2014年7月17日(木) 曇り 少々うねり
       那珂湊 海水温 18.3度
     那珂湊港の潮汐 中潮 満潮  6:44  干潮 13:12
ノビタの釣り天国

       
2014年7月17日(木) 午前5時15分~午後12時 那珂湊沖


     
     人生最良の日


                                
  釣りは人生の縮図
神の声

沖のカレイ釣り、その本質がつかめず、
「さがし さがし求めて
 ひとり ひとりさまよえば
と、どしゃぶりの雨の中を十数年さまよった。
けれどもようやく虹を見た。
曲がり角の先には、太陽が輝いている。
ーもうすぐだ!

それを教えてくれたのは、栃木の匠(たくみ)である。
名をほりさんという。
匠はこの日、俺の隣りで26匹のカレイを釣った、俺はたった6匹。
これを腕の差と言わずしてなんと言おう。
神の導きであろう、釣り終盤に匠と俺の仕掛けがお祭りをした。
匠がもつれた仕掛けを解いてくれた。
その時、匠から一言、二言アドバイスを頂いた。
俺にしてみれば、それは神の声だった。

そのアドバイス、コロンブスの卵のような技であったが。
実行して数分。
ーキター!!!
その瞬間、目から鱗(うろこ)がバリッ!と音を立てて剥がれた。
ーそうだったのか!
一瞬にして、喜びも悲しみも幾年月の迷いが雲散霧消した。
その晩、座右の書である『カレイの鉄人』をパラパラ開いていると。
なんと!塩釜沖のマガレイ釣りで、名人が匠と同様の技を使っていた。
これまで上の空で読んでいた部分だった、今日はじめて俺は真剣に読んだ。






右舷は入れ食い
朝、4時。
那珂湊港着。
天は雲で蓋されまだ夜は明けていない。
T船の前には、ひっそりと3台の車が止まっていた。
いつもの右舷ミヨシ寄りに荷を運ぼうとすると、先客の荷がデーンと居座っていた。
止むを得ず左舷のミヨシ寄りに荷を運ぶ。
これが運命の岐路だった。
本日、同船同夢の夢追い人は4人。
俺を除く3人は、全員竿を2本並べていた。
いずれも百戦錬磨の剣豪と見た。
                                       
どんよりとした夜明け
午前4時50分、出航。
東寄りの風が吹き、風に起こされた千波万波が行く手を阻む。
舳で砕けた波しぶきが、滝のように体に降りかかる。
「波をちゃぶちゃぶちゃぶちゃぶかきわけて
雲をすいすいすいすい追い抜いて 船はどこへ行く ボクらを乗せてどこへ行く
まるでひょっこりひょうたん島の船出だ。
20分ほど疾ったところ、那珂湊沖で船は停止した。
                                    
午前5時15分、釣り開始。
開始してから2~3分、右舷でカレイが釣れたと船長が叫ぶ。
風にかき消されるように、また釣れたと船長の声。
それから10分ほど経過、
「(右舷側の客が)竿とリール合わせて10万円ほどを海に落したぞ!」
と、船長の叫び声が。

竿を海に落した釣り士の前に、白いドレスをまとった美しい女性が現れた。
「あなたが探しているのは、私ですか?」
釣り士は思わず「そうです!」と叫んだ。
ーそんなバカな。
また船長の叫び声が。
「予備の竿で、またカレイを釣ったぞ!」
少し間を置いて、
「今度はダブルだぜ」
と船長の実況中継が続く。
高価な竿を落下海の藻屑にし、入れ食いを続ける釣り士こそ冒頭記述のほり名人である。

はじめの1匹
右舷は祭りの騒ぎだが、左舷の二人(俺も含む)にはアタリすらない。
左舷は通夜の静寂だ。
そして。
午前5時40分。
「クッ」の袖を木に引っ掛けたような前アタリが。
竿先を下げて数秒まつ、静かに竿先を上げていくと、ククククク・・・と待望の本アタリがきた。
最初のソロ・ホームランは、35センチほどのマコガレイであった。
右舷の好調に煽られた身には、「今、君がここにいる幸福」にむせび泣く、人生まだまだ捨てたもんじゃないと。
このあと。
午前6時半に35センチ前後を追釣したが、あとが続かない。

匠に技を伝授してもらう
午前10時。
右舷ミヨシ寄りの千葉の釣り士は、ぽつりぽつりだがダブル・ホームランを2回も入れて、10匹釣っていた。
栃木の匠は16~7匹釣っていた。
俺はまだ2匹。
この時点で、左舷での釣りを断念し右舷の中央に移動、好調な2人に挟まれるようにして竿を出す。
ところが右舷の中央に来てもアタリが無い。

     
海は少々うねりあり
隣りの匠は、切れ目なく釣っているのに。
仕掛けが悪いのか?
「あなた好みの あなた好みの エサになりたい
と工夫に工夫を重ねた仕掛けが、カレイに見向きもされない。
匠の仕掛けを盗み見たが、ほぼ俺と同じ。
ただ錘の色が違った、俺の錘は白、匠は赤い色をした分銅型。
そこで錘を赤い分銅型に替えてみた。
されどアタリ無し。
これは八つ墓村の、
「祟りじゃ!」
なのか。

匠に教えを乞うには、いささかプライドが邪魔をした。
悶々としながら時間だけが過ぎて行く。
その時、冒頭記述のトラブルが起き、匠は秘策を惜しげもなく教えてくれた。
ーもしも。
匠と俺の仕掛けがトラブラなかったら、俺は万年初心者だったのでは。
運命の岐路は、紙一重ということか。

もうこれからは迷わない。
「我ガ道、一ヲ以テ之ヲ貫ク」(孔子)
これからは匠に教えられた技を磨くことに徹する、と心に誓う。
カレイは釣れなかったが、今日は人生最良の日であった。
この技で実績を積んだら、読者にこの技を公開しよう。

本日釣果
マコカレイ 32~36センチ  6匹
ショウサイフグ 22~27センチ 3匹

The END
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