込みがあり、
「バカヤロー、俺をだましやがって」
とカレイ乃助の叫び声が。
その都度、
ーカレイ乃助、往生際が悪いぞ。
と呼びかけながら、とうとう御用。
はじめの一匹は、38センチのマコガレイであった。

衝撃のグッドバイ
このあと、午前6時50分に2匹目が。
左右の釣り人も、ノビタを追うように釣り上げていた。
午前7時半に、3匹目が。

しばらく間を置いた午前9時半。
4匹目が来た、かなりの手応えだった。
リールを巻いている途中、何度も竿が痛打され、竿が悲鳴を上げていた。
左側の釣り人がタモを取ろうとしていた。

と・・・。
カレイ乃助が海面に浮上。
それは見事な大きさに見えた。
ー50センチオーバーか?
とその時、晴天に雷が落ちたような映像が展開、思わず魂が中天にブッ飛んだ。
「カレイ乃助を馬鹿にするでない、グッド・バイ!」
と言いながら尾で一発、バシャッ!と海面を叩き、カレイ乃助は海中に消えて行ったのだ。
切歯扼腕の1匹。-ああ。
タモを持って側に立った人も、しばしボーゼン。
                                      
釣ったカレイの刺身で一杯なんて!
沖上がり

このあと、午前10時に4匹目を。
午前11時に5匹目を追釣、これが最後だった。
午後12時、沖上がり。
竿頭は、ノビタと背中合わせに陣取った顔なじみの名人、11匹であった。
いつか彼をぬくことが目標だが、いつのことになるのやら・・・。
晩酌の抓みに、トレトレのマコガレイの刺身。
いつものことながら至福の一時だ。
今日も、
「神、天にしろしめし、世はすべてこともなし」

本日釣果
 マコガレイ  36~40センチ  5枚

The END
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