2014年6月2日(月) 晴れ&うねりあり
       那珂湊 海水温 18.1度
     那珂湊港の潮汐 中潮 満潮  5:22  干潮 12:31
ノビタの釣り天国

       
2014年6月2日(月) 午前5時半~午後12時 鹿島灘沖


     
     自信復活


                                  
   カレイ9匹と一升瓶
ボーズになった日

3日前、俺は奈落の底に落ちた。
鹿島灘沖でボーズになったのだ。
それも釣士8人中、ボーズは俺だけ。
前回、前々回は竿頭だった。
禍福はあざなえる縄の如し、村上春樹がエッセイ『村上ラヂオ』で言っていた。
「ラッキーなことがまとめて続いたあとには、必ずやその揺り戻しがある。
人生とはそういうものなのだ、本当の話し」
まさに強烈な揺り戻しであった。

その日はすっかりメランコリーになり、日誌も書けなかったよ。
でも・・・なぜマコは俺を振った?
このままで終わったら、一生悔いが残る。
彼女に振られたその理由を知りたいと、俺は再び那珂湊港にブッ飛んだ。
「女ゴコロノ 未練デショウ
     アナタ恋シイ 鹿島灘
なんて歌いながら。

釣り座をチョイス
6月2日、午前3時50分。
那珂湊港、船着き場。
しらじらと夜は明け、港はすっかり元の色を取り戻していた。
白いレースのような雲が空を隠し、北寄りの風がヒューヒュー吹いていた。
T丸の前には、まだ一台も車は止まっていなかった。
今日も一番乗りだ。
ヘルメットを脱ぎ大きく息を吸うと、ひんやりとした空気が肺になだれ込んできた。
昨日の猛暑から、今日も暑くなるだろうと薄着をしてきた身にはうすら寒かった。

一番乗りなので、釣り座を自由に選べる。
ーさてどこにする?
釣りは技だけではない、釣り座もその日の勝敗を左右する。
大当たりのパチンコ台と似ている。
でもその大当たりの釣り座が、その日によって変わるからややっこしい。
これは賭けだ。
今日は、右舷の中央から少しミヨシ寄りで釣ることにした。
この時、一天地六の賽の目は投げられたのである。

       
天気晴朗なれど波高し
はじめワラサ狙い
午前4時を過ぎると、続々と剣豪が集まってきた。
海がシケない限り平日でも5~8人の釣り士が船に乗る。
今日は、俺も含め7人のマコ熱患者が乗船した。

午前5時15分、出航。
船は、千波万波をザブンザブンと乗り越えて沖に突進して行った。
10分ほど走った所で、まずワラサ狙い。
様子を見ながら参戦しようと思っていると、開始直後に左舷トモで70センチクラスのワラサが上がった。
これは黙って見ているわけには行かないと、船長からタコベイト5本針仕掛けを購入し、それに錘80号を付けて参戦。
だが時すでに遅く、ワラサは行方不明になっていた。
ワラサの反応がなくなった所で、船はカレイ釣りのポイントを目指し30分ほど南下。

マコ入れ食い
午前6時半。
マコカレイ釣り開始。
潮止まりなのか小突いても小突いても魚の反応なし。
まるで目隠しをして大地を棒で叩くスイカ割り、海底を叩いても叩いてもスイカじゃない、マコが見つからない。
船は点々と場所を移動しながら南下して行く。

ーそして、とうとう。
午前7時45分。
砂地の海底をズンズンズン・・・と小突いていると、一瞬、ククッと応答が返ってきた。
ーオオ、デリシャス!
久々の魚の応答だ。
あの日からどれだけ時が流れただろう。
3日前は、このアタリすら拾えなかったのだ。

竿先をソロソロ持ち上げると、ククッククッククッ・・・と竿先がお辞儀を繰り返す。
重量感も間違いなくマコだ。
操舵室から船長が、
「オー来たか!?」
と飛び出してきた。
船長がタモで掬ったのは熱烈歓迎の37センチ、正真正銘のマコガレイであった。
カレイの口から針を外し、餌を付けて仕掛けをドボーンと海に返し。
水深32メートルの底に錘が着き、一シャクリしたとたんググッときた。
ーウッソー!
信じられない入れ食いだ。
「来た来た来た」
と船長が操舵室から飛び出してきた。
2匹目は40センチだった。

「テーク・オン・チャンス・フォー・ユー!」
英語で、
「チャンスを掴め!」
ところが、仕掛けを手際よく海に戻せない。
カレイの口から針を外すのにモタモタ。
ゴチャゴチャにもつれた仕掛けを解くのにモタモタ。
針をペンチで外そうとすると針が折れてモタモタ。
針に餌を付けるのにモタモタ。
仕掛けを海に戻すまでに平均10分もかけてしまった。
なんせ不器用は子供のころからのくされ縁、しかたがないんだこれだけは。
この不器用さでおそらく2~3匹は釣れそこなったのでは。

初心者も釣る
ふと隣りを見ると。
船長がカレイ釣り初めてだという初心者に、
「アーダーコーダー ナンダーカンダー ハレホレ」
と、手取り足取りレクチャーしていた。
諺に、
「船長の教えとナスビの花は千に一つも仇はない」
と言う。
この初心者、船長に教えられたあと、次々と良型のマコを釣り上げていた。
トモの釣り士が、「さすが船長」と讃えると。
船長、「基本通りにやれば釣れるのさ」と苦笑い。

思わぬ僥倖
8時半。
カレイの口で折れた針を、交換し仕掛けを海に返した時だ。
トントントンとジャリを敷き詰めたような海底を小突いていると、
「ムニュ」
とした微弱な信号をキャッチ。
少し竿を持ち上げてみた。
また「ムニュ」。
またトントントンと海底を小突くと「ムニュ」とした反応。
無数の疑問符(?)が頭上で散った。

また竿先を持ち上げてみた。
ククククッと今度は明確なアタリが返ってきた。
「フイッシュ・オーン!」
水深32メートルから上げてくる間に、2度ほど重量感が消えてドキッとしたが無事海面に浮上。
船長にタモ入れしてもらったのは42センチのナメタガレイだった。
これは稀有な、思いがけない幸運であった。
主役を超える名声の脇役なのだ。
このサイズのナメタガレイをスーパーで買うと3~4千円はするだろう。

午前9時20分までにナメタを含む6匹を釣った。
この時、
「今や風雲の時、我風に乗り雲をつかみ、天空に駆け昇らん」
  (『老人よ、花と散れ』by 三浦朱門)
と、燃えたのだが・・・。
あとが続かず第一幕終了。

終章
第二幕は、午前10時10分。
海底を小突いていると、いきなりドドーンと地雷を踏んだようなアタリで始まった。
竿先が何度も水面を叩く。
ノミの心臓が悲鳴を上げ、冷汗三斗で船上に取り込んだのは、一升瓶サイズ(46センチ)のアイナメ。

このあとしばらく間が空き、午前11時5分に38センチのマコ。
11時20分に、40センチのマコ。
11時35分に、36センチのマコ。
を追釣して第二幕、終了。

午後12時、沖上がり。
今日は”週刊釣りニュース”の記者も乗船していた。
何匹釣ったのか聞かれたので9匹と応えると、今日のトップですよ、と教えられた。
2番は左舷大トモの釣り士で8匹らしい。
写真を撮られた、来週日曜日の週刊釣りニュースに載るそうだ。
人生は死ぬまでのヒマつぶし、極上のヒマつぶしをしようではないか。
釣ってきたマコガレイの煮つけを肴に酒を飲む、これ極楽、極楽。

本日釣果
マコガレイ   35~42センチ   8匹
ナメタガレイ   42センチ     1匹
アイナメ     46センチ     1匹

The END
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